こうくうぼかんのにちじょう

くうぼにようこそ!

 その狭さとも、すぐお別れになる。

 「!」

 目標地点に来たか、降下を始めた。

 何事かと窓から外を見れば。

 それなりに大きく、広い甲板を持つ艦船が、見えてきた。

 航空母艦だ。 

 なお、戦闘機の類は、その広い甲板には存在していなく。

 また、矢印みたいなマークが、甲板の端に均等に並べられているようなもので。

 かつ、艦橋の前方付近に、何だかハッチのような物がついた個所もある。

 それが目標か。

 先に、ヘリが降りていて、次にこちらが着艦するようだ。

 「!」

 着艦時の衝撃が、下から響き、最後、後部ハッチが開いて終わる。

 到着したなら、サカマタさんたちがまず降りていき。

 次に、俺たちが降りる。その際、また、シンの手を取って降りていき。

 「あ!ここ!!」

 「?」

 先に降りたアビーが、その先を見て、何を見付けたか声を上げる。

 「アビー?どうしたの?」

 「この船!!ほら、前あたしたちが乗った!!」

 「!そう言えば……。」

 何を言うかと思えば、以前乗ったことがあるとのことで。

 嬉々としている様子に、俺もまた思い出す。

 確かに、帝国を倒した後、帰る際に乗ったのが、この船だった。

 ……偶然とは怖いものだね、またこれに乗ることになるとは。 

 「……?」 

 帰る時に乗った船ということで、何だか不安のようなものを覚える。

 確か、その時って、例のあの三人組がいたような。

 この空母の航空隊で、やたらと腕が立ち。

 帝国攻略に先立って、行動していたあの……。

 「……。」

 不安というか、何か感じ、航空機から降りたなら、左右をくまなく見渡す。

 「?」

 俺が変にそんな様子を見せたなら、アビーは不思議そうに首を傾げた。 

 シンもまた、そんな俺の様子が、気になったか、同じように首を傾げていて。

 《はいはーい!!!皆大好き、フリート0の航空隊のお帰りだよー!哨戒行動終わったから、……早く甲板開けてくれー!!》

 「!」

 どこからか、聞き覚えのある声が響いた。

 耳を澄ましたなら、どうも俺のバックパックから。

 いや、多分、通信機の方からかな。

 「ちょっとごめんよ。」

 「?う、うん。」

 俺は、シンの手を離し、バックパックに手をやり。

 例のシャチを象ったバッヂ型の通信機を手に取る。

 通信しているらしく、光りそうな部分が、点滅を繰り返している。

 もちろん、耳に近づけたなら、その通り。

 通信独特の、ノイズ交じりの音が、途切れ途切れ聞こえてくる。

 《……だそうだ。管制官、いや、砲雷長に代わってくれ。》 

 《はっ。》

 《砲雷長、対空ミサイルと、対空レーザーをオンラインにしてくれ。とても、降りたがっている奴を、今すぐ、降ろしてやれよ。》

 《……えっ?!い、いや、流石に味方を撃つのは……。》

 《?!が、ガント?!ちょ……っ?!な、何言ってんの?!あわわ、やめて、やめて!!!こっから落ちたら、死んじゃうよぉーーーー!!!》

 《はぁ。だったら空くまで待つことだ。俺たちは、ああいう輸送機や、対潜ヘリの護衛もやっているんだ。これも立派な仕事だ!ドンパチやりたきゃ、紛争地帯にでも行ってこい!》

 「……やっぱり。」

 通信機から聞こえるやり取りに、思い出す。 

 それらはやはり、その航空隊のものだ。

 どうやら、まだ空にいて、行動しているらしい。

 「いそげー……。空の暴れん坊が帰ってくるぞー……。」

 傍ら、甲板で作業している人たちは、もう慣れているのか、やはりというか。

 呆れながら指示を出し、甲板にいるヘリや航空機を片付けるよう動いていく。

 それらの姿が、リフトらしき場所に置かれたなら。

 あっという間に姿が消えて入れ違いに空から轟音が響いてくる。

 俺たちも俺たちで、避難していると。

 擦れ違いに、戦闘機が4機、甲板に降下してくるのが見えた。

 甲板に近づくなら、光の膜を発して、減速をしていく。

 違和感はある。

 いつの間にか航空隊に1機増えた?彼らは、3人一組だったはずだが。

 ヘルメットと、誘導用の、光る棒を持った人が出てきては。

 その一群を誘導していく。

 指示に従って、4機が丁寧に着艦してきた。

 着艦も独特だ。

 鳥が羽ばたきながら軟着陸するような、そういう雰囲気を持つ。 

 俺が知っている、長い滑走路を走りながら減速していく様子とは、また大分違う。

 ここら辺は、技術の違いなのかもしれない。

 着艦が終わった頃合いに、整備員らしい人々が集まり。

 降機用の梯子を持って機首にあてがう。

 コックピットが開くなら、パイロットが素早く降りていった。

 無骨なヘルメットを取り払うなら、見慣れた顔が現れて。

 それぞれ、猫の耳をしている人たち。 

 初老の猫耳の男性を先頭に、目つきの鋭い男。

 その後ろを、アビーと顔が似ている男の子が続く。

 最後、歩いてきたのは、女の子のよう。

 特有の膨らみから、男ではない。

 その女の子、新人か、ヘルメット取るのに一苦労あり。

 取り払ったなら、比較的長い髪が見え。

 色は黒っぽい、あるいは灰色っぽい色合い。煙とでもいうのか、そんな色合い。 

 その頭には、らしい、猫の耳だ。

 彼ら整列して歩んでいく様子は、沢山の戦闘を潜り抜けた、練磨の兵士たちと思えてならない。

 事実、それだけの自信を醸し、俺は感じた。ただし、先の女の子を除くけど。 

 「!」

 「!!」

 そのパイロット集団、いや、航空隊の内、アビー似の男の子と。

 確か、空ではソードと呼ばれていたか、目があってしまう。

 「……。」

 「……。」

 互いに、見つめ合う形に、なり。

 ふと立ち止まる航空隊の面々とも目が合い。

 どうしてか、不思議と沈黙が溢れてきた。

 その沈黙を破って来たのは、ソードだ。

 「うぃ、うぃ……!!!」

 「!」

 ぽつりぽつり、言葉が紡がれていく。俺は、何だか嫌な予感がしてならない。

 そも、そのソードという少年は、俺のことをとても好いているらしく。

 初対面だというのに、過去俺に抱き着こうとさえしてきた。

 そんな、やんちゃな少年だ。 

 「ウィザードぉおおおおおおおおおん!!!!」

 「!!!」

 ……案の定だ、ソードは歓喜に叫び、思いっきり飛び掛かって来た。 

 その表情は、抱き着くだけじゃなく、そのままキスさえしそうな勢いだ。

 色んな意味で青冷めた俺は、危険と感じ、つい身を屈めてしまう。

 そうなったなら、ソードは、空を抱くことに。

 また、止めてくれるのがいないなら、勢いそのまま。

 ……甲板から外に出てしまうことになった。

 「?!え、あ?!お?!」

 ……どういう仕掛けか知らないが、ソードは見事宙に静止して見せる。

 おどけた声を上げながらだが。 

 とはいったものの、長時間ではない。

 その後すぐに、落下を始めた。

 「ぉあぁあああああああ?!だぢげで~~~~!!!お、おぢる!!」

 悲鳴が上がるものの、落ちきることはない。

 どうやら、ギリギリで甲板の、船の端にしがみついたようだ。

 そうして、じたばたしている。

 「はぁ……。」 

 呆れた声は、目つきの鋭い男から漏れてくる。

 確かこの人は、ガントと言われていたかな。

 事実、呆れ顔のその人は、ソードがしがみついている場所に歩み寄っていく。

 「お?!が、ガント?!あ、ありがとう!!」

 「全く、貴様は。空では落ちないくせに、こういう所では落ちるんだな。そのセンスだけは、ある意味すごいと俺は思うぞ。」

 気付いたソードは、嬉しそうに言ってきて。

 ガントさんは、呆れたように言いながら、ソードの服を掴み体を引き上げた。

 かなりの力持ちで、片手でありながらも、軽々と持ち上げる。

 「いひひっ!ガント優しー!キスするぜー!!ん~!!」

 「……。」

 嬉しいのか、普段からそういうやり取りかは知らないが、ソードは引き上げられたなら、宙に上げられたままであっても、手を伸ばし、ガントさんにキスをしようとしていた。

 ガントさんは、……気持ち悪そうだ。若干顔が青冷めたのを見る。

 だからか、今度はもう片方の手を出し、ソードの顔に当てる。

 当てた上で、握り潰さんばかりに力を込めた。

 「?!あだだだだだだだだだ?!や、やめて!!ガント!やめて!!い、痛い痛い痛い!!」

 「気持ち悪い。普通にしろ、普通に。」

 激しい痛みに、悲鳴を上げる傍ら、ガントさんは普通にしろと、説教を加えた。

 彼ららしいやり取り終えたなら、ガントさんはソードを下ろしてやり。

 当のソードは、痛みに涙目になりながらも、乱れた身だしなみを整えていた。

 そうなったなら、変にかしこまってくる。 

 航空隊4人、きちんと整列しては、こちらに向き直ってきた。

 「……さて。また、君たちと協力できて、嬉しく思っているよ、ウィザードとその仲間たち。歓迎するよ。」 

 改めた上で、最初言ってきたのは初老の男、シールドさんだ。

 言い終えて、挨拶がてら、敬礼を見せてくる。

 俺たちは、見たならお返しに頭を下げて。

 「……む?そう言えば、紹介しないといけないな。」

 「!」

 挨拶もさることながら、シールドさんが気付くことには、以前にはいなかったもう1人のことに気付く。

 敬礼を解いて、目配せをすると、最後尾にいた女の子は頷き。

 前に出てきて、改めて敬礼をした。

 「え、ええと!し、新しく配属になりました……。め、メインクーンの、ええと、TACネーム〝ウィッチ〟と言います!よ、よろしくお願いします!」

 緊張気味で、俺たちに挨拶と自己紹介をしてきた。

 「!こちらこそ、よろしく。」

 「よろしくー!」

 言われて俺は、返答し頭を下げた。アビーも、他、俺たちの仲間も続く。

 顔を上げたなら、また向き直ることになるが。

 アビーは、彼女の名前、いや、彼女の種類かな、聞いて。

 何だか親し気に笑みを浮かべてきた。

 「?どしたの?」

 俺は、聞くと。

 「メインクーン、だって。何だか、クーンちゃんを思い出すね!」

 「!」

 どうも、そうらしく。種類を聞いて、ピンときたことは。

 村で留守番していると思われるクーンのことにも繋がった。

 ピンと来たなら、早速とアビーは動く。 

 歩み寄っては、いきなりウィッチさんの手を握った。

 「?!ひゃぁ?!」

 当然、突然のことに、目を丸くしてしまう。

 

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