第6話 女は海
「ねえ。私の話聞いてくれる?」
「はい」
明るくて悩みなんか無さそうな陽子さんだけど、何かありそうだった。僕は腹をくくって陽子さんの話を聞くと決めた。
「私ね。今、家出してるんだ」
「家出ですか?」
「そう、旦那のところからね。逃げてきちゃった」
恋愛の話かと思えば、夫婦関係のこじれた話じゃないか。まだ高校生の僕には荷が重すぎるのではないだろうか。僕は怪訝な表情をしていたのだろう。それを察した陽子さんは頭を下げてくれた。
「ごめんね。こんな話迷惑だと思うけど」
「アドバイスはできませんが、聞くだけなら大丈夫です」
「ありがと」
陽子さんの話は続く。
彼女は大学4年生。しかも昨年学生結婚したのだとか。
熱愛していた相手と勢いのまま結婚したのはいいが、結婚してから相手の欠点が分かって来たのだという。
それはDVだった。
旦那さんは気に入らない事があると暴言を吐くし暴力を振るう。そして陽子さんが浮気していないかどうか、逐一チェックをするらしい。
「泊りの研究もできないしコンパにも出れない。ああ。私ね。理学部の生物学科なのよ。卒論用の実験やら何やらで泊りの場合もあるんだけどね。あの馬鹿が邪魔するわけ。こないだはせっかくヒトデから抽出したサポニンが全部腐っちゃってね。大迷惑だっつーの」
「それだけ陽子さんの事が好きなのでは?」
「違うね。あれは私を徹底的に管理したいだけなんだ。私が好きなら私の事を尊重できるはず。結婚して自分の物になったって勘違いしてるんだよ」
「それは……離婚の条件としては普通じゃないんですか?」
「まあね。よくある話だと思うよ。でもね。ちょっと難しいんだ。相手の親がね。地元の名士って奴? だから話がこじれそうだし、うやむやにされそうな気がしてる」
「だから家出をしたんですね」
「そうそう。流石にプッツンしちゃってね」
そう言って僕を抱きしめた。
「ごめんね。こんな事につき合わせちゃって」
「いえ」
「私ね。もうアイツの事好きでも何でもないんだ」
「そうなんですか」
「そう。もう顔を見たくない。でもセックスは求めてくる。好きでもない男と寝るのって苦痛でしかない」
「苦痛なんですか」
「そうだよ」
「じゃあ僕とするのは苦痛じゃないんですか」
「ない。海斗の事は大好きだ。一目惚れなんだ」
ああ。もうこれはダメだ。抑制が効かなくなった。
僕は陽子さんの背に両手を回してきつく抱きしめた。
「僕も、一目惚れかもしれません。陽子さんの事が好きです」
「嬉しい。今日は我慢しなくていいよ」
そう言って陽子さんは僕を押し倒した。そして僕の唇と陽子さんの唇が重なる。そして互いに衣服を脱いで裸になった。
「女は海なんだ。男を抱いて安らぎを与える存在」
「……」
「さあ海斗。遠慮なく飛び込んで」
「うん」
僕は陽子さんの中へと飛び込んだ。
太陽と一体となったかのような煌めく快感が僕を包む。
僕は何度も陽子さんの中へと飛び込んだ。陽子さんも僕を受け入れてくれた。そして二人は一つに溶けあった。
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