第4話

外猫の世界は、人には計りしれないルールがあって過酷だと思う。縄張り争いが絶えずあり、通り過ぎていく猫の中で居つくのはわずか。

一時的に姿を見かけても、すっと目の前から消えてしまう。

人を筆頭に、カラス、鷹、タヌキなど外敵も多い。


それでも軒先猫はチェーンのように繋がっていく。

以前チャルビッシュがうちに慣れてきた時には、ぱったりと先輩のミケ子が姿を消した。

この軒下にどこかで産んだ子どもを運んできて、子育てまでした猫なのに。


それからしばらくすると、よしこが現れた。

白黒のはっきりした模様の大柄で、目つきが鋭くとても警戒心が強い。手をだしたら爪が刺さって抜けなくなり、お互いにびっくりしたことがある。絶対に触れない猫だ。


チャルビッシュとけん制し合い、繰り返し軒下で取っ組み合いのけんかをした。

「ストレスだろうね」

「なんとかすみ分けてほしい」

と言いながら、我々にできることとして黙々とごはんをあげた。

先にチャルビッシュ、それからよしこの順番を守り、よしこは隠れられる穴のすぐ手前で、チャルビッシュはテーブルの上で高低差をつけて配慮した。

ときどきチャルビッシュがふらっとよしこのごはんを食べ始めてしまい、よしこがフリーズすることがあった。

力関係はかろうじて先輩の方が強いようだった。


うちに来た猫は追わず、だが干渉せず、踏み込まず。猫の社会を前提として尊重する。はっきりと自覚していたわけではないが、そんな気持ちだった。


天気が悪くなるのを見かねてタオルを敷き詰めた簡易ベッドを作り、弱ったチャルビッシュを家の中に入れたが、玄関ドアの前から動かなかった。ベッドにのせても体を固くして座っている。扉を開けるとすっとでていった。

残ったベッドが何か白々しく見えた。猫の快適と人の考える快適とは違うのだろう。


不思議なことに、チャルビッシュが居なくなったら、あれ以来まったく姿を見かけなかったミケ子が再び現れた。

ミケ子のことは近所の人もいつから居るかわからないと言うし、相当な年だろうから、もうこの世にはいないかもと思っていたのだ。


家人によるとチャルビッシュを埋葬した日に、犬の散歩でいつも通る道の脇にきちんと座っていたのだという。

それからだんだん近づいてきたらしい、先日よしこ用の器の前に座り、鳴いてごはんを催促したので驚いた。


可愛く鳴いてごはんをねだるのは他の猫を見て覚えるのだろうか。3匹ともそっくりなので受け継がれているのだろうか、それともそもそもそういうものなのか。

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チャルビッシュのこと DDT @D_D_T

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