第5話 激走爆走★過激な陽子さん

 翌日、僕はカブに乗って出かけようとしていた。

 目の前に一台の黒い軽自動車が止まってクラクションを鳴らす。


 運転席には陽子さんが座っていた。

 助手席のウインドウが下がっていく。


「海斗、乗りなよ。ドライブしよう」


 陽子さんが誘ってくれている。でも、昨日の強烈な経験が頭に残っている。陽子さんの胸元を見てまた勃起したらどうしようとかウジウジ考えていたらまたクラクションが鳴った。


「早く乗れ。秘密の場所に連れて行ってあげるから」


 急かしている。

 僕はカブを車庫に仕舞い、軽の助手席に座った。


「秘密の場所って?」

「それは秘密。今日は私に付き合ってね」

「はい」

「よーし。行くぞ!!」


 笑顔で車を発進させる陽子さんだった。


 陽子さんの軽は今どき珍しいマニュアル車で、でも何だか運転が荒っぽい。右左折の際にはタイヤがキキっと鳴るし、ローギアから目いっぱい吹かして大胆に加速していく。そして海岸沿いのワインディングロードを目いっぱい飛ばしていく。


「いえーい。絶好調!!」


 嬉々として叫んでいる陽子さんだったけど、僕は振り回されて目が回りそうだった。


「この加速がたまんないんね! やっぱツインカムターボだぜ! うっひゃ~」


 ちらりとメーターを見ると時速100kmを余裕で越えていた。こんなにすっ飛ばす車に乗るのは未経験だったので、正直度肝を抜かれていた。快感ではなくて恐怖に支配されていた。僕は情けなくギャーギャー叫んでいたと思う。


 車はいつの間にか海岸通りを離れ、山道を走っていた。そして何か宿泊施設のようなところへと入っていった。


 これはもしかしてカーホテルとかいうラブホなのではないだろうか。

 敷地内にいくつもの棟が並んでおり、それぞれ車庫が併設されていた。


 その一つにバックから駐車した。


 僕はもう心臓が爆発しそうなほどドキドキしていた。

 秘密の場所ってラブホの事?

 ここですることって、やっぱりアレ?


 何が何だか分からない。


「早く降りてこっちに来て」


 入口のドアを開けた陽子さんが呼んでいた。僕は腹をくくって車を降りた。そして陽子さんの後へとついて行った。


 ダブルベッドが中央に置かれているシンプルな部屋。

 ラブホってもう少しピンク色だったり怪しい雰囲気を想像していたんだけど、いたって普通の色使いだった。


 陽子さんは冷蔵庫を覗いてコーラの瓶をだした。

 コカ・コーラって書いてあるからコーラの瓶だと思ったんだけど、それ初めて見た気がする。

 陽子さんは栓抜きを使って王冠を取った。そしてコップにコーラを注いでくれた。二人で乾杯してからコーラを飲む。瓶入りだけど普通のコーラだった。

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