2021年
8.集合“愚”となりつつある「小説家になろう」
久しぶりの更新となる「創作小噺」。
本来はもっと更新したいなぁと思ってはいるのですが、なかなかこう気負ってしまって更新が止まってしまうのが良くないですね。
今回の軸は「批評」と「小説家になろう」と「ムラ社会」です。まあ別にこのワードを全て使う訳ではないんですけど、このあたりのことについて書いていきたいなぁと。個別記事を作るほどの内容になるとは思えなかったので、ここでちらりと書いていきます。
で、早速本題。自分は割と「作品の批評」をしてきたという歴史があります。
これはもちろん、商業的な作品に関してもそうですし、アマチュアの作品を募ったりして感想と批評を書くという企画をやっていた時期もあります。
そこでは一応「辛口」を掲げてはいたんですけど、別に何も暴言を吐くわけではなく、「きちんと駄目なところをは駄目と言うよ」というイメージがこもっていたんですよね。
そんな批評なんですけど、先日「頼まなければ良かったといわれたことがある」という人がいました。
まあ、中には自分の作品を少しでも批判をされればキレる人間はいるものなので、「そういうこともあるかなあ」と思って、自分も読んでもらいました。
そして、感想を貰って分かりました。あ、これは批評者側の問題だ、と。
細かな内容は個人批判になるのであえて出しませんが、まあ無駄に分かりにくい。
「書いてて悦に浸ってんじゃないの?」ってくらい分かりにくい文章で人の文章を云々するんですよ。申し訳ないけど、その時点でまあ反応が悪くなるだろうなぁと感じました。
更にもう一つ事例を紹介しておくと、自分が感想を貰う時、どうも「小説家になろう」をプラットフォームとしている人のものは「お粗末」なものが多めなんですよね。
例えば自分の作品で言えば「何故“なろう系”は嫌われるのか?(以下「なろう系」」はバズった作品で、カクヨムユーザーにかなり読んでもらい、レスポンスも貰った作品です。
ただ、そのレスポンス──要はコメント──も、割と高頻度で「良いコメントだな」というものを貰うことが多かったんです。
言ってしまえば「炎上しやすい内容」であれだけのコメントを貰えたのは自分からすれば意外で、もっと「流行ってるもの僻んでるだけだろ」みたいな内容を欠片も読んでないだろうなって趣旨のものが混じってくると思ってたんです。
もちろん、そういった荒らしに近いことをしないようにみたいなガイドラインが(確か)あったとは思います。
ただ、この手のコメントをする人間ほどそういうものは読みません。
従って、カクヨムのユーザーはかなり「建設的なコメントを出来る人の集まり」だったといいう事になると思うんです。
これら2つの出来事を経て、自分が出した一つの結論があります。
それは「“小説家になろう”は集合“愚”になりつつある」ということです。
どういうことか。
ここでもう一つの事例を紹介しておきます。
先日ツイッターで「コメントでアドバイス貰ったんだけど、参考にしなきゃダメかな?(自分としてはあんまり参考にしたくないんだけど)」みたいなツイートが回ってきました。このツイートが存在していることが全ての答えなのかなと思います。
当たり前ですが、作家は読者の声を全て聞く必要はありません。それはプロもアマチュアも一緒です。
漫画「バクマン。」では主人公たちが読者からの感想に忠実に従った話を描いて、編集から駄目だしをされるという回がありましたが、今まさに「小説家になろう」にある空気感はその「感想に忠実に従った作品を書かねばならない」なんだと思います。
当然ですが、「小説家になろう」に「絶対コメントを参考にして作品を書いてください」という規定はないと思います(あったらすみません。でもあるとしたらクソサイトですよね)。
にも拘わらず「従わねばならない」という気持ちの人が出る。何故か。答えは一つで「読者の要求にこたえるのが良い作品」という空気感、自分が良く使う言葉で言えば「世間」がそこにはあるということになります。
もちろん、コメントでアドバイスを貰い。それによってあらたな発見があるのは前述のとおりです。
「なろう系」は本文だけでなく、是非コメントも読んで欲しいと言うのはそのあたりで、いわば良質なQ&Aがそこにはある。それを読むことは間違いなく、有意義なものです。
けれど、時に創作のアドバイスには良くないものもあります。
典型的なのは「自分の好み」と「構造的瑕疵」の差を理解できないというもの。
これが非常に厄介です。
作品は人によって好みがあります。極端な話、「このジャンルは自分読まないんだけど」というものも必ずあります。
そして、その逆に「え、むしろ俺はこのジャンルしか読まないんだけど」という人もいるのです。
もちろん、そこまで好みでなくとも質が高ければ読む、という場合もあります。
そのあたりの「作品を読むにあたる契機」というのは実に様々なので、一概に「これ」とは言えないものなのです。
なのに、批評家気取りで自分の好みでしかないものを「こうすべき」と押し付ける。断言します。そんなものに従っていたら創作なんてなりたちません。
ここで以前にも自分が取り上げた「ゾゾゾ」というチャンネルについて少し触れます。
この「ゾゾゾ」ですが、現在は登録者数も60万人を突破し、セカンドシーズン最終話が公開直前になってなお、サードシーズンの公開を望む声が後を絶たない人気チャンネルです(自分もサードシーズンを願っているファンの一人です)。
しかし、見返してみれば分かるのですが、なんとこのチャンネル。ファーストシーズンの途中にある「【総集編】番組を総ざらい!恐怖詰め合わせ!はじめてのゾゾゾ」ではなんとチャンネル登録者数150人を突破という信じがたい数字が出ているのです。
しかし、それ以前の動画を見ても、決して質が低いという訳ではなく、有名な心霊スポットに突撃した回も含まれており、正直「なんでそんなに伸びていなかったのかが不思議」なレベルなのです。
逆に言えばゾゾゾはずっと「良質なホラーエンターテイメントであり続けた」し、だからこそ今があると個人的には思っていて、このバランス感覚みたいなものは凄いと思っているのですが、それだって安易に「批評家きどり」の話ばかり聞いていたらどうなっていたかは分かりません。
以前からちょくちょく「小説家になろう」は凄いとか「良質な蟲毒」であるという類のツイートを見かけますが、言葉を選ばずに言わせてもらえば「クソくらえ」だと思ってます。
書き手が感想に従うかどうかを悩んでツイートするなんて土壌のどこが良質なのでしょうか。
また、以前に『ウェブ小説の衝撃─ネット発ヒットコンテンツのしくみ』を書いた飯田一史に関してかなり懐疑的にデータをもとに批判をする「なろう住民」がいました。
ですが、言わせてください。あの人はかなり「なろう文化」をフラットに、そして「擁護する目線で」見ています。自分からすれば「持ち上げすぎだろう」というくらいの美化具合。
その中に「なろう(及びネット媒体)はコメントなどのリアクションを貰えて、自己の研鑽にもってこい(超意訳)」という趣旨の内容があるのですが、これはあくまで前述した「なろう系」へのコメントのように建設的で、きちんとした理論になっている場合だと思うんです。
少なくとも批評家面して自分の趣味を押し付けるだけの人間が幅を利かせている場所で研鑽など出来るとは思えません。
恐らく「小説家になろう」や「流行りもの」は「異を唱えると面倒になるもの」という認識があるような気がします。
そして、その結果、大分伸長してしまったなというのが個人的な感想です。
もちろん、「小説家になろう」での流行り作品内で切磋琢磨するには良い空間かもしれません。
ですが、創作と言うのは、小説というのはそれだけではありえません。
多くの読者が心待ちにしていたはずのものが「趣味じゃないから」という理由で批判される土壌をほめたたえるだけで本当に良いのでしょうか。自分はそうは思いません。
最後に、多分この記事は反響が悪いと思います。「小説家になろう」や流行りものを叩くと、どこからともなく「数字信者」が出てきて攻撃を開始するからです。
ですが、聞かせてください。それ以外の声を。どうかお願いします。このままでは間違いなく「一部のタイプ以外の作品」が生えてこない土壌になってしまう。そんな気がするのです。
なんか創作論でやるべきだった内容になってしまった気がしますが。そっちでやるともっと面倒なことになりそうなので、ここで書きました。
最後になりますが、ここまで読んでいただきありがとうございました。多分、建設的なコメントをしてくれる人はここまで読んでるんだと思います。
それを証明させるためわざと何かワードを出すとか、そういう狡い真似はしませんのでご安心を。
それでは、何か思いついたらまた書きます。出来れば今度はもっと明るい話題が良いなぁ。何か「これどう思う?」みたいなのあったらこっそり教えてください。コメント出来る内容ならコメントします。後はまあ、進捗次第。
追記
ゾゾゾは個人的にもお勧めなので、お暇な時にでも是非どうぞ。私的オススメはサブチャンネル「ゾゾゾの裏面」の動画になりますが、「【閲覧注意】拾ったら死ぬ…心霊スポットに捨てられた噂の写真を追え!謎の一軒家を巡る恐怖の全記録」です。オカルトが好きかどうかに限らず。必見です。
【参考】
・ゾゾゾ(URL: https://www.youtube.com/channel/UCL4NX3B5v_gYc5XXWSTcpMA)
・「【総集編】番組を総ざらい!恐怖詰め合わせ!はじめてのゾゾゾ」(URL:https://www.youtube.com/watch?v=0kNJjpyU4yw&t=9s)
・「【閲覧注意】拾ったら死ぬ…心霊スポットに捨てられた噂の写真を追え!謎の一軒家を巡る恐怖の全記録」(URL:https://www.youtube.com/watch?v=tp-1FNoVioM)
・飯田一史『ウェブ小説の衝撃─ネット発ヒットコンテンツのしくみ』2016,筑摩書房
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