第3話 仕切り直し
結局誰も私の要求に返事する事ができず、私も冷静ではいられないので仕切り直しで話は翌日にする事になった。
固まってしまった空気からいち早く抜け出したのは後ろに控えていた女性。
立派なドレスを着てるから身分ある人なのだろう。
年の頃は15~16といった感じの美しいその少女は、第一王女だと名乗った。
え、待って。その年で第一王女? ずっと女の子が生まれなくて頑張ったにしても、このお爺さんの娘って無理がないか!?
それともまさか超童顔で30くらいだったりするんだろうか?
……いや王族の、ましてや女性がそんな年まで未婚とか普通ないよねー。うん。
私が年の差に驚き呆けてる間に、王女様はもうすでに日が変わり深夜であること、お互い冷静に話す為に時間を置いた方がいいだろうと、冷静に落ち着いた声で翌日持ち越しを提案してきた。
聞いてる方はとても冷静ではなかったが。
私も。周りも。
実際、私も疲れていた。主に精神的に。
王女様の年齢に驚いたせいで、一瞬でキレた程の怒りはちょっと消えたのと同時に疲労を強く感じてしまっている。
睡眠をとって疲れを癒したい気持ちもあったので、王女様の提案に素直に応じる事にした。
訳わからん場所で眠る怖さはある。でも今は休んだ方がいいだろうし、多分……もう日本に帰るのは無理なんだろうな、とも思う。
ラノベ的なお約束でも大抵は帰れないし、なにより帰る方法があるなら、きっとあんな気マズそうになんてしないだろうから。
だからこの場に留まる意味はない。
そう言い聞かせて、胸に残る不安と怖さを抱えたまま床に描かれた魔方陣から足を踏み出した。
案内された客室は、アホみたいに広いし豪華過ぎて落ち着かなかったけど、天蓋付きのふっかふかなキングサイズベッドは疲れた体と心に優しかった。
疲れてたとはいえ、知らない場所で寝るの怖いとか言いつつしっかりがっつり熟睡した自分は案外図太い。
ベッドから起きて寝る前に脱いだ服を着る。手ぐしで軽く髪をすいて身支度を整え、部屋を出ようとドアを開け……
「──っ!?」
扉からゼロ距離に侍女さんがいてビビった。悲鳴をあげなかった私を褒めてほしい。
そういえば、昨日寝る前に落ち着かなくて嫌だから室内に入らないでくれって言ったんだっけ。
それにしても扉前でずっと待機されてるとか怖いよ!
時間はもうすでに昼近いらしい。ずいぶんと寝坊してしまった。
食事は部屋と食堂、どちらでとるかと聞かれた。
……お腹は空いてる。正直今にもグーグーいいそうだ。
でも…ここで食事するのはなんかヤダ。
勇者とやらの役目をさせたがってるだろうし、さすがにいきなり毒殺はないだろうけど、いう事をきかせる為に何かしら一服盛るのはあるかもしれない。
ほら、判断を鈍らせる薬、とか。そういうやつ。
少し考えてから『食事は部屋で果物を自分で剥いて食べたいので、丸ごとの果物と果物ナイフを持ってきてほしい』と頼んだが、防犯の為にナイフは渡せないと断られてしまった。
防犯っていうか、きっと自害防止なんだろうけどね……
別にナイフ自体が目的な訳でもないので、手で剥ける果物をお願いしたら今度はOKがでた。
暫くしてから侍女さんが持ってきてくれたのは、サツマイモサイズのバナナっぽい果物。
バナナと同じように簡単に皮が剥けて、甘みは少ないけどバナナより水分があって瑞々しい。
果物と一緒に果実水みたいのも持ってきてくれてたけど、薬物疑うなら飲み物なんて絶対飲めないから、食事と水分補給が一気にできて助かった。
3つ程食べて腹ごしらえ完了!
さーて、いよいよ話し合いだ。
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