第3話 キラキラ剣士の覚醒

 男子トイレから避難したオレと男子生徒は、部室棟の奥にある剣道場にたどり着いた。人影はなく、薄暗い。

 電気をつけると、いつもの静謐とした道場がそこにあった。

「ぜひゅーーーーっ、ぜひゅーーーーーーっ」

 オレが剣道場で足を止めたので、男子生徒は道場の畳に倒れ込んで、荒い息を立てていた。それほど走ったわけではないが、緊張から解放された反動でもあるのだろう。

 オレは男子生徒を置いて、用具室に……。

「まっ……おおっきっ……」

「木刀をとってくるだけだ。お前もいるか?」

「は……あ、ああ……、はぁ、あり……がと」

「……おう」

 会話になってない気がするが、まあ助けたようなもんだし、お礼は大事だよな。聞きたいこともあるが、さっきのヤツが追ってこないとも限らないし、まずは武器だ。

 オレは男子生徒を放置して、用具室に向かった。


 そして用具室で一人になって、さっきのことを思い出す。

 胸ポケットに戻した『軍神の護符』。落ち着いて、動き出せて、男子生徒も少しだけ正気に戻った。

 ほとんどの者はただの気休めだと言うだろうが、あの状況において、その気休めが生死を分けたかもしれない。

 たしかな効果だ。オレは救われた。

 苦笑しながら、オレは護符を取り出して胸に当ててみた。

 刀は昔から魔を討つ武器だと言われている。普通に真剣の方がいいだろうが、自然信仰に厚いこの日ノ本であれば、木から生み出された竹刀や木刀でも十分に意味を持つはずだ。

 オレは自分の購入した愛用の竹刀を腰に差し、いつも素振りに利用させてもらっている備品の木刀を手に取った。

 そして少し考えて、男子生徒の分の木刀も一本貰っていく。


「うわあぁああああ、大木ーーーーー!

 きたぁぁぁぁーーーーーー!!!」

 悲鳴、どたどたと駆けてくる音がして、男子生徒が用具室に飛び込んできた。

「大木っ! 来た! ヤツが!」

 用具室の外を覗いてみると、たしかに黒いモヤが剣道場に入ってくるところだった。トイレに地縛されてるんじゃないのかよ。

 悪態をつきたくなるが、小さく息を吐くに留める。

 護符の守りを自覚し、武器を手に入れたオレは、かなり冷静になれていた。

 そもそも剣道は、精神を鍛えるために習い始めたんだったな。

「なぁ、その、えーと……」

 男子生徒に声をかけようと思って、口ごもってしまう。あれだ。こいつさっきからオレの名前呼びまくってるけど、知り合い……なんだよな?

 だめだ。思い出せない。

「工藤だよ。隣のクラスの……」

「あ、悪い」

 オレの様子に気づいて名乗ってくれた工藤に思わず詫びる。

「いや、話したこともないし、試合で大木が目立ってて覚えてただけだから」

 なるほど。

 たしかに剣道の大会で優勝したりして目立っていたから、一方的に覚えられてても不思議はない。

「工藤はアイツの話覚えてるか?」

「え?」

「あの……トイレの……」

「『トイレの花男』……だよ、な?」

 ああ、そういえばそんな感じだった。

「赤い花がいいか青い花がいいか聞いてきて、答えると殺されて、答えないと答えるまで追ってくる……」

 工藤は真剣な表情で、

「捕まった後どうなるかはわからないんだけど……」

「ははっ」

 思わず笑えてしまった。馬鹿馬鹿しい、笑い話みたいな怪談なのに、この状況じゃ笑えない。笑っちまったけど。

「ちなみに、こう答えたらいい、なんて話は?」

「……ない……いや、俺は知らない」

「だよな」

 そしてここでとんち勝負に出るのも勘弁してもらいたい。


 すぅーーーーーーーはぁ。


 オレは二本持っていたうちの一本の木刀を工藤に押し付けて、

「……参る」

 用具室を出た。


 黒いモヤは道場中央まで近づいて来ている。

 オレは向き合い、木刀を正眼に構えて、自分に言い聞かせる。

 刀は魔を祓い、護符は魔から守ってくれる。

 信じろ。道場で鍛えてきた己を。

 信じろ。俺の誕生に助力してくれた魔女が作った護符を。

 積み重ねてきたものがある。

 積み重ねられてきたものもある。


 行く。


 心・技・体。


 オレは心と体を技で重ね合わせ、渾身の動きで、ダンと踏み出した。

 そして飛ぶように駆け、黒いモヤ……いや、『トイレの花男』を、一刀の元に斬り祓った。


 ブワッ。


 木刀の振りから風が起こる。

 それはモヤだった。形もなく、手ごたえもなく、ただ黒いモヤを、渾身の木刀が斬って祓う。


 それは、モヤ、だった。

 黒い……細かな……。


 その黒いモヤは、空気に四散して、見えなくなった。


「…………」


 倒した手ごたえなんか、なかった。

 だが、それは、もうどこにも見えない。

 空気に混ざっている気がして、息を止めたオレは、無言で剣道場の外に向かった。

 外に出て校庭を横断するルートでも、校門へ戻ることができる。

 オレは部室棟を避けるために、そちらのルートへ向かうことにした。後ろから焦った様子で工藤が追いかけてくる。


「大木っ! 大木っ!」


 ぷはっ!

 オレは剣道場を出て校庭に飛び出し、明るい外の空気に全身を包まれたところで大きく息を吐き出した。

 そして追ってきた工藤に振りむく。

「悪い。なんかあそこの空気吸いたくなくてさ」

 工藤はすごく情けない顔で、「わかるけどさぁ~~~」とその場にしゃがみこんだ。

「アイツが消えるなり、いきなり動き出すから、憑依とか疑ったじゃねえかよ~~~」

 そう言われてみればそうかもしれない。

「それにいきなり、キリッ『参る』とか言っちゃってよぉ」

 !

「何事かと思うじゃん」

 クハッ。オレは心の中で吐血した。なんという黒歴史。いくらテンパってたからって、うおおおおおおおおお!!!

「忘れろ!」

 思わず吐き出した。ヤバイ。思い返すとあれ、恥ずかしすぎる。

「あ、ああ、そっか、悪い。あれって中二発言だったのか。いや大丈夫。俺もあるよ、そういう時。大丈夫だから」

 フォローするな!

「そんなことより、お前ここで何やってたんだよ? 休校なのは知ってるんだろ?」

 オレは話題を変えることにした。何より、休校中の学校に他の人間がいるとは思ってなかったオレにとっては、ずっと気になってたことだ。

「ああ、俺料理研究会に入ってるんだけど、結構マニアックな調味料部室に置いてあって、こんな状況じゃ手に入れられなくなるだろうし、状況が悪化する前に確保しておこうと思って取りに来たんだけど……」

 工藤は荷物らしい物を持っていない。

 そのオレの視線に気づいてか、工藤は情けなさそうに笑った。

「部室で荷物まとめてる途中にトイレ行きたくなってさ、ちょっとのことだしと思って荷物は部室に置いたままなんだよ」

 工藤は荷物を取りに行きたそうだ。

「……じゃあ、行くか」

 こういうの、乗りかかった船って言うんだよな。

「え、いいの……か? いやでも、携帯とか財布とか貴重品はポケットにあるし、その、無理に行かなくても…」

「いやそれ、後で絶対気になるヤツだから。それに、さっきのヤツなら、たぶん、いなくなった気がするし」

 トイレに行ったら再起動しそうな気もするけど、今はそれはいいだろう。

「大木って、男前だな」

「うっせ」

 否定するのも肯定するのも気恥ずかしい気がしたオレは一言で会話を流して、部室棟に向かって歩き出した。遠回りになるが、トイレの前を通らなくて済むルートだ。


 幸いそれからは事件が起きることはなく、無事工藤の荷物を回収して、校門まで戻ることができた。

 そこで守衛さんに礼を言い、来た時と同じように手続きをして、校舎の外に出る。

 さすがにこれ以上は一緒に行動することもないかと考えたオレに、工藤が聞いてきた。

「大木はこれからどうするんだ?」

「そうだな……」

 差し当たり武器を入手しなくちゃと、中二的思考で行動してしまったが(すでに黒歴史だ)、この後のことはあまり考えていなかった。たぶん、丸腰だったし、気持ちに余裕がなかったのだろう。

「とりあえず、どこかの避難所に行ってみるかな。何か情報があるかもしれないし」

 ネットが使えないといっても、緊急時用の無線とかあるかもしれないし。

「だったら俺も一緒に行っていいか? その、情報があるなら俺も知っておきたいし、家には夜までに帰ればいいから」

「それは構わないけど、こんな状況じゃ、情報があるとも限らないぞ」

「わかってる。でも可能性が0ってわけでもないだろ?」

「まあ、そうだな」

 否定する材料もないので、オレは頷いた。


 それからは……いろいろあった。


 避難所となっていた小学校は、学校という特性上七不思議や子供霊が多数出現、情報どころの話ではなく早々退去することになったり、そこで家に帰るという工藤と分かれたり、紆余曲折あって避難した『西海岸モール』というショッピングモールで、同じく避難してきた工藤と再会したり、ついにゾンビが町に現れ出したり。


「ゾンビってーとショッピングモールだけど、たしかにショッピングモールは避難所として優秀だよな」

 中央のホールで、避難民が増えた時のためのダンボールの仕切りを組み立てている時、工藤が話し出した。

「造りはしっかりしているし、警備室には出入口すべての監視モニターがあって、戸締りも効率よく迅速にできるようになっているし、まあここの警備をしたことがある田中さんがいたからってのもあるけど」

 田中さんというのは学校にいた警備員のおじさんだ。彼はセキュリティサービスから派遣されてきた人で、西海岸モールの警備も担当したことがあるということで、出入口の施錠や、要所要所の防火シャッターなど、この西海岸モールの防衛を先導してくれたのだ。

「スーパーには食料、ホームセンターには種と土、さすがにペットショップの犬猫を家畜として食べるのは無理だけど、限定された期間であれば外に出なくてもしばらく生きられそうだもんな」

「まぁ、な」

 オレは言葉を濁した。

「なんだよ?」

「いや、今はいい」

「なんだよ。また中二病か?」

 四六時中一緒にいて遠慮がなくなってきた工藤が、オレをいじってくる。

「うっさいわ」

 オレが一言で終わらせるのも、もはや定型だ。それに、中二病と言われて否定するのも難しい。こんな、他にも作業をしている人がたくさんいる場所で絶望的なことを口に出すのは忌避した方がいいなど、うん、中二病的思考だと思う。

 だがそうは言っても、その判断は正しくもあると思う。状況は絶望的で、中二病的判断が正しくなりかねない流れが起きているからだ。


 ゾンビがすぐ側の町に現れたとの情報が入った時、町内会長の判断で、この西海岸モールは公的な避難所となり、町内放送でそれが通達された。

 その時には危機的状況が実感できていたので、多くの者がそれに従い、ゾンビになる前に避難して来ることが叶った。

 しかし。

 当たり前だが、避難してこない者も多かった。

 備蓄のある者、集団行動が苦手な者、ゾンビ報道を普通の伝染病だと曲解していた者。

 それらは自宅に籠っていれば、事態は収束して、日常が帰ってくると考えた。電気ガス水道が止まらなかったのも、その希望的観測を助長しただろう。


 しかし物流が止まり、商店が営業を休止して、食料がなくなり、パラパラと外に出てくるようになった人間がゾンビに襲われ始めた。

 このゾンビは感染するゾンビだ。

 被害は爆発的に広がり、町の平穏は失われた。

 そして、そうなって初めて、希望的観測していた連中が動き出した。今になって、西海岸モールに避難してくる人間が一定数いるのである。

 その数は毎日減ることがなくて……。


 いくら食料がある。多少は自給できると言っても、歩いてこれる距離にアパートやマンションといった集合住宅がある。

 それらに隠れていた者たちがこぞって避難してきてしまったら、多少の備えでは足りないだろう。

 何より、…………あれ、田中さん?


「大木くん、ちょっといいかな?」

「ああ、はい。今行きます」

「…………」

「工藤、後を任せていいか?」

「ああ、うん。……気を付けて」

「おう」

 オレは苦笑して立ち上がった。

 工藤は不安げな様子だが、言葉を呑み込んでいる。他にも、不安そうな眼差しをこちらに向ける人が何人かいたが、気にしないようにして田中さんの元に駆けつけた。

 田中さんもその様子に気付いているようだが、何も言わずにその場を離れて、オレはその後を追った。


「悪いな、大木くん」

「いえ……」

 この避難所の責任者は町内会長で、田中さんは自警団の責任者ということになっている。自警団の団員は成人以上の男性で構成されているが、有事にはオレのような未成年の戦闘員が駆り出される。

 とはいっても、このショッピングモールに来た当初は、呼び出されることはほとんどなかった。それよりも居住空間を整えたり、物資を整理したりする仕事の方が重要で、メインだったのだ。

 それが、ここ数日は毎日のように呼び出されて、大抵は避難民がゾンビを引き連れてくる案件だった。目を背けようとしても背けられない現実が、差し迫ってきているのを感じる。

「……君には、言っておこうかな」

 道中、田中さんが切り出した。

「町内会長さんたちとの話し合いで、避難民の受け入れを終了しようって話が出ているんだ」

 田中さんは陰鬱な表情で、

「昨日受け入れた人が、隔離部屋の中でゾンビ化してね」

 はは、自嘲的に笑った。

「いつか来るとは思っていたが、一度会話した相手がそうなるのはキツイものがあるよ。当初の予定通り海に落として処理したから、死ぬところを見たわけじゃないけど、どうもね」

 ゾンビは基本泳げないようで、海に落とすと浮かんでくることはない。その特性を利用して、ほとんどのゾンビはトドメとか考えずにひたすら海に落とすことにしていた。頭を破壊するとか、首を落とすとかするよりは、幾分かマシな処理方法だと思う。

「それで、結局ゾンビ化して追い出すことになるなら、最初から受け入れない方がいいって意見を言う人がいて、結局は逃げなんだろうけどね。まあ、食料の問題もあるし、いい加減腹を決めなきゃいけない時期に来たんじゃないかって話でね」

 ここに避難してきた当初は日常の延長で、助けを求める者は皆助けようって方針だった。だけど中央と連絡を取ることができず、追加の物資を期待できないと感じ出したこの状況において、救える命は有限なんじゃないかって、自分の命すら間もなく脅かされるんじゃないかって、気づき始めてしまったのだ。

 これで、内部で命の選別をし始めたら、切り捨てられる危険を感じた者が暴動を起こす危険もあるけど、外部から来るものを無視するだけであれば内部崩壊する危険も低い。

 ただ、それでも覚悟が必要だった。今まで浸かってきたぬるま湯のような日常を否定し、前に進む覚悟が……。

「こんなことを話しても動揺させるだけだから、聞かれない限り話さない方針なんだけど、大木くんはこのショッピングモールを避難所にした当初からいたメンバーだから、個人的に話しておきたいと思ってね」

「それは……ありがとうございます」

 聞いたからと言って何ができるわけでもないが、それでも話してもらえたのはうれしかった。

 それ以上は会話もなく、オレたちは唯一の出入り口にしている西側従業員用出入り口に到達した。

 その時点で喧騒の音が聞こえていて……、

「そんなっ、戻るまで開けないように言ってあったのにっ」

 田中さんは焦った様子で駆け出し、オレもそれに続いた。


 外では、バリケード越しにゾンビとの抗争が繰り広げられていた。数が多い。

 ゾンビの数はおよそ20体、ほとんどはバリケードで防がれているので鉄の棒で押し払うことができているが、一か所バリケードがほころびかけている場所があった。

 負傷した見知らぬ男の姿があるので、彼が避難してきた人なのか。

「田中さん! 助けてくださいっ」

 バリケードの崩れかけた場所でゾンビと小競り合いしていたおじさんが、必死に助けを求めてきた。

 すかさず田中さんが駆けつけて、T字になった鉄の棒をゾンビに押し付ける。

「押し返すぞ!」

「は、はいぃぃぃ!!!」

「加勢します!」

 状況確認をしている暇はない。オレも加わって、木刀でゾンビの頭を横打に殴打した。その怯んだところを田中さんと元々いたおじさんで押し返す。

 合わせて、そこにいた何人かが新たな鉄筋を抱えてきて、ガシャガシャとバリケードを再構築する。

「た、助かったぁ」

 間の抜けた、安堵したような声。

 それはへたり込んで何の役にも立たなかった、見知らぬ負傷した男から発せられた。今の状況は恐らくコイツのせいだろうが、問いただしている時間が惜しい。

 なんだってこんなに引き連れてきたんだと罵倒したくなるが、そんなのは余裕ができた時にすればいい。

「……避難してきたのは君だけか?」

 田中さんが勤めて冷静に質問すると、男は視線を逸らして、

「他にもいた気がするけど、途中ではぐれたし、……知り合いってわけでもなかったし……」

 言い訳とかどうでもいい。

「そうか。なら一旦中へ……」

 田中さんがそう指示しようとした、その時だった。


「キィィィィィィィィィィィエエエエエエエエウェェェェ!!!!」


 一体のゾンビが奇声を上げた。

 何……が……。


 ゴクリ。その喉の音は誰のものだったか。

 オレかもしれないし、田中さんかもしれないし、他の誰かかもしれない。

 地鳴りのような足音が、聞こえてきた。


「ウソ……だろ」


 バリケードの向こうにある駐車場には、防衛の意味もあって車がたくさん止めてあるのだが、その向こうから、人が、いやゾンビが、1人、2人、3人4人、続々と姿を現せた。


「呼んだ……のか」


 いつかは出ると思っていた変異種が、こんな形で、こんなタイミングで……。


「撤退だ。みんな急いで中に……ぃっ」


「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


「させるかっ!!」


 オレはさっきまで言い訳めいたことを言っていて、急に正気を失い田中さんに襲い掛かろうとした見知らぬ負傷者めがけて、木刀を振りぬいた。

 横っ面を殴打して、吹っ飛ばす。


 胸が熱かった。『軍神の護符』は内ポケットではなく心臓の位置に縫い付けてある。オレの迷いを晴らし、冷静に行動できるよう導いてくれる護符だが、物理で動くゾンビに対して直接的な効果は望めない。

 そして木刀の一撃も、怯ませたり吹っ飛ばすことはできても、ゾンビに致命傷を与えることは叶わない。


 俺は吹っ飛ばした見知らぬ負傷者(ゾンビ化済)が立ち上がる前に、回り込んで出入口を思いっきり閉じた。

 マジヤバかった。中に入られたらアウトだった。


「おお……き……くん?」


 田中さんが、退路を塞いだオレを、信じられないものを見る目で見ている。


「中に入れたくないんでとりあえず閉じました。アイツを引き付けられるかやってみるんで、順番に中に……」


「キィィィィィィィィィィィエエエエエエエエウェェェェ!!!!」


 再び響き渡るゾンビの奇声。

 泣きたくなった。

 もうダメかも……。

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