たのしそうなおさそい!

 「シンちゃんも行っておいで!なぁに、若い子には旅をさせよって!」

 そんなシンの様子見て、エルザおばさんはまた、背中を押してやる。

 「!……分かった!僕も行く!」

 押されてシンは、頷いた。

 俺に頷いたなら、エルザおばさんにも向き直り、頭を下げる。

 「エルザおばさん!ありがとう!」 

 お礼も付け加えて。

 エルザおばさんは、目にして、慈しむ笑みを湛えてきた。

 「いい子ね~!」

 言っては、シンの頭を撫で回す。

 「お~い!決まったら行くぞぉ~!」

 ソードは、そのやり取りはさておいて、急かすように言ってくる。

 移動を促してもいて。

 「!ほら。行っておいで。パイロットのお兄ちゃんが待っているよ!」

 「!はい!」 

 ソードに急かされ、エルザおばさんはシンを促して。

 流石に、親子の様なやり取りも、こう急かされると中断せざるを得ない。

 またまた頭下げたシンは、俺やアビー、マフィンと合流し。

 ソードに手招きされるまま、一緒に行動する。

 そうして、また例の不思議な部屋の前まで来たが。 

 「!……。」

 その近くにて、ウィッチさんがあちこち見渡しているのを目にして。

 申し訳なさそうに思える。

 多分それは、さっき俺が放ったスフィアのせいで。

 まだ探し回っていたのか……。けれど、何も言えない。

 「!おう!ウィッチ!どったの?」

 「!!ひぅ?!」 

 代わりに、見掛けたソードが声を掛けて。

 掛けられてウィッチさんは、悲鳴を伴い、体を跳ねさせた。

 振り返り、怯えた表情を見せる。

 「?おいおい!取って食うわけじゃねぇぞ?それとも、ガントに注意されたりして、怯えてんの?気にすんなって!ああは言っているけど、ほんとは誰一人見捨てたりしない、カッコイイ男なんだぜ?」

 その怯えようから、ガントさんに怯えていると思ったか、言ってくる。

 言ってきては、安心させるようににやりと笑ってみせた。

 ……会話の内容を聞くに、何かと言われ、そう、着艦の際。

 撃墜しろだの言われているけれども、信頼していると感じられた。

 聞いていたウィッチさんは、顔をフルフル横に振って、違うと訴えている。

 「ありゃ?違った?うげぇ……。折角思っていないようなこと、言ってあげたのに~~……。がっかり。」

 「……。」

 違うと分かったら、いいこと言ったのにと一転、残念がるソード。

 俺はどうとも言えないが、先のことは心にもないことだったのか?

 いや、多分らしくないことを口にしたことなのだろう。

 俺はそう思うことにする。  

 「ええと。あぅぅ~……。さっきね、私の泣き顔、見られたの!それも、誰かのスフィアに……。うぅ……。」

 「はぁ?泣き顔見られた?おめぇいっつも泣いてんじゃん。俺たちゃ見飽きてるし。それに、スフィアだけで、〝見る〟なんて芸当、誰ができるんだよ!疑い過ぎ、疑い過ぎ!」

 「うぅぅ……。」

 その理由を口にするが、聞いていたソードは、呆れかえる。

 いつも泣き顔見せているのだから、今更恥ずかしがることなんてない。

 第一、誰がそんな、スフィアで〝見る〟なんて芸当、できるのだ、と付け加え。

 疑い過ぎだとも、言っている。 

 「……。」 

 聞いていて、だが、それは俺だ、とはこの場合言えない。

 気まずくて、何も言えない。

 「どーせ。暇した誰かが、スフィア使って遊んでいたんだろ?ほら、整備の奴とか、俺がブイブイ戦闘機を言わせて帰らないと、仕事ないんだし!気にし過ぎなんだよ!いざ戦闘になったら、俺たちが出張りゃ、済む話なんだし、な!」

 ソードが考えることには。

 暇を持て余した人が、スフィアを使ったということであり。

 やっぱり気にし過ぎと、注意した。

 「……。」 

 なお、俺にとっては図星。

 その言葉が嫌に突き刺さり、余計に気まずくなってしまった。

 「……ソードさんがそう言うなら……。分かりました。私、時間まで部屋に戻ります。……後で、また。それと、皆様も……。失礼いたします。」

 当のウィッチさんは、ソードの考えに観念してか、気にすることを諦めて、姿勢整えて、部屋に戻ることにした。

 その際、俺たちにも向いて、頭を下げて、その場を立ち去っていく。

 「んじゃな~。後で夕食でな~!」

 去り行く背中に、ソードはそう声を掛け、手を振って見送った。

 「さて……。」

 その姿が見えなくなったなら、くるりとこちらに向き直る。

 「長い時間待たせたが、いよいよだ。この中を案内するぜ!」

 「!」

 いよいよと、ソードは言ってきた。

 言われて、楽しみについ心が躍る。特に、アビーに至っては、目を輝かせて。

 ただし、マフィンは。

 「……予め聞いておくけど、入って大丈夫なの?重要機密の区画だったら、それこそ問題よ?」

 問題を見付けて、不安そうに聞いてくる。

 「!そうだな~。別に特に問題じゃないぜ、見て、操作するだけなら。だが、中身を記録したり、詳しく覗くことはできないけどね。」

 マフィンの疑問への回答に、ソードは言ってくることには。

 触るだけなら問題ないもののようだ。

 「……まあ、関係者のあなたが言うのなら……。」

 マフィンは、ソードが言うならと、引き下がった。

 その後に、何やら言う人はいなくて、ならばとソードは、例の扉の先を案内する。

 俺たちが近付いても、何ともなかった扉だが。

 ソードが近付くと、認識し、重たそうな音を立て、体を動かした。

 「!」

 中に踏み入ると、途端に明かりがつく。

 ライトの明かりに、思わず目を瞑るものの、すぐ慣れて、開いた。

 「?」

 眼前に広がるのは、何だか、そう、単純に言って、カプセルの様で。

 身長の高い大人が立ったまま入れるほどの物が、いくつか並ぶ場所のようで。

 また、扉の真っ直ぐ先には、巨大なモニターが壁にあり。

 なお、何も映像として出されてはいない。

 「ここは……?」

 俺は、多分皆も思っていることだが、代表して聞く。

 「シミュレーションルームさ。特に、俺たち戦闘機乗りにとっての!」 

 ソードは、こちらに振り返るなら、自慢げに胸を張り、答えを言ってきた。 

 「……?」

 と、言われたものの、ぱっとイメージできないでいて、首を傾げる。

 「……あちゃ~……。」 

 そのために、ソードは困った顔をして、どうしようかと頭を掻く。

 「ええと、イメージしやすいように。つまり、ゲームだよゲーム!」

 「!」

 分かりやすい言葉をソードは選択して言うことには。

 つまりゲームをする、ということで。

 耳にして俺は、やっとピンと来たような気がした。

 「!!ゲーム?遊び?」

 最も反応が強かったのはアビーで。

 最初は俺のように分からないといった表情だったが。

 聞いて理解しただけじゃなく、より目を輝かせて。

 「?!あ、ああ。そうだ。んで、この装置は、そのためのもんさ。」

 そんなアビーの変貌に、ソードはたじろぐものの。

 ちゃんと説明をして、ポンポンと装置を柔らかく叩いた。

 さらに、どこか触ると、その装置は大きく口を開くように、一部分が開いた。

 「!」

 その様子に、つい息を呑む。 

 また、その開いたカプセルの中身が露になるなら、何なのかと首を傾げて。

 「?」

 よく見ると、何となく思うことには、コックピットのような気がして。

 そう、以前俺が乗り込んだことがある、マキナのコックピットのような。

 「……コックピット?」

 俺は、呟いた。

 「!おうさ!そうとも!」

 俺が呟いたなら、ソードは正解だと言ってきた。

 コックピットだと確定した所で。

 「……単なるコックピットじゃねぇ。こいつで、戦闘機をな、あー、架空の空間で飛ばせるって代物よ!」

 ソードが追加で言ってくることには。

 先ほど述べた、シミュレーターの意味をここで知らせてきた。

 ソードの言う、架空の空間、つまりはゲーム。

 「……ほうほう。」

 俺は、頷いて理解する。

 「誘ったのは、これを見せて、……遊ぶため?」

 次には、俺たちを誘ったのは、この機械で遊ぶためなのかと問い。

 「おうさ!」

 その通りだとソードは頷いては。

 「晩飯前の、ちょっとした運動みたいなもんよ!一人でもいいが、この際、何人かで遊んだほうが、楽しいだろ?な?」

 続けてきて、同意を求めてきた。 

 「……。」

 言われて俺は、どうだろかと考えて。

 「楽しそ~!!」

 ……その思考も、アビーが目を輝かせて言うことに掻き消されてしまう。

 もうすっかりその気である。

 まあ、折角の誘いを無碍にするのもなんだ、俺も俺で同意する。

 「……それで、どうやって動かせばいいの?」

 「!」

 アビーもそうだが、珍しく側のマフィンも言ってきた。

 ちょっと驚いてしまうものの。

 どうやらマフィンも、俺と同じように、誘いを無碍にはしないというつもり。

 操作方法を、ソードに聞く。  

 「!そりゃ簡単よ。」

 耳にしたソードは、意気揚々とマフィンの質問に答えて。

 「そのカプセルにある座席に座って、シートベルト付けて、左右のパネルやらスティック、それとスロットルに触ればいいぜ?」

 簡単だが、マフィンに説明をした。

 マフィンは言われるがまま、俺やアビー、シンよりも先に、カプセルに搭乗する。

 シートベルトを締めたなら。

 「こ、こうかしら?」

 マフィンは言って、ぎこちない様子を見せながら。

 座席側の、レバーや、棒状の物にそれぞれ手を付けた。

 「うん!そうそう!それでいいよ。基本的な姿勢は、それでいい!それじゃ、閉めるよ!」

 「え?!ちょ……?!」

 ぎこちなさながら聞くものの、ソードはそれでいいと言い。

 言ったすぐに、カプセルを閉じる。

 マフィンは、いきなりなことに、目を丸くしたが。

 閉じていくカプセルに、声ごと姿を消してしまう。

 「?」

 マフィンが中に入ったが、ここからじゃ、中の様子は見えない。

 どうなったのだろうかと、気になって首を傾げる。

 「大丈夫だって。閉じ込められて、二度と出られなくなるわけじゃない。ほらあそこ見て!」

 「!」

 気になってしょうがないならと、ソードが気付いて言って。

 今度は別方向を指さして。

 指先を目で追うと。

 先ほどは何も映っていなかったモニターに、映像が映っていた。

 マフィンの中の様子が映し出されて、どこか不安そう。

 《ちょ、ちょっと……っ!ど、どうなったの?!ま、前が急に明るくなって、何か映し出されて……っ!》

 その通りで、不安伴いながらマフィンは言ってきた。

 「戦闘機のコックピット内だよ。簡単さ簡単。ちょ~っと発進や発艦は、手間取るかもしれないけどね、でも、空を飛んだら、気持ちいいぜ!」

 不安を抱くマフィンに、ソードはモニターに向かい。

 不安を和らげるように、声を掛けた。

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