第8話 真昼の逮捕
何はともあれ、犯人のフルネームが安倍晴臣ということがわかった。
『粉川興業の中立売事務所か。
ヤクザやな。
まる暴に、挨拶せな問題に
ならへんか。』
まる暴、組織犯罪対策本部という警察の部門。
通常であれば、暴力団の捜査は、捜査4課が捜査を担う。
私服の刑事だが、見た目はほとんど暴力団の構成員と変わらない。
『殺人の犯人が粉川興業の中立
売に。
凶悪犯の逮捕に、文句ありま
せん。
なんやったら、協力は惜しみ
ませんよ。』
捜査4課品川課長は、いとも簡単に引き下がってくれた。
『凶悪犯に、一般人も暴力団員も
あらへん。
しかも、同じ京都府警察や。
誰が逮捕したって、京都の街が
平和になるんやったら、それで
えぇやんか。』
という考え方で、悪を憎む心が重要で、仲間内で競争して逃がしては、もとも子もないという考え方の人物。
『すごい人ですね。』
勘太郎は、尊敬しますと表明。
『おう、若いの・・・
オール京都府警察で、えぇ
んや。
京都府警察一丸で、凶悪犯人
が1人でも多く逮捕されること
が先でないと意味ないやけ。』
『品川課長、おっしゃる通り
やと思います。』
木田警部補も、心酔している。
『何言うてんねん・・・
俺は、本間さんに教えられた
んやで。
本間警部は、真鍋本部長から教えられたって言うやろうけどなぁ。』
『品川課長・・・
こいつ、俺の今の相棒です
けど。
真鍋勘太郎言うて、警察庁の
真鍋刑事局長さんの息子です
ねん。』
『真鍋勘太郎言います。
よろしくお願いします。』
勘太郎の挨拶には、軽く手を上げて
『なんやて、ほたら本部長の孫
ってことかいな。
お前、日本の警察のトップ、
真鍋刑事局長の息子で、真鍋
京都府警察本部長の孫で、捜
査1課長本間警部の弟子で、
木田警部補の相棒って、人に
恨まれんなよ。』
同期生の同僚達には、すでに恨まれていそうだ。
安倍晴臣は、陰陽師ということで一筋縄ではいきそうにない。
1時間後には、捜査1課の50人に4課が30人の協力をして80人で粉川興業を取り囲んだ。
蟻の這い出る隙間もない。
しかし、本間と品川と木田と勘太郎の4人で粉川興業中立売事務所に突入した時には、中にはいなかった。
『おい、伊藤・・・
安倍は。』
品川課長が、奥の机でふんぞりかえっている男に話しかけた。
『旦那、あいつのことは。儂らも
ようわかりませんねん。
いつの間にかソファーに座っ
とるし、ほんで、いつの間にか
消えとる。
気持ちいいことはないん
ですわ。』
たぶん、それは本音であろう。
『なるほど、それはヤクザやない
よなぁ。
お化けか妖怪やもんなぁ。』
陰陽師という情報はある。
『警部補、行きましょう。
清明神社。』
勘太郎の勘が、見事にヒットしていた。
清明神社の境内のお札返納所の小屋の影に隠れていた安倍晴臣の逮捕に成功した。
手錠と腰縄で、伊藤の前に連れて行き、逮捕すると通告した。
『旦那、こいつ、いったい何を
やらかしましたんですか。』
本間が振り向き。
『殺しや・・・
お前ら、下手すると、海上
自衛隊と戦争になるで。
今回は、こいつのことあき
らめろ。』
伊藤にしてみれば、渡りに船である。
『旦那、さっきも言いました
けど。
そいつ、気持ち悪いですから、
おまかせします。
たぶん、請け負いの殺しやと
思いますよ。』
いかにも粉川興業とは、かかってないと言いたげな態度である。
品川の考えでは、おそらく、占い詐欺だけでは上納金が稼ぎきれず、勝手に仕掛人働きをやっていたのであろう。
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