第4話 説明

話し合いの場で待ち受けていたのは、昨日に引き続き王様と王女様、そして宰相と王太子様。

……なんか偉い人増えてるし。国の重要人物が一ヵ所に集まるとかいいんだろうか?

ここでもし私が自爆テロ的な事したらどうすんの? まあ、しないけど。


ちなみに王女様は王太子様の娘さんだった。

なるほど、王様の娘じゃなく孫か。確かに王孫でも王女っていうよなあ。

年の差の謎が解決してスッキリ。



さて、挨拶代わりの雑談を終えていよいよ本題ですよ。

感情的になった所で何も解決しないので、まずは召喚の理由やら相手の希望について聞く事にした。

一晩経って多分帰れないだろうと諦めの気持ちが大きくなったのもあり、一応冷静に話を聞ける、と思う。多分。諦めたなんて絶対相手には言わないけど。


「わかりました。では私の方から説明させて頂きます」


そう名乗りをあげたのは宰相だった。

まあ、このメンツなら説明役は宰相になるのが普通か。


「昨日お客人がこちらにこられたのは召喚の儀と呼ばれる儀式によるもので、この儀式は月の神の力を借りて異なる世界へ呼びかけを行うものです。儀式を行えるのは年に一度、月の力が高まる日の夜のみで、儀式の成功率はとても低いのです。お客人は62年ぶりの召喚者でした。

そういった事情もあり、喜びのあまり昨日の者が不適切な言葉を使ってしまい申し訳ありませんでした」

「いえ……」


一晩経って時間をおいたお陰で、昨日はカッとなってしまったけど、相手側の立場からすればそういう表現になるのは仕方ないか、と今は思える。

だからといって納得できるかといえばNOだし、相手の言いなりになんて絶対なってやらない。例え帰れないからってこの国の為、世界の為、なんて言われても知ったこっちゃない。


私は自分の幸せ第一だ。


「召喚者の事を勇者、または聖女と呼びます。この名称は初代召喚者が考えたそうです。

勇者や聖女は神々や精霊と繋がる力が強いと言われております」


あら、やっぱり聖女もいたんだ。

あれ? じゃあなんで私は勇者扱いなんだ? 地味顔のせい!?


「我らの生活は神々や精霊の恩恵によって成り立っています。前勇者が亡くなってからのこの30年、作物にも恵まれず、神殿に与えられる神の御力も弱まる一方です。

再びその恩恵を得る為の協力をお願いしたく、お客人を呼び出させてもらいました」


なるほどね。

理由としてはまあ一応わかった。

だから協力して下さいって言われてもお断りだけど。


「一応、儀式を行った理由はわかりました。ですが、昨日も言った通り、私には大病を患った親がいます。家の事もあるし、親の治療手配の為にも早急に戻りたいんです」


万が一帰れるなら一秒でも早く帰りたい。

この世界の危機より親の方が大事だ。だってまだ手術の同意書にサインもしてない。


「それは……大変申し訳ないのですが……実は召喚者が元の世界に戻ったという記録がなく……」


やっぱりそうか……

そりゃそうだよね。自分達の生活の為に帰すのを許す訳がない。仮に方法があっても記録には残さないだろう。


半分諦めてたけど、改めて事実を突き付けられると凹む……

視線を落として黙り込んだ私に焦ったように王太子様が声を張り上げた。


「貴方には本当に済まないと思う! だがどうか民の為に力を貸してほしい!

代わりといっては何だが、帰還以外の望みは出来る限り叶えよう。生活も身分も保証しよう。私の娘と婚姻すれば王族として遇する事ができる、貴方の元の身分とも釣り合いが取れるだろう。

だからどうか頼むっ!!」


……は?

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