第14話 クロード、アリスと潜入戦に参加する(下)
僕たちは出来るだけ目立たないように旅の一行に
何故そんなことを知っているのかとみんなが――それこそ本職のパールちゃんまでもが首を捻る中、彼女は
――まぁ、女王国だから。
アリスちゃんだから。
考えることを放棄した全員が無理矢理納得の頷きを見せた。
彼女といると、どうしてもそんな雰囲気になってしまう。ずっとそばにいたパールちゃんやクロエさんは特にそんな感じだった。
朝からうっそうと茂る山林の中を歩き続けること数時間。やがてアリスちゃんの言った通り教会の屋根らしきモノが見えてきた。僕たちは離れた場所にある物置らしき建物の陰に隠れる。
「じゃあ、パール。偵察お願いね」
「はい」
アリスちゃんの言葉にパールちゃんは笑顔でハキハキと応答する。……ものの、彼女は一向にそこを離れようとはせず、姉のサファイアをチラチラと見るのだ。何を求めているのかは一目瞭然。
サファイアは僕たちには絶対に見せようとしない、ちょっと面倒臭そうな、それでいて仕方ないなと言わんばかりの表情で深い溜め息をつくと、リボンで束ねた髪を揺らしながら教会に向けて歩き出した。
その後ろからパールが嬉しそうにサファイアの腕に飛び掛かる。
イヌのように尻尾があったならばブンブンと振り回していたことだろう。
サファイアは抵抗らしい抵抗もせずされるがまま。
二人して教会に向かっていくのを、こちら側は笑顔で手を振って見送った。
しばらくして戻ってきた彼女たちの報告によると、こんな山奥の寂れた教会なのにも係わらず、屈強な感じの衛兵が数人――それも常駐している雰囲気らしい。
正面の出入口に二人。
裏口には少々やる気の無さそうなのが一人。中の広間にも二人。さらに控室にもあと二人いるらしい。ただこちらは仮眠中とのこと。
更に内部の詳しい構造まで明らかになった。
今までサファイアの勘を頼りにしてこういった潜入任務をこなしてきたのだが、山猫を率いるパールちゃんの調査は本職だけあってケタ外れだった。
改めて女王国の情報収集能力の凄さを垣間見た気がする。
「――それにしても不自然だよね?」
僕の言葉にトパーズが頷く。間違いなくここはあちらにとって大事な場所。
全員がアリスちゃんを見つめた。
彼女は笑顔で頷く。
「いい? 絶対に殺しちゃダメよ」
「――了解!」
予定通りクロード隊は正面から。
アリスちゃんとパールちゃんは裏口から。
レッドさんとクロエさんはこの場で待機。
僕は深呼吸すると、新調された鎧の胸元に入れたレスター君の手紙に手を添えて目を瞑った。それだけで力が湧き上がってくるのを感じる。
「よし、いこう!」
僕の号令とともにクロード隊が動く。やや遅れてアリスちゃんとパールちゃんが軽いステップとともに音も無く裏口目指して駆けだした。
僕たちは衛兵の死角になる塀沿いに近付き、角を曲がって正面へ。
息を揃えて呼吸を合わせて飛び出す。
いきなり出て来たこちらに兵は驚くも、素早いトパーズとサファイアの体術による先制攻撃。入口の異変に反応した中の人間も合流してきた。
こうして埃っぽい教会内で始まる制圧戦。
――望むところだ!
絶対に兵士は殺さずに。
これこそ僕たちが待ち望んでいた勇者一行の仕事。
みんなもそう感じていたのか、いつもよりも確かな連携。
何となくホルスさんの娘の為に戦っている時を思い出した。
あの充実感。そして使命感。
湧きあがる
そして瞬く間に終了した。
呼吸を整えていると後ろからカツカツと教会の床を叩く足音が聞こえる。
「ご苦労様。……怪我はない?」
アリスちゃん、その後ろにはパールちゃん。
入口からレッドさんとクロエさんも姿を見せた。
「大丈夫だよ。……全員当て身で済ませたから」
僕が代表して答えると、彼女は弾けるような笑顔を見せる。
「違うわよ。あなたたちの身体を聞いたの。……まぁ、それなら大丈夫そうね」
アリスちゃんは僕たちの横を通り抜けると、無造作に壁に掛けられていた風景画を外す。何事かと彼女の背中越しに覗き込むと、絵によって巧妙に隠されていた小さな窪みがあった。
さらにその奥にはあったのは取手のようなモノ。
彼女はそれを何の躊躇いもなく掴むと、ふうっと息を吐きながら全体重をかけて一気に引き落とした。
やがて石がこすれる音が教会内に響き渡り、床にぽっかりと穴が空いた。中は暗いながらも階段が続いているのが見えた。
あまりの展開にみんな驚いて言葉も出ない。
何より一番驚いていたのは専門家のサファイアとパール姉妹だ。
クロエさんも青ざめていた。
「さあ、こっちよ」
アリスちゃんはこちらを
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