第82話 神様案件

暖かな陽射し差し込む中、食卓につくのは私一人。

目の前には精霊さんにお願いして祝福してもらった『温かいよー』の保温鍋敷きのお陰でまだくつくつとしたみぞれ鍋。


以前買ってみた大根に似たダコンは、外見だけでなく可食部の見た目も風味もかなり大根に近かった。

だが、残念ながら水分量が大根より随分少ないのか、どうにも筋ばっていて食感が悪い。


煮たり焼いたり、切り方を工夫してみたり。

味自体には馴染みがあるので諦めきれず、色々試行錯誤して今日はおろしにしてみた。


生ではなく火にもかけてるし、きっと柔らかくなるはず!

丁度大量に購入した魚の中に脂の乗った物がある、これならさっぱりしたおろしに味的にも合うだろう。

こうなると出汁取り用に昆布が欲しくなるよねぇ。今度ゆっくり探してみようかな。



骨ごとぶつ切りにした魚からは充分に美味しい出汁が出て、ダコンおろしもうまい具合に筋ばった繊維がとれていて、味食感共に満足いく一品になっていた。


出来映えに問題はない。

問題はすっかり春めいて日中の陽気で暖かな部屋で鍋物をしてしまった事と、うっかりおろしの汁ごと鍋に入れてしまった為に部屋中に強く漂う大根臭……

なんとも嫌な感じの熱気が部屋に篭ってしまっていた。部屋に換気扇が欲しいです……


食べ終えた頃にはすっかり汗だくになってしまったので早めにお風呂。


最近はお風呂に入ってると精霊さんも寄ってきて一緒に湯船に浸かってたりする。

部屋に置いてる水皿で水遊びした後みたいに、湯船のお湯もきらきらはするのだけど、効果を確認しようとどれだけじっくり見ても何も判らないままだった。


「でもやっぱり光るんだよねぇ……なんでかなあ」


 なあにー?

 ひかるのだめー?


「あ、ダメじゃないよ。でも何で光るのか判る?」


 わかんなぁいー

 リーンのおみずだけだよー

 きらきらきれいー

 リーンいやー?


え、そうなの?

むぅ……これは神様案件かな……?

でも聞いても答えてくれるか微妙な気もするなぁ。まあ、引っ越しのご挨拶も兼ねて今度行ってみようかね?


「ううん。嫌じゃないよ。理由判ったら教えてくれる?」


 はあいー

 もっときらきらーするー?

 えーい! ぴかー


ぎゃっ! ちょ、眩しいぃぃっ!!!

風呂場が光の粒でいっぱいだよ! 抑えて、抑えてーっ!



毎度毎度、精霊さんの光サービスが凄すぎる……

誰か加減というものを教えてあげてほしい! 切実に!

某アニメの人みたいに目をやられるのは困るですよ?


光が収まるまでその場から動けなかったので、すっかりのぼせてしまったよ……

あぁー、気持ちわるぅぅ……



フラフラしながらもなんとかベッドにたどり着き、暫く休んでやっと体調が戻った。


うーん、目眩みからの湯あたりは流石にキツイ。

いやぁ、風呂場で倒れなくてほんとよかったよ……一人だとぶっ倒れてても誰も気付かないし、助けてくれないし、裸のままじゃ風邪も引くだろうし~……って、あれ? そういえば私、こっち来てから病気してないな?


あんなすきま風入るような寒い家でも風邪一つひいてない。

しっかりした防寒着も暖房もあった日本でも、冬場には一度くらい風邪ひくのがいつもの事だったのに。

もっとずっと環境条件が悪く、栄養状態だって良いとはいえない筈のこっちで風邪もひかないって、ちょっとおかしいかも?



……もしかして異世界人だから病気にならないとかなんだろうか?


むむむ……これこそ神様案件なんじゃない!?

聞いて教えてくれるだろうか?

私の体、どうなっちゃってんだろ!?


なるべく早く神様に会いにいこう。

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