3.最初の出会いと開拓の重要性

 自分はラーメンが好きで、それこそ週に二、三回は食べに行くくらいなのだが、人という物は難しいもので、どうしても似たような店舗に行くことが多くなってしまう。


 流石に同じ店舗になんども通い詰めるのではなく、新しい店舗を開拓したいとは思っているし、努力もしているのだが、いかんせんその方向性は近しいものになる。


 つけ麺なら濃厚の魚介系。ラーメンなら家系か、二郎系。たまに外しても油そばを食べに行くくらいのもので、淡麗系の醤油ラーメンを食べに行くことは、自分一人ではほとんどない。



 そんな自分にとって最も「縁遠い」タイプの味がある。「辛さ」だ。


 自分は辛いのがそこまで得意ではない。嫌い、という程ではないのけれど、好きかと言われれば微妙な所だし、実際に汁なし担々麺の店で「辛い」以外の感想が出てこなくてエラい目にあったことがあるくらいだ。辛さが伴う台湾まぜそばの店も、選択肢から除外されることも多い。


 だからこそ、「広島つけ麺」というものの存在は知っていたけれど、ずっと選択肢に入れてこなかった。「辛さ」が得意ではないというのもあるが、自分の好きなタイプの味ではないと思って端から除外していたのだ。



 ところがある日、ラーメン屋をお勧めする記事に広島つけ麺の店である「らあめん広」が載っていた。


 基本的にネット上のグルメ記事は八割がた役に立たないし、なんなら裏で金銭のやり取りがある可能性すら視野に入れなければならないと思っているため、最初はあまり気にしていなかったが、少し検索をかけてみると、結構よさそうに見える。


 広島つけ麺ということで、当然のように辛さが伴う訳なのだが、どうやらそこまで強い殻さではなく、甘さもあるらしい。気になってブックマークしたうえで、近くに用事がある日に行ってみることにしたのだ。



 辛さを一番下の「普通」に設定して、大盛のチャーシューつけ麺を頼む。程なくして配膳されたそれは麺もつけ汁も冷たい冷製のつけ麺だ。チャーシューだけが暖かさを持っている。


 実食して思う。なるほど、辛美味いというのはこういうのをいうのか、と。確かに辛い。辛いのだが、甘さも相まって辛さ一色には染まり切らない。むしろ辛さがあることで甘さが、甘さがあることで辛さが引き立つちょうどいい塩梅だ。冷たいつけ汁もぴったりで、新鮮で美味しい一品だった。



 なんだか食レポみたいになってしまったが、この時改めて思ったのだ。ちょっとばかり自分の好みから飛び出すことも重要だと。冒頭でも書いたように、自分は最近食べるラーメンの傾向が固定されつつある。もちろん、好きな味を食べるのも悪くはない。同系統の味でも発見があることは少なくない。


 しかし、そのままでは上記のような発見はきっと無かったはずである。これはきっと色んなことに言えるはずだし、創作もまた、例外ではないはずである。同じようなものばかりに視線を向けていては見つけられない発見が、世の中にはきっと色々あるはずなのだ。



 ただ、一方で、「イマイチだな」と思うようなものを見続けると、期待しなくなるのもまた事実である。


 自分は広島つけ麺の一発目で良い店に当たった。しかし、これがもし、イマイチな店だったらどうだろうか。


 もっと広く言えば「イマイチなラーメン」ばっかり食べ続けていたらどうなっていただろうか。きっと自分はラーメン好きにはなっていなかったと思う。それくらい「良い物との出会い」は重要なのだ。


 そう考えると、今のアニメなり漫画なりはかなりマズいような気がしてならない。懐古でも何でもなく「これらを最初に見ていたとして、ここまで色んなものを見るようになっただろうか」と思うと、ちょっと怪しい所があると思う。「好み」や「売上」等の言葉で片づけるのは簡単だが、それだけでは論じる事の出来ない何かがあるような気がしてならない。



【参考資料】

・東京の「つけめん」絶対に外せないお店ベスト10選!(https://news.livedoor.com/article/detail/18675836/)

 →下記の店を含む十店舗が紹介されている。信頼出来るソースだと思われる。

・らあめん広(https://ramendb.supleks.jp/s/84721.html)

 →本文中に登場した広島つけ麺のお店。今年開拓した新店の中でTOP5に入ってくると思われる。

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