第6話 愉快なおじいちゃんたち

洞穴を出た俺たちは驚きの余り、口々に感想をもらす。


「スゲー」


「キレイ」


目の前に広がるのは春の陽気を感じさせる暖かさと緑もゆる原っぱだった。

まるで芝生を一面張り巡らせた見たいに。

さわやかな風が吹く。その風にのせて、タンポポの綿毛が空を舞う。カメラを持ってたら思わず写真を撮ってしまいたくなるような美しさだった。

洞穴から見た外はあんなに吹雪いていて、出ることを戸惑ったほどなのに。

もしここで1人だったら春の陽気に乗せられて、昼寝をしていただろう。

でも今はゆんさんがいる。

『ひとまず辺りを散策するか。』

そう思い、ゆんさんに手分けして散策しようと提案するが…


「やだ。なんかいたら怖いもん。」


その言葉で却下された。

いやね。ほんとのところちょっと離れて、自分の中で今置かれている状態について自己討論したかったんだけど。

ひとまず目の前にある小高い丘を指差して上から何かないか探すことにするのだった。

あっもちろんゆんさんも一緒です。

どう足掻いても1人にさせてくれませんでした。

ーーー

丘上まで登る。そして周りをぐるりと見渡す。

地平線が見えると錯覚するほどに土地が開けている。と考えるとここは日本のどこかではなのかもしれない。日本って平地少ないもんね。そんなことを考えていたら、ゆんさんが声をかけてきた。


「ねえ、あっちに誰かいない?」


目を向けると一本の大木がある。

その根本では…


「なんだあれ?」


人に見える何かがいる。


「行ってみる?」


という自分の答えにゆんさんは笑顔でうなずく。

行き先もない自分達にとってその場は興味をそそる材料としてぴったりだった。

ーーー

【ジュージュー】

香ばしい香りが空を舞う。


「久しぶりに地球にゲートをつないだのじゃから、おいしいものをいっぱい食べんとのぉ~」

「そうじゃ、そうじゃ!」

「酒もこうてきたぞ」

「うぉおおーうまいのぉ日本に定住したいわい。」

「このワインとなる種類の酒もおいしいのぉ~」

「いいのぉはこんなおいしいものが食べられて」


なんか老人がBBQをしている。見た目は地球のものであればといえるほどに長い白髭、髪の毛も同じく白色。ついでに三角帽子をかぶって、赤い服を着ているから・・・いやもろサンタじゃん。

てかなんか生き物がいるって言って近寄ってみたら人間だったってのもびっくりしてるのに何でサンタの恰好してるだよ。

 その時まるで自分の心の中を読んだように一人のサンタクロース(仮)がしゃべりだす。

 

「この服はなんじゃ?なんかもこもこしてあったかいのはそうじゃがこの景色とは風変りの気がするぞ?」


違うサンタが話し出す。


「こればかりはしょうがないのじゃ。適当な衣服屋に入ってちょうどいい服見繕ってとおねがいすると、店員がこの格好をさせてきたのじゃ。違う服はないのかのと聞くと、あなたはこの服以外に似合う恰好が思いつかない。ってなんか叫んでおったのじゃ。ゆえに仕方なくこの服になったのじゃ。」


傍からみてもこの格好は浮いているよにしか見えない。この春の陽気を漂わせるこの原っぱに、冬の代名詞ともいえるサンタの恰好は合わなすぎる。


違うサンタがしゃべりだす。

「でものぉと、寒くてのぉ~せっかくの肉がおいしくなくなってしまうからのぉ~」


サンタにもいろいろ事情があるのだろうか・・・

そろそろ見ているだけもつらくなってきた。話しかけようとする。


「あ、あの・・・」


すると6人ほどいたサンタがこちらを一斉に見た後、5人は興味をなくした様子で、会話をはじめ、1人のサンタがこちらをじっと見た後、


「おおおぬしらか一緒に食うか?何なら酒も飲むか?昼間から飲む酒は格別だからのぉ~ふぉっふぉ」


どうやら自分たちのことは周知の上でBBQをしていたらしい。


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