第2話 共通点

姉小路母娘と萌を伴って、捜査員が全員、捜査本部に揃った。

姉小路母娘は、コーヒーを。

高島萌は、信楽焼の湯飲みで、

ほうじ茶を飲んで、落ち着こうと

している。

3人を横目に、捜査員は話しができない。

当たり前だろう。

被害者姉小路公康氏は、鋭利な刃物で、何回も切りつけられ、その上に何ヵ所も刺され、無惨に殺されていた。

その遺体を、確認した遺族にかける言葉を、捜査員達は持ち合わせていない。

『お母さん、俺、須美香ちゃん

 とは何回かお会いしてます。

 高島萌のフィアンセで、真鍋

 勘太郎といいます。

 捜査1課長の本間警部と木田

 警部補と3人で、トリオ組ま

 せてもらってます。

 俺は、まだまだ未熟者ですけど

 犯人は、必ず俺達で捕まえて

 お2人の前に引きずり出し

 ます。』

明らかな安堵の表情が、姉小路母娘の顔に浮かんだ。

『ナイスフォローや。勘太郎。』

めったに誉めない木田警部補が、

勘太郎を誉めた。

『ナイスフォローついでに、

 何か思いつくことあら

 へんか。』

捜査1課捜査第1班主任で班長の

木田警部補は、厳しくて優しく指導してくれる上司で先輩。

本間警部と、この木田警部補の2人のおかげで、勘太郎はめきめき力をつけている。

『この事件、偶然かもしれま

 せんけど。

 あまりの因縁めいた殺し方に、

 背筋が冷たいです。』

勘太郎は、とんでもないことに

気がついていた。

『いや、現場の猿が辻ですけど、

 よう考えてみたら、今から

 150年ほどの昔に、被害者

 公康さんから数えて五代前の

 御先祖、姉小路公知(あね

 こうじきんとも)卿が、暗殺

 された、

 幕末の大事件、朔平門外の変

 と、奇しくも同じ現場で同じ殺され方で、御先祖様と子孫が。』

偶然とはいえ、何か因縁めいたものを感じざるを得なかった。

『なんやて、お前それに気づ

 いてたんか。

 何か因縁めいとるなぁ。』

で、その姉小路公知(あね

こうじきんとも)いう御公家

さん、どんな奴に殺されたんや。』

『薩摩藩士で、幕末四大人切り

 の1人、田中新兵衛ですね。

 どんな奴も何も、プロの殺し

 屋ですからねぇ。

 まさか、今時、プロの殺し屋

 なんて。

 ましてや、被害者の姉小路先生

 がプロの殺し屋にお金払って

 まで狙われるやなんて。』

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