いきなりさくせんかいぎっ!

 握られたことにかどうかは知らないが、顔も赤くなる。

 「ねぇねぇ!ウィッチちゃん……。ええと、ウィーちゃん!」 

 「?!ひぇ?!ふぇぇ?!ふぁいぃ?!」

 「どこかに、お姉さんとかいる?姉妹とかいたりする?」

 「……。」

 アビーは、気になったら仕方なく、ウィッチさんに聞く。

 聞かれた方は、顔を赤くしただけなく、目まで回している。

 そうしたなら、聞かずにはいられないアビーの行動。

 傍ら見ている俺たちは、頭を抱えてしまった。 

 挙句、あだ名まですぐ付けるなんて……。

 「……い、いえ。いません……。いや、いますけど、皆私の妹や弟です。えう私、ダメダメお姉ちゃんなんですぅ!」

 そうであっても、ウィッチさんは答えた。

 慌ただしく、手を振りながらも。 

 「そっかぁ……。」

 聞いていたアビーは、どこか残念そうだ。少し、顔を落としてしまう。

 「ちょっと……。アビー。」

 「?」

 軽く落ち込んでいるアビーに、マフィンは近付き、軽く手招きもする。

 何だろうかと、顔を上げ、振り向いたなら。

 「?!」

 徐に、両頬を捕まれる。

 「アビー!ダメでしょ!いきなり……。悪い子は、こうよ!たてたてよこよこまぁるかいてぴょん!!」

 「?!痛い痛い痛い痛い!!!」

 注意がてら、アビーのそんな行動を咎めて、加えて、両頬を縦横無尽に引っ張る。

 痛みにアビーはすぐ涙目になり。

 「うぅぅ。痛いよー……。ごめんなさい。」 

 そう言って、悪かったと頭を下げてきた。

 が、対象はマフィンで。

 「私じゃなくて、その……ウィッチさんによ。」 

 「はぁい。」  

 今謝るのは、マフィンではないと示し。

 生返事ながら、アビーは応答、今度はウィッチさんに向き直った。

 「ごめんなさい。」

 「!!」 

 向き直っては、深々と頭を下げた。

 された本人は、またまた目を丸くしていて。

 「い、いえ……。大丈夫です!!き、気にしないでください。」

 言われた本人は、相変わらずあたふたしながらも、大丈夫だと言って。

 その様子から、怒ってはいない様子で。

 「さて。艦長がお待ちかねだ。君たちにも会いたいと言っていられる。そも、立ち話もなんだろ?行こう。」

 そんな紹介の後、ぐちゃぐちゃカオスな状況ながら。

 打破するのは、航空隊の隊長である、シールドさん。

 手を叩き、中に入るように促してきた。

 それもそうかと、俺も、他の面々も頷き、従う。

 航空隊のメンバーが先に、艦橋から内部へ入っていくのに従って、俺たちも、後を追う。

 

 艦橋から下へ潜るものの。

 大きさの割に、しかし中は狭いものだ。

 無骨とも捉えられる、剥き出しの配管や、飾り気のない壁面といい。

 そこは軍艦だと言わしめてくる。

 鼓動のように、動力部からの音も聞こえている。

 その狭さ故に、人一人分のスペースしかないため。

 普通どこかで譲ることをしなくてはならないことも多そうだ。

 「!」

 だが、流石に航空隊の中でも、シールドさんは偉いのか。

 道は譲られ、かつ、敬礼をして見送られていく。 

 航空隊の一員もまた、応じて。

 ソードも、印象とは違って、敬礼を返している。

 まあ、ややちゃらけた感じがしてならないが。

 「?」

 姿が見えなくなるまで、敬礼し続けてはいるが。

 どうも、航空隊にだけじゃないようだ。

 艦内で働く隊員さんたちを横切る最中、視線をちらりと見れば。

 どうやら、俺たちにも送っている。

 ……なるほどと、納得。

 前回、帝国への攻略戦に従事した功労者であるからか。

 特に、俺か?

 いや、俺だけじゃない、皆もまた、駆け付けて。

 難攻不落と呼ばれた、長城を破壊してみせたのだから。

 そんな、狭い通路を潜り抜けて、まるで奥深くに誘われて行くように進むなら。

 俺たち含む一団はやがて、薄暗い部屋に辿り着いた。

 その場所、薄暗いながらも、液晶パネルだか何だかの明滅と。 

 スイッチの明かりで、星空にも思えてしまう空間。

 機械の作動音と、操作音も聞こえるものの。

 そこにいる人の姿は、暗闇に紛れてよく見えない。 

 そんな空間の中央には、幅広いテーブル状の物があり。

 そこにも液晶モニターの様な物が埋め込まれ、光を放っている。

 「フリート0航空隊〝ソラネコ〟。只今帰艦致しました!それと、ウィザードをお連れ致しました!」

 先頭に立つシールドさんが、敬礼して口上を述べるなら。

 「うむ。直れ。」

 「はっ!」

 返事がして、シールドさんは敬礼をやめ、直立姿勢にて、対峙する。

 返事の先から、モニターの光溢れるこのテーブルに。

 ぬっと声の主が姿を現してきた。

 現れた人物は、一際違う軍服を羽織る男。

 その服の肩には、豪華と呼べる飾りがあり。

 胸元には、沢山の勲章もある。

 帽子を被っていて、表情はよく分からないが。

 感じる圧力は、この艦のどこの誰よりも強く。

 つまりは、百戦錬磨の男であることを感じさせる。

 いかにも、この船の長といった具合か。

 現れたなら、艦長と思われる男は、帽子を脱ぎ。

 こちらに向き直り、そっと、笑みを顔に浮かべた。

 表情も様子も見えるようになったなら。

 その人は、丁度シールドさんに近い年齢の男の人で。

 同じく、ビストらしく、猫の耳を持つ。

 「艦長のサトウだ。よろしく。」

 頭を下げて、やはりの艦長さんは、さらに握手も求めてきた。

 「……?」

 誰にだろうか、疑問が出てくる。

 「!」 

 後ろから、ポンポンと背中を叩かれて。

 振り返れば、マフィンが、何か、目配せしている。

 どうやら、俺が進んでしてみてと言いたげだ。

 頷いて、俺が進み出て、艦長さんの手を取った。

 「!」

 手に取ったなら、やはり軍人か、力強く握られて、思わず目を丸くする。

 「……君が、大和君だね?常々噂は耳にしているよ。」

 「!あ、はい……。」

 いきなり言われることには、俺の名前で。

 言われて俺は、まだ目を丸くしたままながら、頭を下げて答えた。

 「さて。早速だが、話に取り掛かりたい。」

 「!」 

 握手をし終えたなら、早速と艦長さんは言ってくる。

 手を放し、再び帽子を被るなら、話があると身を翻して。

 テーブル状の機械の向こうに行き、再びこちらに向いてくる。

 その翻しから、多分本題だと思って俺は、いや、俺たちは心決めて。

 聞き入るように見つめる。

 「最初に、お礼が言いたい。協力、感謝する。」

 「?」

 入った矢先、告げられることにはまずお礼で。

 またまた何でかなと、首を傾げてしまう。 

 「今回、サバンナ地方攻略に際し、君たちのような心強い人々が協力してくれることに、大変感謝している。現状、世界中にこのような作戦が展開されている中、サバンナ地方から救援要請があって、我々は今、向かっている最中だ。だが人員を回そうにも、足りないという面が出てきてしまってね。サカマタから連絡を受けた時は、まさに渡りに船だと思ったよ。」

 「……は、はぁ……。」 

 続くのは、理由。

 人員不足の中、俺たちが来てくれたことに感謝しているようだ。

 あの、帝国の崩壊以降、マフィンが言うことには。 

 色々と情報が混乱していることもあって、混迷を極めているのかもしれない。

 実感は残念ながらないのだけれども、ここにきて、実感しそうになる。

 生返事ながら、聞き届けた。

 「……で、作戦だが……。」

 「!」

 その次は、具体的な作戦行動の模様。

 これこそ、本題かな。 

 話が本題にやっと移ったなら、テーブルのモニターの表示が変わる。

 地形図が表示され、下の方には、多分自分たちのことだろう。

 三角形のポインタみたいなものも表示されている。

 その三角形の周囲に、3つほど他の三角形も表示されてきた。

 「これは、今現在、我が艦隊の場所を示している。ここから、西へ向かい、進んでいく。まあ、危険地帯が近いとはいえ、昔ほどじゃない。危険はことは、ほとんどないだろう。……ついでに、我が艦隊に手を出そうと思う奴も、いるまいて。」 

 「……はぁ。」

 やがて、航路が示されて。

 真っ直ぐ目指しているようだ。

 向かう先は、サバンナ地方、リオンキングダム。

 それにしても、なかなか長いと思った。

 「……それで、途中、他の艦隊とも合流する。」

 「!」 

 途中、2つほど三角形のポインタが新たに表示される。

 それら周囲にも、同じく小さな三角形が表示されて。

 艦隊らしい。

 「まずは。大規模な航空隊を持つ、航空母艦を旗艦とした〝フリート1〟。」

 「……はい。」

 今度は、合流する艦隊の特徴を説明してくる。

 「この艦隊は、我が艦隊より航空戦力が豊富だ。恥ずかしながらだが、そこの旗艦は我が艦より、はるかに巨大だからな。……そうだな。本格的な空母と呼ぶに相応なのは、このフリート1の旗艦だろう。」

 「はぁ。」

 特徴から、俺たちがいる艦隊より、巨大な模様。

 実感は残念ながら、分からないでいる。

 そう思ったら、モニターから立体投影に変わり。

 それぞれの艦の特徴が、立体的に分かるように示される。 

 最初に表示されたのは、俺たちがいる航空母艦。

 全長190mほどと。

 次には、例のフリート1の旗艦。

 全長がおよそ2倍になり、幅はもう3倍以上。

 ……確かに、比べたらこちらはこじんまりとしていそうだ。

 「役目があってな。……我々は元々、哨戒用となっているからな。以前の戦局悪化に伴って、こういう艦隊に格上げになったが。以来、今もなおこうして、作戦に従事している。」

 「……。」

 ついでに、裏事情が話された。

 以前……それも、帝国がまだあった時代のこと。

 当初は哨戒用のものだったが。

 戦局悪化もあって、こうなったという事情だ。

 それで今回もまた、駆り出された。

 「次は、揚陸艦を有する〝フリート2〟。」

 表示が元に戻ったなら、今度はフリート2の説明が。

 「旗艦は強襲揚陸艦になっている。」

 立体表示されると、その旗艦もまた、空母の様な姿で。

 並べられると、やはりこちらの旗艦よりも大きい。

 違いは、艦の後方に、開閉できる扉があることか。

 そこから、小さな船……か?いや、ホバークラフトか。

 そういうのが展開される様子が示された。

 「陸の部隊、あるいは、海兵隊を展開できる能力を有する。また、少ないながらも、戦闘機隊を出し、艦隊防空を強めることもできる。」

 「……。」

 特徴を説明されて、静かに聞き入っていた。

 「さて。まとめとして。我々は、補給基地にて合流し、サバンナ地方、いや、リオンキングダム奪還、解放作戦を行う。」

 まとめになり、3艦隊合流後、リオンキングダムを目指し。

 陸海空、同時に作戦展開をして、奪還、解放を行うということだ。

 「あとは、支援として他2艦隊ほどが、サバンナ地方西側より行う。」

 「!」

 地図上、目的地の西側に、別の艦隊も表示されて。

 こちらも、リオンキングダムに向かい、行動をしてくれるようだ。

 「この作戦によって、帝国の残党を、かなり弱らせることができる。君たちの協力もあって、可能になった。……改めて、感謝する!」

 締め括りとして、最後言っては、頭を下げた。

 俺たちも、聞きながら頷く。

 「まあ、長い話もなんだ。長い旅路で、狭い艦内だが、ゆっくりしていってくれ。」

 「!ありがとうございます。」

 言葉には付け加えがあり。

 狭い空間と、長い旅路への、精一杯のもてなしの言葉。

 観光なんてのを想定した船ではないがため、十分なもてなしはできないけれども。

 できるだけ精一杯の言葉を紡いでくれた、俺は、気遣いに頭を下げる。

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