第13話 クロード、アリスと潜入戦に参加する(中)
僕たちを取り巻く環境は一変した。
もちろん良い風に。
女王国というのはやはり立場的に大きかったらしい。
補領ロゼッティアのホルスさんなどから声を掛けられれば、その他の領主さんたちもにこやかに話しかけてくれる。
そんなことなども影響したのだろう、パーティの人間関係も随分と良くなった。
トパーズとも腹を割って話せるようになったし、二人で飲みに出かけることも増えた。そして何故かルビーとの関係を相談されたりする。二人はくっつきそうな感じだ。僕やサファイアが応援しているのも大きいだろう。
でもやっぱり一番変わったのはサファイアだと思う。
何か
……いや、それ以上だ。
素朴な可愛さはそのままに、凄くきれいな大人の女性に生まれ変わった。
今までは独占欲からか僕に対して過剰な接触があったりしたけれど、それも控えめになった。まぁ、コレに関しては僕に非があるのは分かっている。
アリスちゃんやルビーと良好な関係を築けているというのもあるだろうけれど、彼女が変わった一番の理由は妹のパールちゃんの存在にある。
この前、正式に婚約者としてパールちゃんを紹介してもらい一緒にご飯も食べた。
妹である彼女と一緒にいるときのサファイアはいつもと違う面を見せる。
しっかりしているような、ちょっと保護者のような感じとでもいうのだろうか。
食べ物を取り分けてあげたり、汚れた口元を拭いてやったりと、まるで動物の親子かのように甲斐甲斐しく妹の世話をしてやるのだ。
きっと子供の頃から二人はこんな感じだったのだろうと、その光景が目に浮かぶようだった。
『……サファイアは本当にいいお母さんになるんじゃないかな』
気が早いのだけれど、未来を想像して思わずそんなことを呟いてしまったら、妹のパールちゃんの方が激しく頷いて同意した。
サファイアはただただ照れていたけれど、そんな彼女にパールちゃんがわざと甘える。仲の良い姉妹のおふざけに、僕は何とも言えず胸が熱くなるのを感じていた。
そんな二人を見守っていた僕をパールちゃんは真剣な顔で見つめてくる。
そして僕のことをずっと誤解していたのだと神妙な顔で謝ってきた。
もちろん僕はそれを笑顔で受け入れる。そもそもこちらから彼女の大事な女王様をセカイの敵だと罵ったのだ。
そしてこれからは仲間として、そして未来の家族として一緒に頑張っていこうと誓いあった。
そんな充実した日々を経て、ポルトグランデを離れたのが数日前。
僕たちは厳戒態勢のヴァルグランを進んでいた。
今回は女王国との合同特別任務で、女王であるアリスちゃん自らの立てた作戦だ。そのこともあって彼女自身も参加する。必然的に側近のパールちゃんやレッドさんも付いてきた。
それだけでなく、何故か戦いに不向きそうなクロエさんまで同行するという。
一応彼女の安全はアリスちゃんとレッドさんが命を懸けて守ることになっているが、そんなことより――。
――クロエさんってビックリするぐらい綺麗な女性なんだけど。
近くにいるだけで大人の魅力に当てられてドキドキしてしまう。女王国の公館で初めて会ったときも驚いたけれど、こうやって同じ時間を過ごすと落ち着かない。
何とか周囲に知られないようにするのがやっと。トパーズと何度視線を合わせたことか。彼もルビーの前で失態は見せられないと気合を入れているようだ。
そして彼女は執政官であるテオドールさんの妻だという。
……ということはケイトちゃんの母親でもある、と。
あんな年齢の娘を持っているとは思えないほどの若々しい姿。
そんな彼女が何故かアリスちゃんの側近をしていて、今回の潜入作戦にも参加するという。彼女は一体どんな役割を果たす予定なのだろうか。
アリスちゃんはまだ教えてくれない。
これは僕たちを信頼していない訳ではなく、『お楽しみ』ということらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます