やることないけどなにかやろう!

 「そのとーり!!行こっ!」

 「……。」

 「……アビー……。」

 釘を刺したが、間に合わない。思った通り、アビーは行くつもりで。

 アビーらしく、背伸びして、先頭を行く。

 俺とマフィン、同時に呆れ果ててしまった。

 とはいっても、このまま見逃すわけにはいかないと。

 二人してアビーを制止しようと動く。

 「待って……。あ……。」

 「待ちなさい……。あぁ……。」

 ……それよりも先に、アビーは進んでしまい、もう扉のすぐ前に行く。

 間に合わなかったと、二人肩を落とす。

 「?あれ?」

 「?」

 が、扉は開かない。

 開けようにも、取ってはあるものの、アビーが手を掛けてもびくともしない。

 また、エラー音も立てていることから。

 何らかの理由で開かないようにできているようだ。

 この扉に設置されたセキュリティに感謝しよう。

 その類で、どうやら、許可なく入室することはできないみたい。

 「え~。何で~?」

 アビーは不思議そうにする。

 マフィンは安堵したと同時に、呆れもして。

 「そりゃ、部外者が安易に入れないようにしているのでしょうね。ええとね、アビー、一応言っておくけど、私たちの村じゃないのだから、あんまり勝手なことしないようにね。」

 「うぅ~。分かったぁ~。」

 「それに、入りたいなら、ソードさんが戻ってきてからでも、遅くないわ。」 

 「はぁい。」

 そこから、アビーに軽く説教。

 アビーは、残念そうに項垂れながらも、聞いていた。

 生返事一つしたなら、ここにいても仕方ないと、部屋に戻る。

 迷路のようだと思った艦内も。

 幸いソードの案内のおかげで、ある程度把握できるようになって。

 懸念していたが、迷わず戻れた。

 それぞれ別れて、部屋に戻った。

 「お!どうだった?」

 「!」

 帰ってきたら、レオおじさんから第一声。興味津々に聞いてきた。 

 「……う~ん。珍しそうな物はあったけど、楽しそうではないかな……。そも軍艦だし……。」

 返答としては、それで。

 見て回ったが、最後ソードが気になることを言ったもの以外は、特に珍しいことはない。

 軍艦のため、楽しめる設備があるわけでもないし。

 「だろうな~……。豪華客船ならまだしも、こういう船だし。あと、シンの話なら、客船で向かおうもんなら、即撃沈だろうし。仕方ないか。」

 俺が見回った、船への回答にレオおじさんがコメントしてくる。

 想像通りで、実際、兵器としての実用性を考慮したものだから。

 あんまり、中の人の、特に娯楽は二の次三の次だ。 

 数少ない楽しみとは、艦内の食堂で。

 船員の士気に関わると、非常に美味らしい。

 「……でも、料理は美味しいらしいって。」

 「お!それは楽しみ。シンも起きたら、連れて行くか。」

 数少ない楽しみである料理について、俺が言うと。

 レオおじさんは目を輝かせてきた。

 ついでに、側で寝ているシンについても。

 レオおじさんの言葉に気付き、注目すれば。

 静かに寝息を立てているシンの姿が目に付いた。 

 疲れたか、それとも、早起きのためにか。

 俺やアビー、マフィンが案内されている中でも、眠っていたらしい。

 「!」

 シンを見つめていたら、レオおじさんに肩を叩かれる。

 振り返り、見ると。 

 「んじゃ、俺も見学してくるかねぇ。ああ、迷ったなら近くの奴に聞くことにするよ。」

 レオおじさんも、退屈しのぎをしたいらしい。言ってきた。

 俺は、静かに頷く。

 「それと、シンの側に、いてやってくれるか?」

 頼み事付け加えて。

 「うん。やっておくよ。レオおじさんも、気晴らしに行ってきて。」

 俺は、また頷き、承諾する。 

 こちらも、気晴らしになるならと、言葉を添えて。

 レオおじさんは、そんな俺を見て、頼もしさ感じ、そっと笑みを浮かべては。

 扉を開け、外へ出て行った。

 見学しに行ったレオおじさんを見送って、扉が閉まるなら、また静寂だ。

 「……。」

 シンも起きていない。俺も俺で、やることなく、ベッドに入り込むなら。

 狭い天井を見上げるだけになる。

 ……何の面白味もない、天井を見ても、気晴らしにはならない。

 こんな沈黙の中、つい思うことは、透視能力とか、ないかなという妄想で。

 「!」

 透視能力という単語思ったなら、閃いてしまう。

 自分の能力でそれは無理だったなら。

 スフィアを使ったなら、できるんじゃないかというもの。

 この艦に乗る前、サカマタさんたちを〝釣った〟あの方法。

 応用すれば、外の情報も分かるんじゃないかと。

 現状、俺が使ったことのあるそれは、〝感じる〟だけであり。

 映像を投影するような芸当はできない。 

 できたなら、何だか退屈しのぎができそうだと思い立った。

 ああ、これができるなら。

 シンのお守りをしながら、その様子を観察することができ。

 かつ、シンにも映像を見せることができるかもしれない。

 眠っているシンを起こさないように、扉を開け、隣の部屋に向かう。

 ノックをすると。

 「何々?大和ちゃん。」 

 「……。」

 扉が勢いよく開き、真っ先にアビーが顔を出した。

 勢いよく開いたため、俺は当たるんじゃないかと不安になる。 

 さっと避けたからよかったものの。

 それと、実はアビーじゃなくて、マフィンに用があって。

 そのため、少し残念にも思う。 

 「?あれ?どしたの?」

 「ん?いや、何でもない。マフィンに用があって。」

 「マフィンちゃんに?うん!いいよ!」

 俺が、暗い顔を一瞬でも見せたからか、アビーは不安に聞くものの。

 要件を耳にしたら、翻って、嫌な顔一つ見せず、マフィンを呼んだ。 

 呼ばれてマフィンが顔を出すと、こちらもどこか暇そうだ。

 「なぁに?」

 マフィンは、俺に聞く。 

 「忙しかったらごめんよ。その、よかったらだけど……。」

 俺は、まず前置きとして、忙しかったら、悪いなと言って。

 前置きを聞いて、マフィンは何か言いたげに、眉をピクリと跳ねさせた。

 「……大和、あなたね。ここで私たちができることがあると思って?」

 「……ないよね。ごめんよ。そこは聞き流して。」

 「……分かったわ。」 

 案の定、言ってきた。

 忙しそうに見える、と。なら、聞き流しておいて。俺は頼む。 

 続きを俺は言う。

 「その。よかったらだけど……。教えて欲しいことがあるんだ。」

 「?なぁに?」 

 「スフィアを操作して、映像を、ほら、映画館やテレビみたいに投影する、なんてことできるかな?」

 「えっ?!」

 目的を告げると、驚かれた。

 「えぇ!すっごーい!!そんなことできるんだー!!」

 反対に聞いていたアビーは、早とちりに言ってきた。

 マフィンはその言葉を聞いて、気まずさも見せる。

 「早とちりしない!それと大和。……私、あなたが何を言っているかよく分からないのよね。どういうこと?」

 「?」

 マフィンは、最初アビーを宥めて、次にはよく理解できなかったと。

 繰り返し聞いてくる。

 「いやさ。テレビとか、映像とか、映画とか……。もしかして、知らない?」

 俺は、もしかしたら文明の利器を知らなんじゃなかろうか、不安を覚えて。

 逆に質問した。

 「それは知っているわ。」

 「良かった。」 

 そうではないらしい。マフィンは知っていると答えてくれた。

 「ええとね。空中を移動して、カメラみたいに映像を撮って、例えば、どうにかして壁とかに映せないかなって。」

 「……。」 

 とりあえず、分かりやすいように説明する。

 マフィンは、静かに聞いていて。目を瞑っては、言葉を反芻しているみたい。

 「……言いたいことは分かったわ。」

 「!そうか。ありがとう。」

 目を開いたなら、分かったと言ってきた。よかったと俺はお礼を告げる。 

 しかし、分かったと言ってはいたが、俺に対して申し訳なさそうではある。 

 「?」

 何でだろうかと、首を傾げる。

 「悪いけど大和。あなたの期待に応えられないわ。」

 「え?」

 マフィンが答えることには、やはり悪そうで。

 「気配をスフィアを通して感じることはできるの。けど、映像化までして、どうのは、スフィア単独では流石に無理だわ。そうね。カメラとかがあるなら、別だけど。今、持っていないでしょ?」

 「……そっか。」

 その通りで、スフィアだけでは無理とのこと。

 スフィアでできるのは、スフィアを通して感じることまで。

 映像化には、別途機具がいるようだ。

 生憎、カメラの類は、手持ちではない。

 レオおじさんならもしかしたら思うものの、不明。

 いい暇潰しと思ったものの、残念だと俺は肩を落とした。

 「……何だか、ごめんなさい。力になれなかったわ。」

 俺がそんな様子見せるものだから、マフィンはより申し訳なさそうになり。

 謝罪してきた。

 「そっか~……。」  

 俺もそうだが、それ以上にアビーもまた、肩を落とす。

 こちらも、楽しみにしていた様子だ。

 「いや、いいよ。ちょっとした時間潰しになるかなって、思っただけ。何だか使えたら、すごいかなって。」

 俺は、マフィンの謝罪はいらないと言い。

 そも、これは聞いた俺が悪いのだから。

 マフィンがして、気を落とすことはない。

 「そう……。」

 俺の気持ちを汲み取ってくれたマフィンは、顔を上げて、いつも通りに言う。

 「……ま。仕方ないや。それじゃ、部屋に戻るよ。」 

 「分かったわ。それじゃまた、後で。」  

 「じゃあね!」 

 なら仕方ないと、俺は部屋に戻ることにする。

 挨拶に手を上げて、俺は部屋に足を進めた。

 マフィンやアビーも、俺の姿を見送って、部屋に戻っていった。

 さて、また、……暇になってしまう。

 どうしようもないやと、適当にスフィアを弄ることにする。

 いや、そうする他何もない。 

 後は、妄想か。

 誰か、ゲーム機とか持っていないかな、って思ってしまう。

 借りて、何か暇潰しに……。ああ、そう言えば。 

 この世界にゲーム機とか、あるのかな?疑問に思ってしまう。

 スフィアを弄る内に、ふと、バックパック内の盾に気が行ってしまった。

 《おはようございます。現在時刻午後4時を回りました。現在位置、計測中、計測中。……大変申し訳ございません。GPSを探知できませんでした。》

 「……。」

 レオおじさんもいない、シンも寝ているこんな空間で。

 無機質ながら響く、盾の声だが、多少の退屈しのぎにはなりそうで。

 「なあ、テレビ点けて。」

 何か、適当なコマンドを言ってみる。

 よく考えてみれば、俺はこの盾の機能を十分に知らない。

 この際、色々と弄るのも悪くないかもと、思い立って。

 《かしこまりました。ですが、映像の投影ができません。私をここから出してください。》

 「……できるんだ。」

 盾は、俺の勝手な思い付きにも応じてくれる。

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