第4話 なんと連続殺人

かわいそうな巡査が気をつけの姿勢で敬礼をしていると、後ろ座席から木田警部補が下りる。

運転手が、勘太郎とくれば、嫌でも事件を予感してしまう。

しかも、その予感が的中するから面白い。

突然、巡査のハンディ無線機がガーガーと鳴って、府警察本部からの臨場指示が飛ぶ。

『修学院方面にいる捜査員

 は、全員赤山禅院前に臨場

 すること。

 不審遺体発見。殺人事件と

 思われる。』

本間警部と木田警部補と勘太郎のトリオも、もはやラーメンどころではなくなった。

『君、申し訳ないが、無線機

 を拝借できるかね。』

当然、巡査に否やはない。

『府警察本部。捜査1課長本間

 です。

 現在、叡電修学院駅付近。

 木田警部補、真鍋刑事と共に

 臨場する。

 状況を詳しく頼む。』

『警部、やっぱりご一緒でした

 か。

 木田警部補と真鍋刑事が赤山

 禅院方面に向かったと、複数の

 捜査員が言うてましたので。』

3人の動きは、シンクロしているものと、全員が思っている。

現場は、勘太郎達のいる場所から、数百メートルの近さであった。

被害者は、若い女性。

水路のような川に捨てられていた。

勘太郎のGTRが、太い排気音を轟かせて、現場に到着すると。

制服組は、知らん顔だが。

刑事達は、直立不動で敬礼している。

助手席から、本間が下りると、制服組にもわかり、あわてて敬礼する。

『害者は、女の子か、身元は。』

本間警部の質問に、1人の刑事が。

『身元が確認できるものは、

 持っていませんでした。

 ただ、同志社女学院のナップ

 サックが落ちてましたので。

 もしかしたらって思って

 ますが。』

『悠長な。

 すぐに本部に移送して、本部にいてる萌ちゃんと須美香ちゃんに見覚えないか、聞いてみぃ。』

姉小路須美香と高島萌という。現役の同志社女学院生が、本部で待っているという、警察官にとっては、嘘のようなタイミングである。

早速、遺体を丁寧に毛布でくるみ。箱形パトカーの後部座席に乗せ、勘太郎のGTRが付き添って、本部に帰って行った。

姉小路須美香と高島萌は、普通の女子大生である。

本来なら、殺人事件の被害者の変死体など見ることはないはずだが。

それが、1日に2人目という異常過ぎる事態に、2人で、抱き合うようにして震えている。

霊安室での、僧侶による、読経が終わり、2人が木田と勘太郎に付き添われて、確認のため入った。

とたんに泣き崩れた2人。

『杏菜・・・杏菜ぁ。』

被害者の遺体に、すがり付くように泣き崩れる2人に、木田と勘太郎だけでなく、本間までもが絶句している。

そう、いつも一緒にいる、仲間だという。

しかも、姉小路公康氏の踊りの弟子で、名取と呼ばれる講師の資格まで持つ名人だそうだ。

すぐに、須美香の母親高子も呼ばれて対面してもらった。

高子も同様に泣き崩れはしたが、そこは、さすがに家元婦人の覚悟なのか、須美香と萌に、次の指示をしてくれた。

『須美ちゃん、萌ちゃん。

 すぐに杏菜ちゃんのご実家に

 連絡してあげて。

 けっこう時間かかるから。』

聞くと、東舞鶴の海上自衛隊の官舎という。

すぐに勘太郎が、舞鶴署に連絡して、パトカーを迎えに行かせて、

JRの切符も、舞鶴署が手配。

京都駅にも、迎えのパトカーを配置した。

そこまでしても、杏菜の両親が府警察本部に到着するのに、2時間近くかかってしまった。

同じ京都府内なのにである。

この時点で、本間と木田と勘太郎の頭には、ある6文字が浮かんでいた。

連続殺人事件という6文字である。

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