かんないけんがくおわっちゃったぁ~。

 腕相撲を見届けたなら、今度は食堂へ。

 食堂には、調理係がいて、テーブルを拭いて回っている。

 調理場までは距離があるが、もう最終段階に近いか、音が活気づき。

 加えて、食器や、皿が重なり合う音も聞こえてきていた。

 「!もしかして、もうすぐ?」

 「……どうだろう。時間的にはまだ少し先かな。」

 アビーは、目を輝かせながら聞いてきた。

 だが、時間はまだ先だと思う。人影もなく。

 「そっか~~……。」

 結構な落胆をアビーは見せた。

 残念そうなアビーはそのままに、俺は来た道を進め、動力炉の場所へ。

 機関室付近ながら、蠢く音が響いているだけで、誰かの気配を感じやしない。

 「すっご~い。」

 シンは、言ってきた。

 その瞳は輝いていて。隣のエルザおばさんも、感心しながら見てはいる。

 「……でも、人いるのかな?」

 「聞いてみるか。」 

 人の気配がないこれに、シンが聞いてきた。

 いないならいないで済めばいいが、俺としても多少疑問を持つこともある。

 何せ、メンテナンスなどで往来することはあるだろうからね。

 人の気配がないからといって、誰もいないと決めつけるのもなんだ。

 俺は、試しに聞いてみることにする。

 「だ、そうだが。人はいる?あるいは、何か他に、別の機械がいたりとか。」  

 《検索中。結果、生命反応が少数ながら確認。また、別途スフィアの稼働も確認されることから、マキナも行動している様子。メンテナンス等で、行動をしているものと推測されます。》

 「だろうね。」

 盾が、スフィアから感じることを分析して、言うことには。

 誰かがいるとのことで。

 やっぱりなと思う。

 「へぇ。」

 盾の言ったことを耳にしたなら、シンは感心に溜息一つ漏らして。

 先に進めて、機関部の奥、動力部を目指したものの。

 だが、動力部自体への出入りはできないでいる。 

 重たい水密扉が阻んでいて。

 「……ありゃりゃ……。」

 困ったことになる。 

 先の道案内を辿っているものの、折角のこの場所は閉ざされたまま。

 ま、当たり前だろうけれども。

 ただ、全部案内できないのが、何だか悲しい。

 「……開けることはできないよね?」

 試しに聞いてみた。

 《可能です。レーザーを照射すれば。》 

 「うん!やめて。何だかいけない気がする!」

 答えを返してきたが、何とも物騒な方法である。

 どうやら、スフィアを介してレーザーを放つつもりで。

 それは、開くのではなく、完全な破壊である。

 当然俺は、聞かなかったことにして、却下する。

 仕方なく来た道戻り、上がっていけば。

 最初に来た時通された、暗がりで、やたら画面から音がする部屋の近くに来た。

 作戦中かは知らないが、通路に人気はほとんどない。 

 暗室らしき場所にはいるだろうが。

 面白いもの見たさで、覗き見るべきものでもあるまい。

 その代わりとして。

 ソードに案内されたが、結局見ずじまいだった部屋に向かおう。

 二重のスライドドアで仕切られている部屋で、まだその扉は開いていなく。

 ここから覗くことは叶わない。

 あんな勿体ぶられると、興味が湧いてしょうがない。 

 「ええと。中をサーチすることはできる?」

 《電磁波等を解析できるツールがあれば。ですが、スフィアだけでは限界があります。また、覗かれないよう、防護策が成されているようです。》

 「そっか。」

 で、何だかSFだかで見かける、何かの解析ツールのようなことができるか。

 試しに聞いてみたが、別途何か必要。

 おまけに、あの部屋には、それなりの防護策がされているらしく。

 完全閉鎖状態の今、覗き見ることはできないそうな。

 少しだけ期待したが、残念だと肩を落とした。

 「!」

 と、思ったら。

 急にその開かずの扉よろしく、分厚い扉がスライドして開いた。

 思わず、覗くが、そこから人影が一つ、進み出て。

 残念ながら、中身をよく見ることはできない。

 その人影は、ウィッチさんの。

 何だか、悲しそうな顔をしていて。

 その表情、例えば、何か失敗したような雰囲気。

 何があったか、分からないが。

 《?!ひぅっ?!》

 「!」 

 そんな彼女だが、浮遊するスフィアに気付き、小さく悲鳴を上げる。

 驚きに、目を丸くして。

 また、自分が、見られて恥ずかしい表情だったということもあって。

 顔が赤くなっていき。

 《ひにゃぁああああああああ!!!!》

 「やばっ!逃げろ!」

 恥ずかしさから、咆哮に近い叫びに変わり。

 俺が操作するスフィアに飛び掛かろうとしてきた。

 気付いた俺は、素早くスフィアを反転させ、その場から逃げ去る。

 流れる映像は、あまりにも速く、とても目で捉えられるものではなくなり。

 また俺は、素早く正確に戻すことを優先しているため、とても見る余裕はない。

 やがて部屋の前に来たなら、俺は扉を開き、スフィアを手に収めた。

 盾はそのタイミングで、投影をやめて。

 残念な形で終了になるが。

 あの騒ぎようだと、つい逃げ出したくもなる。

 残念だが、映画、航空母艦内を探検しよう、はここで終了だ。

 皆もそうだが、俺も俺で、項垂れてはスフィアをポケットにしまった。

 ……遠くでは、慌ただしい足音が一つあり。

 多分、謎のスフィアを追っているウィッチさんのかもしれない。

 申し訳なさが浮かび、後で、謝りに行こうか、そう考えてしまう。

 「?」

 しかしそれとは別の足音があり。それも、こちらに近付くもので。

 聞き覚えはない。レオおじさんとは違う。もっと、若々しい感じで。

 先ほど、俺が放ったスフィアを追ってきた、ウィッチとも違う。

 「うぃ、ざぁ、あ、どぉぉぉん!!」

 「!!!」

 挙句、ホップステップと、合わせた言葉呟くなら、誰であるか容易に想像できた。

 その足音の正体は、ソード。

 それも、俺を求めている。

 嫌な予感がしたなら、咄嗟に手を動かし、スフィアを、いやそれだけじゃない。

 先ほどまで投影をし続けた盾を呼び寄せ、構えた。

 盾は、装着されたなら、透明な板を展開し、かつ、光の膜を広げる。

 合わせて、スフィアたちも広がり、光の膜を広げる。

 やがて俺の部屋の扉がノックされるなら。

 「入るぞぉ!」

 「ど、どうぞ……。」

 求める声が一つあり。俺は頷いて招いた。

 扉は開け放たれるや、ソードは、思いっきり跳躍して、飛び掛かって来た。

 その表情は、アビーのように楽し気な表情で。

 「いやぁほおおおおおい!!!」

 歓声上げていた。

 その体勢は、押し倒して抱き着くようなものであり。

 そして想像されうることには。

 気持ちの悪いものであり、……あんまり言いたくない。

 だが、ソードのそれが叶うことはない。

 嫌な予感して広げた盾、フォトンシールドが、彼の体を阻み。

 空中に静止させることになる。 

 「?!むぎゅぎゅ?!」

 「……。」

 その際に、潰れたような、笑いそうになる表情を俺に見せてしまうがため。

 何だか吹き出しそうになり、思わず口を押えた。

 「さ、流石、ウィザード……。惚れるぜ……!」

 「……ええと。……ありがとう。」

 そんな潰れながらであっても、俺へ称賛を送り、右腕を動かしては。

 俺に親指を見せる、グーサインを送った。

 ……称賛を素直に俺は受け取る。

 受け取ったなら、もう飛びついてくるまいと、大人しく降ろす。

 「ぷはぁ!」

 表情を元に戻して、ソードは息継ぎをした。

 座り、きちんと姿勢を正すなら、俺をちゃんと見据える。

 「いやぁ!すまねぇ!ついやっちまった!」

 「……いや。気にしていないよ。うん。」

 開口初めに言うのは、まず謝罪のようで。

 照れ隠しに笑いながら、頭を掻いていて。俺は、気にはしていないと言う。 

 「……っと。ウィザードに用事があるんだ!いきなりですまねぇ!」

 「またまた。まあ、いいよ。で?何か用?」

 そうしたなら、もう本題に入るようで。

 おどけたような感じで、本題に入っていく。

 ソードらしいことから、気にしないでおくとして。

 その本題はいかなるものか耳を立てると。

 「いやさ、ほら、さっきの。」

 「!ああ、あそこの……。」

 抽象的にだが、ソードは言うことは、さっきのということ。

 俺は、それだけでピンとくる。

 あの、ソードと別れる前に、立ち寄った、最後の場所。

 さっきまた、スフィアを使って見に行っても、開かずの間だったが。

 ウィッチさんが出てきて、何だか気まずくなって引き返す、その寸前の場所。

 「そうそう!もしよかったらさ。この後一緒に行かねぇか?ああ!外野が何人も来てもいいぜ!」

 「!」

 俺がピンと来たといった感じに、ソードもそうだと言う。当たりのようで。

 さらに付け加えることには、今から少しの時間だけ、行こうという誘い。

 かつ周りの皆も誘っての。

 「……俺は、いいと思う。折角の誘いだし。……皆は?」

 その誘いに、俺は拒否はしない。

 「あたしも行くっ!」 

 まず名乗りを上げたのは、アビー。いつもの笑顔いっぱいで、手を上げて。

 「私は残っておくわ。だって、レオおじさまを一人ぼっちにするのも可哀想でしょ?」

 「そうか……。」

 マフィンが続くものの、まずは拒否のよう。

 確かに、この周りの全員がいなくなったら。

 帰って来たレオおじさんが一人になって、可哀そうだ。

 「いんや、マフィン。バカ旦那のことはあたしに任せときな。あんたは、大和ちゃんや、アビーちゃんと行っといで!心配、ありがとうな。」

 「!」 

 フォローはエルザおばさんがする。

 マフィンが言ったことに感謝をして。

 だがレオおじさんのことは、自分に任せてくれと、胸を叩き、笑みを浮かべる。

 マフィンは見て、小さく溜息をつく。 

 「分かりましたわ。エルザおばさまが仰るなら。では、変更して、私もいきます。エルザおばさま、よろしくお願いしますね。」

 ついた上で、マフィンは意見を変え、ついて行くことにする。

 そのため、レオおじさんのことを、よろしくとマフィンは丁寧に頭を下げた。

 「いいっていいって!いっつも世話になってんだ!それに、旦那の世話も、あたしの勤めよ!なはははは!」

 遠慮はしなくていいと。

 頭を下げられたエルザおばさんは、笑い飛ばして、背中を押してくれた。

 残るは、シン。

 俺は、シンを見ると。

 「!」

 どこか、戸惑いを見せている。俺と視線が合って、ピンと背筋を張った。 

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