とっておきのばしょ!

 「!あ~……。武装ねぇ……。」

 質問を耳にして、ソードは一転、何だか困った様子に。

 「!」

 もしかしたら、機密情報なんかに抵触するとかあるのかも。

 俺は気付いて、今のはなかったことにしようとする。

 「いやぁ~……わりぃ。俺、あんまり武装のこと知らないんだ。いつも、感覚で操縦しているから……。にひひひ……。」

 「……。」

 事情があるようだが、機密ということではなく、どうも自分の不勉強のよう。

 そのため、言えないことに苦笑を返した。

 思うことは、戦闘機を感覚だけで飛ばしているとするなら。

 相当なセンスだと思えてならない。

 「あ?!そぉぉぉぉどぉぉぉぉ!!!さっきから聞いていたら、貴様ぁ!そうやって、無茶させてんだろうがぁああ!!」

 「?!」

 「?!うげげげ!!!整備の……。」

 そのことについて、一言申される。

 格納庫内のどこかで作業していた人が、駆け寄って姿を現わしては。

 文句を述べて。

 俺は、突然な登場に驚き、ソードは、ばつが悪そうな顔になって。

 「逃げろっ!!捕まったら、説教されちまう!!もう説教は、ガントでこりごりなんだよぉ!」

 嫌な予感あって、ソードは逃げるコマンドを採った。

 急いで来た道を戻るように駆け出した。

 もちろん、こちらも見逃す前に同じく駆け出す。

 「あ!!!!くそっ!!本当に、運動神経だけはいい奴!!ガントの言う通りあいつだけロックオンするように、対空砲の火器管制システム改造してやろうかねぇ……。ぐぬぬぬ……。」 

 駆け出した後ろから、整備員の恨み節が聞こえるものの。

 持ち場があるからか追い駆けてくることはない。

 来た道を戻ったが、追い駆けられまいと、今度は、より下の方に向かう。

 「?」

 艦の下の方に来て、蠢くような音が大きく聞こえる。

 音の正体が気になり、俺は首を傾げてしまう。

 まあ、音自体は艦内全域から聞こえている気もするが。

 「お!気になった?皆。」

 「!うん。」

 ソードが聞いてきた。

 俺はそうだと頷いて。

 「にひひひ。それじゃ、答えでも見に行きますか。」

 「!」

 その答えは、お楽しみと。

 含みある言い方をしては、ソードは案内を進めて。

 少し進んだ先、重苦しい水密扉が見えると。

 力を入れて、水密扉のハンドルを回していく。

 開いた先は暗く良く見えないものの、より強く、何か蠢く物音が響き渡った。

 「!」

 進んだ先にて、ソードが明かりを点けると、小さいながらも、やや空洞。

 そう半球面を思わせる空間で。

 その中央には、微かに鼓動するように動く物がある。

 「……。」

 見覚えのあるものだなと、内心思う。

 思い出すことには。

 そう、帝国の長城地下、巨大なフォトンシールドを発生させる源であった、空間。

 「!大和ちゃん、ねぇねぇ!!」

 「!」 

 「ここ!あそこに似ているね!ほら、帝国の……。」

 「!アビーも思ったんだ。」

 俺が思い出していたなら、側のアビーも言ってきて。

 俺と同じようで、あの空間を思い出しているみたいだ。

 「?あ、あ~。二人とも。」 

 「!」

 俺とアビーの様子見ていたソードが、軽く咳払いして。

 俺は悪いと思い、向き直る。

 「ええと、ごめん。」

 ソードに謝罪を言った。

 「……いや。気にしていないよ。それよりもこの場所、何だと思う?」

 「……?」

 気にしてはいない。代わりに、ソードはクイズを出してきた。

 俺は、何だかよく分からず、首を傾げるだけで。

 俺のそんな姿を見て、何だかにんまりとソードは笑う。

 いわゆる、教えたがりのやつか。

 「ここはね~。」

 説明しだす。やっぱり。

 「動力炉だぜ。こっから、艦内全域に、エネルギーが行き渡っているのさ。あ中身はスフィアな。」

 「……ほぅ。」

 ソードは、簡潔ながら、説明をした。

 俺は、感心して聞く。どうやら、動力炉らしく。中身はスフィアのよう。

 その通りに、スフィアの気配を大きく感じた。

 この世界の技術を詳しく知らないが。

 以前見た巨大なマキナだけなく、このような艦船さえ動かせるらしい。

 「……ということは、応用するとバリアみたいなもの張れたりとかできたりするの?見た感じ、それなりの大きさみたいだから。」

 なら、応用すると、フォトンシールドを大きく張れたりするのか。

 俺は聞いてみた。 

 「できるんじゃない?けど、俺は見たことないな。だって、基本的に俺ら、母艦から遠くの方まで行っちゃうし。」

 答えとしては、ソードの方は詳しく知らないらしく。

 戦闘機乗り故か。

 発艦すると、基本的に母艦よりも遠くに行っていることもあり。

 そういう様子を見てはいないらしい。

 「ま、ここは見るものはこれくらいかな。」 

 「そうか……。」

 話は切り上げて、ソードは次のセクションへ向かおうとする。

 その言葉通り、動力炉以外には、よく分からない機械しかなく。

 多分、この様子だと、ソードも知らなさそうだ。

 話を切り上げて、進む先は、どうやら階層が上の方になり。

 「!」 

 途中から、美味しそうな匂いがしてきた。 

 「!おいしそ~!!」

 アビーが言ってくる。

 「!お、そうか。」

 ソードもまた、嗅いでくる。 

 「近くが食堂になっているんだ。今はまだ、夕食の時間じゃないけどね。調理の奴らは、もう動いてんのさ。……行ってみる?」

 嗅いだうえで、説明を。

 匂いが示す通り、近くに食堂があるみたいで。ソードは言って、案内する。

 いつもの狭苦しい通路をくぐった先。

 広く、かつ、机が整然と並べられた場所に出た。

 こういう、軍艦の中では広いと思える空間と、それら特徴から。

 食堂であるのは確かにと思った。

 部屋の奥は、キッチンのようで、静かながらも、慌ただしい。

 食材を刻む音や、忙しく動く調理器具の音が聞こえて。

 ソードの言う通り、準備をしているようだ。

 人がいないのは、まだそういう時間じゃないから。

 「おいしそ~!!!!食べたい食べたい!」

 傍ら、アビーは食べたそうだ。はしゃぎ、年甲斐もなく跳ねる。

 「待ちなさいな。まだ時間じゃないでしょ。……ところで、軍艦の食事は美味しいのかしら?」

 アビーのそんな様子を宥めながら。

 マフィンはマフィンで疑問に思ったことを口にした。

 俺も、聞いてみたいとマフィンに追従する。

 「お~!そりゃぁ美味いさ!うちの調理の連中、皆腕利きばかりだとよ。軍をやめても仕事あるかもしんないね~。……あとさ……。」

 「?」

 料理の腕はよく、美味のようだ。ソードはだが、途中言葉区切り。

 その先に何かあるのか、気になってしまう。 

 「……言葉にあんじゃん?腹が減ってはなんとやら。喰うなら、美味いもん、とかさ。でないとよ、皆士気がガタ落ちよ……。そしたら、戦争にならんぜ?」

 続くことは、もっともらしいことを言ってきて。

 脳裏には、そんなまずい食事風景を想像していて。

 苦虫を潰したような顔になる。

 「それに。数少ない楽しみなんだよ。美味い食事を採るのも。」

 締め括りには、数少ない楽しみであっても、とても大切なもののように。

 笑みを浮かべては。

 「なるほど。」 

 俺は、納得を示す。

 狭い軍艦生活での、数少ない楽しみ、なのかと言葉を反芻して。

 「さぁてと。ここはどうせ、後で来るし。まだ時間があるからさ、他にも案内するぜ!」

 「!」

 ここでの説明はこれぐらいにと、ソードは言うと、次の場所へと移動する。

 ならばと、俺も追従して。

 「……ほら!アビー。行くわよ。」

 「え~……。う~……。待てないよぉ~……。」

 「……。」

 後ろからだが、アビーとマフィンがやり取りをしている。

 振り返れば、涎を垂らしそうな勢いで、厨房を見つめるアビーがいて。

 それをマフィンが、咎めている。

 アビーらしい。そう思ってはソードを追う。

 他の二人も、俺の後をつけているようだった。

 

 また上るようだ。

 「!」 

 その先に気付くことは、だんだん見覚えのある場所に近いと思う。

 そう、最初通された、暗い部屋のある階層に近いような。

 だが、その暗室というか、情報処理室というか。

 その場所を目指しているわけではない。

 近くはあるが、それとは別の部屋。

 二重のスライドドアで隔てられたぐらいで特段特徴は見受けられないものの。

 いかにも何かありそうではある。

 「ここがとっておきよ!」

 ソードは言って、鼻高々に。

 この中身は、彼が自慢できる何かのようだ。

 気にさせる言い方のため、その通り、気になってしまう。 

 「……中身は何?」

 「その言葉待ってました!この中身は……。」

 「!」

 ソードの望むような感じに聞いてしまう。

 言葉を待ってましたと喜んでは、先を説明しようとするが。

 途端、ソードの胸元から、何やら喧しい音が鳴り響いてきた。

 警報、と最初思ったものの。

 違うなと次に思う。

 警報なら、艦内全域に響き渡るはずだから。

 「うげっ!こんな時に……。わりぃ。当直かも。あぅぅ~。用事ができちまった!!すまねぇ!俺は、ここで!……ええと、帰り道分かる?」

 「!」 

 ソードに用事ができたみたい。何ができたかは、分からないけれど。

 その警報みたいな音を耳にして、ソードは残念そうな顔になって。

 また、ここまで案内したけれど、帰り道は分かるかなと聞いても来る。

 「……。」

 俺は、追い付いたアビーとマフィンに目配せする。

 帰り道は、分かると二人とも頷いてくれた。

 「……分かるみたい。ありがとう、ええと、ソード。」

 「ああ!んじゃ、俺はここで!あ、ウィザード!また、後でな!」

 「あ、うん……。いってらっしゃい……。」

 帰り道は分かると伝えたなら。

 慌ただしくも、別れの挨拶をしてソードは駆けだす。

 その姿を、俺は小さく手を振って見送った。

 途中、約束も述べて。

 俺は、嫌がることもせず、約束に頷いた。

 やがて、慌ただしく駆ける音が響き、遠退いていき、言葉ない沈黙になる。

 なお、機械の作動音が相変わらずであり、静寂とはまた違う。

 残された俺たちは、さて、どうしよう。

 「!ねぇねぇ!この先、すっごく気になるね!」

 「……!あ、ああ。」

 アビーは、ソードが言い掛けたこの先が気になるようで。

 興味津々に言ってくる。俺もまた、気にはなっているものの。

 「……まさか、勝手に行こう、だなんて言うんじゃないよな?」

 アビーがそう言うということは。

 早速行こうと言いかねないということで、俺は先に、釘を刺すように言った。

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