第2話

俺と瑠衣は3歳の時から児童劇団に所属し、子役として芸能活動をしていた。当時は俺の方がドラマやCMに出演する機会が多かったが、そのせいで俺は小学校を休むことが多かった。一方、瑠衣はあまり仕事がなく、夏休みを中心に数日ドラマや映画の撮影があるくらいで、学校を休む機会はあまりなかった。小学生当時の俺は、学校に行っても居場所がなく、瑠衣と話すくらいしか学校生活を楽しめなかった気がする。俺が学校を休んだときは、いつも瑠衣が学校で何があったか話してくれたな。




中学校に進学すると、俺と瑠衣の立場は逆転した。俺は仕事は激減し、夏休みを中心に数日ドラマや映画の撮影があるくらいになってしまった。そして中3の時は高校受験のため、1年間ずっと仕事を断っていた。一方、瑠衣はすぐアイドルのオーディションを受けて、そのままデビューしたため、頻繁に学校を休むようになった。そして高校生になり、俺はまだ事務所に所属している身であったが、地元の普通の高校に進学し、瑠衣は芸能科のある高校に進学した。高校生になって1年と2ヶ月、瑠衣は仕事で遠出する時もあって、瑠衣の顔を見る機会はかなり少なくなったのだが・・・




「トシ、たっだいまー!」




夜遅く、俺が明日も学校なのでこれから寝ようと思っていた時、ちょうど瑠衣が帰宅してきた。瑠衣は家に戻るや否や、自分の部屋に戻り、隣の家でかつ部屋も隣同士という俺に挨拶をしてきたのだ。瑠衣はこの日も朝早くから仕事で、今日の服装は6月ということもあってか、半袖でかなりラフな服装であった。




「瑠衣、着替えするんならカーテンくらいしろよ」


「何よ、今更。それに好きな人なら何見られたって平気だし」


「俺が気にするわ。それにお前、少しはアイドルという立場を考えろ」


「はいはい」




俺が瑠衣の着替えについて注意すると、瑠衣はカーテンを閉めた。着替えが終わると、瑠衣は再びカーテンを開けた。




「トシ、ちょっと話があるんだけど」


「つーか俺、そろそろ寝ようと思っていたんだぞ」


「5分で終わるから!」


「はいはい」




瑠衣は俺に話を振る。話の内容は、たわいもないただの会話。お互い今日何があったかについてだ。瑠衣は今日、朝からテレビ番組の収録だった。そして夕方からはグラビアの撮影。撮影は夜まで続き、撮影が終わると近所のレストランで夕食を食べ帰宅したとか。




「トシ、高校生活は楽しい?」


「楽しいに決まってるだろ。伊達に1年以上高校生活送ってるんだぞ」


「そっか・・・」


「何だよ瑠衣。物思いにふけって」


「ん?別に。何でもない。ところで瑠衣、向こうで彼女作ってないよね?」


「俺はまだ彼女なんていないよ。第一、俺にお前以外の女と話す度胸なんてねぇよ」


「そう、安心したわ。トシは私だけのものだから」


「あのなぁ・・・」




少し前、俺は瑠衣から好きと言われた。つまり、瑠衣は俺のことを16年間、1人の男として愛しているのだ。そして俺も瑠衣のことを16年間愛している。つまり、両想いだ。しかし、俺は瑠衣の告白を断った。断った理由は省略するが、瑠衣はまだ俺のことを諦めていない。




「ありがと、トシ。こんな夜遅くに私の話に付き合ってもらって」


「俺も瑠衣と久しぶりに話せてよかった」


「じゃあ私はこれからシャワー浴びて寝るから」


「俺はもう眠いし、寝るわ。お休み」


「お休み」




俺がもう寝ると言うと、瑠衣は1階に降りて行った。俺も部屋の電気を切り、ようやく寝支度をする。そして俺が眠りの底についた深夜・・・




「やっぱりトシの寝顔、可愛い・・・」




パジャマ姿の瑠衣がこう小言を漏らし、自分のスマホで俺の寝顔を撮っていた。そして、瑠衣の小言とスマホのシャッター音のせいで俺が目を覚ましたのは言うまでもない。そして・・・




「何、人の寝顔撮ってんだー!」


「何よトシ、怒らなくてもいいでしょ!」


「盗撮だぞ、これ!」


「あっ、ごめんなさい・・・」




深夜、俺が瑠衣を大説教したのは言うまでもない。

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