第27話 クロード、帝都に帰還する(四)
何やら呻き声が聞こえたのでそちらを見たら、ロレントが
意識が残っているのかいないのか。
焦点の合わない目で、のそりと。
「……まだ生きてやがったか。しぶといヤツめ」
たいして大物でもないのにいつも上から目線で偉そうなオマエが、最初から大嫌いだったよ!
俺は音も無く近付くと、思いっきり頭蓋骨を踏み砕いてやった。
ロレントの動きが完全に止まる。
やがて派手な足音とともに外で待機していただろう衛兵たちも駆けつけてきた。
そしてピンピンしている俺を見るなり、有無も言わずに剣を抜いて向かってくる。
俺が剣を横なぎに振り抜くと、前にいた二人の胴体が上下真っ二つに割れた。
「……雑魚なんだから引っ込んでろよ」
あまりに歯ごたえが無さ過ぎて、思わず半笑いになってしまった。
――コッチは今まで魔王と戦っていたっていうのに。
同僚に起きた悲劇を目の当たりにした残りの衛兵たちは、何がおきたのか理解出来なかったらしく、一瞬呆けた顔をした。……が、徐々に恐怖に顔を歪ませていく。
せっかくだから少し怖がらせてやろうと、笑みを浮かべたまま彼らとの距離を詰めれば、皆は同じだけ
一人が慌てて背を向けて逃げ出し始めれば、それを追いかけるようにして我先と全員が逃げ去っていった。
「……ったく、ちょっと脅せばコレかよ。兵士の教育がなってねぇなぁ、アリスさんよぉ」
俺は根性無しの衛兵を見送りながら、大げさに溜め息をついた。
不意にどこかからか殺気の籠った視線を感じたので改めて周囲を見渡せば、血を流した女が壁にもたれながら俺を睨みつけているのに気が付いた。その傍らに転がっている血まみれのテオドール。そちらは一目で息絶えているのが見て取れた。
――あぁ、この女は。……確かクロエだったか?
アリスの側近だったはず。
なかなかのイイ女――いや、よく見ると相当整った顔をしていることに気付いた。
少々歳食ってるから対象外だったが、十分ソソる身体つきに思わず息を飲む。
「……いい目だな。顔も身体も気に入った。……なぁ、お前。俺のガキを産む気はあるか?」
「……誰が!」
そう吐き捨てるや彼女は素早い身のこなしで近くに転がっていた剣を拾い上げ、それを握りしめて突っ込んできた。
先程の衛兵よりも余程サマになっている。
だが所詮はド素人。
俺は最小限の動きでクロエの斬撃を避けると、彼女の身体をしっかり拘束した。そしてアゴを上げてキスしてやる。
慌てて
柔らかい。
気持ちイイ。
ルビーやサファイアには無かった大人の魅力溢れる熟れた肉体と、そこからほのかに立ち上る体臭に、俺の下半身が昂ってくるのが感じられた。
――やっぱり女はこれぐらいじゃないとダメかもな?
キスしたまま柔らかい彼女の身体全体を丹念に揉みしだくと、彼女は色気を感じさせるくぐもった声を漏らす。
気を良くした俺はしばらく愛撫を続けて可愛がってやる。
徐々に身体の力が抜けてきた。
――ようやく
俺は唇を離すと、とっておきの笑顔で頬を伝っていた涙を優しく拭いてやった。
「早速今晩から可愛がってやるよ。お前のようなイイ女なら俺の正妃の座をくれてやっても惜しくない。今日からお前はこのセカイの覇者の妻だ。……どうだ? 嬉しいか?」
それだけ伝えると、返事を待たずもう一度とろけるようなキスをしてやる。
彼女は抵抗するように手を中空で動かしたが、結局耳飾りに指を引っ掛けることぐらいしか出来なかったようだ。
悔しいのかそれをギュッと握り締める。
その仕草がまた妙に色っぽくてたまらない。
簡単になびくようなチョロい女では面白くない。
――やっぱりコイツは極上の女だ!
完全に屈服させようと、しばらく舌を入れてキスをしていたのだが、徐々に唾液の中に血の味が混じるようになってきた。
驚いて顔を離すと、いつの間にか彼女の目から生気が失せていた。
「……何だよ、舌を噛み切ったのか?」
ちくしょう、せっかくイイ女だったのに。
こんなことになるのならさっさと抱いておけばよかった。
力が抜けて崩れ落ちるクロエを憂さ晴らしとばかりに蹴り飛ばして舌打ちすると、不意に後ろから恐ろしい程の殺気が膨らんでいくのを感じた。
振り向き確認すると、突っ込んでくるのは仮面を外したシーモア。
「簡単に死ぬとは思っていなかったが、やっぱり生きてやがったか!」
俺は呟きながら、身を翻して彼の渾身の一撃を避けた。
「……大した余裕だな。……それが命取りになるぞ?」
シーモアは体勢を整え、連撃を加えてくる。
「相変わらずいい動きをしているなぁ。やっぱりアンタは強えぇよ! ……だが残念ながら魔王ほどじゃねぇ」
俺は一気に間合いを詰めると、大上段から剣を振り下ろす。
シーモアはそれを剣で受けとめようとしたが――。
「格が違うってんだよぉ!」
そのまま強引に叩きつけるように振り抜き、剣ごと彼を真っ二つにしてやった。
血しぶきをあげて倒れる彼を何の感慨もなく見下ろしている俺には、相変わらず幾つかの視線が向けられている。
だがこちらに向かってくる気配はない。
傷を負っていて動けないのか。
それとも単純に俺を恐れて竦んでしまったのか。
このセカイで最強と言われているシーモアですら俺とまともに戦えなかったのだから、後者だとしても仕方のないこと。
「そう、それでいい。……雑魚はそうやってひっそりと息を殺して生きていけばいいんだ」
それがこの『新しいセカイ』での常識となる。
――歯向かおうとさえしなければ、生きることぐらいは許してやる。
俺は彼らを
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