第10話 冒険者ギルド
この過剰なくらい祝福付いた鞄を売ってまた祝福一つのを買おうかと悩んだけれど、お礼言うだけで簡単に祝福増えちゃうなら、きっと結局同じ事の繰り返しになるだけだろうから諦めた。
せっかくいい効果が付いてるしね。……過剰祝福だけど。
精霊と繋がりやすいとは聞いてたけど、召喚者
ある程度意図的に祝福を付けれるなら、こんな便利なことはない。
そりゃ召喚したがる訳だよね。
朝から疲れたので井戸で顔を洗って、気分をリフレッシュさせてから買い物に出る。
鍵を預ける際に女将さんから周辺の街情報を仕入れた。「家が駄目になって暮らせなくなったので、せっかくだから王都に出てきたけど、都会すぎて自分には合わないので手頃な街はないか」と尋ねたら、真偽の怪しい噂も含めてもの凄く詳しく教えてくれた。
薄い顔の日本人かつ女の体なので、年若い力も何もないひょろっこい男の子に見えるらしく心配してくれたようだ。
あまりに長く話し込んでいたので、最後はご主人に怒られて連れていかれてた……女将さんごめんよー。
昨日は怪しまれずに街歩きできるように外側を取り繕う買い物しかしてないので、旅に出るにしろ、何処かで定住するにしろ、生活に必要な雑貨類全般何もない。
精霊のお蔭でずいぶん荷物が持てるようになった事だし、一番品揃えがいいであろう王都にいるうちに買い揃えてしまいたい。
今日も朝から広場いっぱいに出てる露店を順に眺めていく。
タオル代わりに手拭いを多めに購入。シーツも買っておこうかな? 布は使い道多いし余裕あった方がいいからね。
後は下着や蝋燭、鍋とか、昨日食器だけ買って存在を忘れてたカトラリーとか、包丁代わりのナイフとか……結構買う物多いなあ。
調味料類とかも欲しいけど、露店よりロスリー商会の方がよさそうかな。後で行ってこよう。
そして『いっぱい入るよー』の、いっぱい具合が凄い。明らかに背負い鞄に入る量を越えて買い物しているけど、皆祝福慣れしてるようで不思議がられる事はなかった。
20人に1~2名の割合でいるという詳細が視える瞳持ち。
過剰祝福がバレて目立ってしまうかと心配していたけど、意識して視ようとしなければ判らないのは他の瞳持ちも同じなのか、案外平気なものだった。
昨日の串焼きみたいに祝福がある露店があったので、少し早めのお昼に購入。
美味しそうな小振りのケバブサンドっぽいそれを買う前に効果を確認して、総称が『精霊の祝福』じゃなく『精霊の気紛れ』と言われる気紛れさを実感した。
『重くなるよー』
それは重量的な意味で? 胃もたれ的なこってりな意味で?
どっちにしても露店で売るような軽食に付けるべき祝福じゃないよね!?
気になって思わず気紛れ付きのやつを選んで買ってしまった。
こってりな方でした………うっぷ。
重たいお腹を抱えて冒険者ギルドへ向かう。
場所は女将さんからも聞いていたし、冒険者ギルドと衛兵の詰所は屋根の高いとこに目立つ看板があるからわかりやすい。
魔獣の襲撃等、有事の際にすぐ駆け込めるよう、どこからでも一目で位置が判るようになってるんだって。
やっぱいるのかー、魔獣。
まあファンタジーのお約束だし覚悟はしてた。街を移動する時は忘れず冒険者を雇うようにしよう。
冒険者ギルドはぼんやり抱いていたイメージより大分大きく立派な建物だった。泊まってる宿よりかなりデカい。
でもよく考えたら一階がほぼ食堂用スペースになってる宿屋より、受付とかギルドとしての機能スペースと併設の酒場用スペースが必要と思えば当たり前かも? 本当にラノベ通りに酒場があるかは知らんけど。
緊張しながらギルドの扉を開くと、入ってすぐの所に大きな受付カウンター、受付前にはそこそこ広いスペースが空いてて、混雑時にここで並ぶ為の場所だとわかる。
そして奥には酒場。
おー、ほんとにあった。真っ昼間から飲んでる人も結構いて、イメージ通りの光景に、内心ちょっとワクワクした気持ちになったのは内緒。
そんな浮かれた気持ちのままにギルド内をキョロキョロしてたら、一番近くにいた受付のお姉さんとバッチリ目が合って微笑まれてしまった。
うぅ……御上りさんみたいな事しちゃった。恥ずかしい。
見られていたと思うと恥ずかしくて顔が赤くなる。あー、顔が熱い。
私はその時まだ知らなかった。
自分が周囲から若く見られているようだとは感じていたが、まさかこの世界の成人である十六歳より前の十四~十五くらいに見られてる事を。
そしてこの時の様子を見ていた受付嬢達から「あら、成人前の子供なのにお姉さんを見て赤くなるなんておマセさんで可愛いわね」と、生暖かく見つめられていた事を。
後から全てを人づてに聞かされて、悶絶するハメになる事も、まだ何も知らなかった。
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