第5話 洞穴での決め事 烏野ゆん視点
「ふぅ」
ひとまず手続きは済んだ。
これで彼はあの場所にいるはず。
「マテ。」
背後から声がする。振り返ると甲冑を着込んだ騎士(?)のような人が声をかけてくる。でも人ではないことは確かだ。なんてったって顔が緑色で2本の角が生えてる人間なんて見たことがないから。
そいつは舌っ足らずでこちらに質問を投げかけてくる。本人によると翻訳は今の技術ではこれが限界らしい。
「イイノカ。カレヲ、ツレテキテ。ウラマレル カモシレナイノダゾ」
そんなことわかってる。そして理解したうえで彼をここに呼んだのだから。
「はい!大丈夫です!覚悟はできています!」
私はここから何重にも仮面をかぶる。
甲冑の人は私の答えに満足したのか
「ナラ、ガンバレ。ワタシガイエルノハ、ココマデダ。アトハ、オノレノチカラデドウニカシロ。」
とだけ言うと帰っていった。
それと同時に背後にある大きな扉が閉じ、目の前が輝き出す。
光が止む。ここはどこだろう。ごつごつとした岩がある。どうやら洞穴みたいだ。
あいつなんでこんなところにリスポーンさせたんだ。風邪をひくじゃないか。伸也君が。甲冑のやつをちょっと恨む。
洞穴の真ん中に1人の制服を着た男の子が寝ている。
『間違いない。あの背格好は伸也君だ』
いつも見ていたとはいえ彼はいつも教室にいないことが多い。それゆえに探すのが難しかった。
でも今は違う。目の前にいるのは、あの伸也君で、私がよく知る彼だ。
とことこと歩いていき寝ている、彼に近づく。
彼は今もすやすやと寝息を立てている。
『起こしてあげようかな?』
風邪をひくかもしれない。だから起こしてあげるのが最適な答えだろう。
でも、同時に悪魔もささやく。
『寝顔を見たことは一度もないから、ちょっと見てたいかも。』
考えがいいほうに流れていく。
『決めたっ あと10分して起きなかったら、起こしてあげよう。』
結局見ていることにした。
だから驚いた。急にしゃべりだすんだもの。
「まさか・・・授業中に寝ていることが先生にばれて、起こしても起きなかったから知らない場所に連れて行って自分のことを抹消しようとしてるんじゃ」
寝ぼけているのか知らないけど寝起きでこんな考えできる人なかなかいないと思う。そんな意味で思わず笑ってしまった。
「ぶっ、なにその変な考え」
笑ったが最後頭が豪速球で自分のもとへ飛んでくる。
そして私はよけきれずにクリーンヒット。そこで素が出てしまった。
「ひでぶっ」
あーあ起きたら漫画とかでよくあるおねーさん的雰囲気で会話しようと考えてたのに。
まあこれから頑張ればいいよね?ここから先はまだまだ長いんだし。2人っきりの時間はもっと作れる。
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