微グロ注意、お題「最高の目覚め」

サプライズフォーユー

「彼女が目を覚ましたらまずはなんて声をかけよう」


男が一人、部屋の中をぐるぐると歩き回っている。


部屋の中は薄暗く、裸電球だけが頼りない明かりを灯していた。


アゴに手を当て、男は満面の笑みでその時を待っている。


なぜなら彼は、この時を何年も何年も待ちわびていたからだ。



「準備の確認を怠らないようにしないとな」


男は一人呟き、頭の中で段取りを確認する。


「はさみと接着剤はどこだったかな……」


男は棚を開け、目当ての物を探す。


「あった、あった。……彼女はどんな顔をするだろうか」


男はその瞬間を想像し、また一人笑みを零した。



「あとはペンチ……」


男は再度棚を確認する。必要な物を台に乗せていく。


「一気に見せたら面白くないよね……」


配置を考え、綺麗に並べる。



「あ、プレゼントを出しておかないと」


そう言ってカバンの中から、青色の箱を取り出した。

光沢のある朱色のリボンが、上部で綺麗なちょうちょ結びになっている。


「きっと彼女、驚くぞぉ」


ふふふと笑い、箱を台に乗せた。箱の中からリンッと鈴の音がした。



「あ! 電気!」


男は思い出したかのように電源の位置を確認する。

何度か、つけたり消したりしながら頭の中でシュミレーションをした。


「これで……大丈夫、かな?」


男は再度アゴに手を当て、目線を宙に浮かべた。


――大丈夫。何度も何度も頭の中で練習してきたんだ。



「先にトイレに行っておこう。途中でしたくなったら大変だもんな」


誰に言うでもなく呟き、男がトイレに行こうと振り返った瞬間、男の身体が台に当たり、プレゼントの箱が転げ落ちた。

床に落ちた衝撃で、リボンがほどけて中身が飛び出る。



「……あぁ。やっちゃったよ」


男が頭に手をやる。箱の中に入っていた、――に。


「コイツぅ。死んでも暴れん坊なんだから」


男はニヤリと笑い、首だけになったネコを箱に戻す。


「キミは彼女へのサプライズなんだから。何だっけ? あぁ、チョロって名前か」


男はリボンを結びなおす。このプレゼントを見た瞬間の彼女の顔を想像するだけで、頭がおかしくなりそうなほど興奮した。


何せ彼女が一番可愛がっていた家族だ。どんな声を上げるだろうか。


男は、股間が熱くなるのを感じていた。


――抑えろ。あと少しだから。


男は振り返り、彼女の顔を見る。


未だに薬が効いているのか、イスの上ですーすーと寝息を立てている。



服装はピンクの薄手のパジャマ。その手足は金属製のかせでしっかりと押さえられていた。


――可愛いなぁ。


男は彼女に出会った頃を思い出していた。


あの頃、君はまだ制服の似合う年齢だった。

一目惚れだった。

君が欲しくて欲しくてたまらなかった。

でも、僕は我慢したよ。

しっかりと準備をした時間が、君への愛の証明だから。



男は再度彼女に目を向ける。


――まずは爪。


男は彼女の綺麗に手入れされた爪に目をやる。


――接着剤はどこに使おう。


男は彼女の全身を舐めるように見つめる。


――あぁ、早く。





君が目覚めた瞬間から、僕の最高の時間が始まるから。

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