王国首都郊外の農場付近(農道3)

 初弾命中という僥倖ぎょうこうに、何よりアウィス自身がおどろいていた。


 しかし、いまのアウィスにはそんなことに思いをとどめていられるような余裕はなかった。


 だが、光学照準器スコープに狂いがなく、風の影響も少ないことがわかったので、後は〈狩人かりゅうど〉にとって比較的条件の良い狙撃となった。


 敵の後方に位置しているうえに、まだ、さほど暗くはなかったし、敵が発砲してくれている限り、視力の良い〈狩人かりゅうど〉にとって標的の発見も容易だった。


 最初の一人目は、思いのほかヴァルシュタット中佐の近くにいたが、初弾が命中という幸運にめぐまれた。


 二人目と三人目は、中佐に駆け寄ったしなやかな人影を狙って身を乗り出しため、標的が大きくなり確実な照準しょうじゅんができた。


「残りは?」


 アウィスは落ち着いていたが、味方の発砲を禁じた以上、自分がすべて仕留しとめるしかない。


 手袋グラブをはずした右手、その手の平の汗を尻のあたりで素早くぬぐいながら、またたきをめた両目をらした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る