第11話 自供を引き出せ

暗殺の実行犯、安倍晴臣は暴力団員でプロの殺し屋。

理由が何であろうと、金さえもらえれば、殺しを実行する。

依頼者に求めることは、金だけの冷酷な犯人。

『安倍・・・

 永井健三と青山遥香を確保

 した。

 お前、もう金は受け取った

 んか。』

木田の質問に、安倍は首を横に振った。

『ほな、もうもらえへんなぁ。』

安倍晴臣は。表情を変えない。

警察の勝手な勘違いにして、逃がそうとしているようにも思える。

『お前なぁ・・・

 あいつら逃がしても、お前が

 もう出られへんやんけ。』

勘太郎の言葉には、睨み返したが。

そう、最初、姉小路公康暗殺は、刃物で、滅多斬り滅多刺しという残忍な殺し方。

2人目の下村香菜は、散弾銃で一気に、一思いにという殺し方。

殺し方を変えたのは、捜査を撹乱するため。

木田と勘太郎コンビ対安倍晴臣のにらめっこが続いていた。

ドアをノックする音がして、鑑識課の捜査員が入ってきて木田に耳打ちした。

赤山禅院から電話という。

木田が数人の捜査員を連れて戻ってきて。

『安倍・・・

 今日は、これで終わりや。

 部屋で、のんびりしたら

 えぇ。

 こいつらが、部屋まで付き

 添ってくれる。

 勘太郎、赤山禅院行くで。』

勘太郎、驚いて立ち上がりながら。

『どないしたんですか、警部補

 電話、赤山禅院からなんです

 か。』

木田は、すでに駐車場に向かって走り出していた。

モタモタしていると怒鳴られるパターンの展開に、勘太郎は慌てた。

数分後、いつもの勘太郎の覆面パトカーが、轟音を上げながら、出動した。

ただ、いつもとは異なり、赤色回転灯を回して、サイレンを鳴らしている。

赤山禅院に到着すると、すでに箱型パトカーが到着していて、本間警部が、寺男氏と話していた。

『お疲れ様です、警部。

 って、速いですねぇ。』

『おぅ・・・

 木田が、勘太郎を呼びに行っ

 てる間に出た。』

木田と勘太郎にしてみれば、いつも通りに、勘太郎の覆面パトカーの助手席で待っていられるよりは良かった。

『で、何があったんですか。』

鑑識車両を引き連れての出動は、ただ事ではない。

鑑識課の捜査員が、近づいてきた。

『報告します。

 見つかった拳銃は、スミス&

 ウェッソン社製の44オート

 マグナムです。

 脇差しに付着した血痕は、本署

 でないと鑑定が不可能です。』

腕組みして聞いていた本間が、目を見開いた。

『よっしゃ、鑑識全員、本署に

 戻ってくれ。

 木田と勘太郎は、俺を乗せて

 くれ。』

明らかに、何かを企んでいる。

『まぁ、科捜研やあらへんし、

 そんな早くに、結果出ぇへん

 やろう。

 ラーメン行こか。』

木田と勘太郎は、やっぱりかと呆れはしたが、よく考えてみると腹ペコである。

『安倍に、カツ丼食わせました

 よねぇ。』

そう、容疑者は、人権問題があるので、しっかり食べさせるのだが、刑事達は、食べ損ねることが多い。

本間の企みは、そんな2人の刑事魂を見越した作戦である。

本間自身、そこまで見事に当たるとは思っていなかったが。

3人が、捜査本部に帰ると、鑑定結果が出ていた。

幡山鑑識課主任が、説明を開始した。

見つかったスミス&ウェッソン社製の44オートマグナムは、旋条痕が、下村香菜殺害の弾と一致。

脇差しの血痕も、姉小路公康氏のものとDNAと一致した。

『つまり、この2つが、今回の

 連続殺人事件の凶器です。』

捜査本部は、歓喜で沸き立った。

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