第129話 ゲテモノのあれこれ(9)

 すっかりご無沙汰しています。

 望まぬ役職を与えられたために仕事がにわかに忙しくなり、また、最近ではイラストにも手を出すようになったので、なかなかゆっくり文章を書く時間が取れなくなってしまいました。


 しかし、暇を見つけては創作に役立ちそうなゲテモノ紀行は続けていますので、ここに数ヶ月分の記録を書いていこうと思います。巻きで行くぜ。



■燻製編

 かねてより欲しかったファイアスターターを購入。

 ファイアスターターとは要するに現代版火打石。

 古代の火熾しと言えば、木と木を擦り合わせる摩擦式着火法、そして黄鉄鉱や白鉄鋼にフリントを打ち付けて火花を飛ばし点火する火花式着火法が双璧。

 摩擦式着火は以前やったことがあるので、今回は火花式でやってみたいなと思い、友人のデイキャンに付き合うついでに買ってみました。


 実際の火打石と違い、ファイアスターターはそういう風に作ってあるので火花を飛ばすのは割と簡単。

 しかし、火花は飛んでもなかなか着火には及ばない。火口には枯葉を使ったのですが、どうにもうまく燃焼せず、火種まで育ちません。乾いているように見えて水分が含まれていたのかも。火口にはススキや松ぼっくりなどが良いそうですが、どちらも生えていなかったのが痛かった。


 さすがに徒労で終わるのもどうかと思い、断念してティッシュを使うことに。

 すると、めっちゃ燃えました。ビビるくらいの速度で火花が火へと成長しました。ティッシュすげぇ。見惚れたせいで、そのまま燃え尽きてしまったのでリテイクしましたが。


 人生二度目の文明の力を使わず(火口はともかく)熾した古代の火。

 せっかくなので、うずらの卵(水煮)を燻製してみることに。


 なぜ、うずらと言えば、鶏卵パックを何個も持って行くのは途中で割れたり、余ったりして面倒だったからです(身も蓋もない)。

 まあ、よくよく考えれば、ミラン君の周辺に鶏がいたかも怪しいので、卵が必要な時は小鳥の巣から採ってくるんじゃないでしょうかね。


 燻製器はめちゃくちゃ適当。

 100均で買った銀皿に網を敷いて、サクラチップを入れて重ねただけ。

 あまりにも素朴な外見だったので、不安になって「本当にこれでいいの?」と知人に尋ねたのですが、「大丈夫。燻製なんてこんなもん」と気にした様子なし。知人を信じて火に投入。


 一回目は火力が強すぎてサクラチップがぼうぼう燃えて煙も中身もヤバいことになりましたが、二回目はいい感じに煙を調整することに成功。三十分ほど燻すと、真っ白だったうずらの卵がスモークがかった茶色に変色しました。


 いざ実食。

 ド素人の作ですから、味はそんなに美味しくありません。煙たいし、酸っぱい。だいたい下味さえつけていないのですから、美味いはずがない。


 ですが、ミランくんはこうやって暇を見つけては保存食を作っていたんだろうな、と思いを馳せることができました。いい体験だったと思う。今度からジャーキーは味わって食べよう。



■ブルーギル編


 時は2022年7月。

 友人が「釣りやってみたい」と言うので、近くの池までフナ釣りに行きました。


 釣りを経験するにあたって、まず大事なのは「魚を釣る喜び」。何でもいいから釣れなくては、「次も行きたい」とはなりません。

 なので、あまり道具にお金がかからず、技術も要らない(けれど極めるのは困難な)フナをターゲットにすることに。


 ラインはこう結ぶ。餌はこう掛ける……私も初めて釣りをしたころのことを思い出しながら、一つ一つ友人に教えました。その甲斐あって、三時間ほどをかけて30匹ほどの釣果を上げることができました。


 全部ブルーギルだったけどな。


 この池にはギルしかいないんじゃないか。そう思うほどにギルばっか。外来魚があまりいい顔されないのもわかるなあ、こりゃあ。


 そして、10月。

 これからは徐々に寒くなり、快適に釣れるのも今の内ということで、またも友人を伴って釣りに行きました。


 そして、やっぱり無駄に釣れまくるギル。

 いや、いいんだけれども。釣れないよりかは。


 しかし、これだけ釣れるんなら一匹くらい食べるか。そう思ってしまう私はすっかりゲテモノ紀行に毒されています。まあ、ブルーギルはブラックバスと並んで特定外来生物に指定されているので、別に捕って食べる分には何も言われまい(きちんと〆てから持って帰りました)。


 淡水生物は寄生虫もそうですけど、生息している水質が人体にどれだけ影響があるのかパッと見、わからないのが怖い。あの溜め池に有害物質が流れ込んでいないことを祈るばかりですが……まあ、一匹くらい大丈夫でしょう。たぶん。


 たっぷり酒に浸して臭みを取った後、頭とヒレをハサミで切り落とし、内臓を取って三枚におろす。食べられそうな身はほんのちょっと。刺身一切れ分くらい。労力に対し、得られる栄養素は微々たるもの。もともと食用研究として持ち込まれた種だけれど、こりゃあ定着しないよなと実感。


 調理法は焼きと煮つけ。

 顎口虫が怖いので、どちらも10分以上加熱。怖い怖いと言いながらも、食べずにはいられないんだから、我ながらどうかしていると思う。友人からも「実績解除の強迫観念に囚われているのでは?」と指摘があっております。それも否めませんが、創作に役立つと思って始めたことなので、やれるところまではやりたいとは思っている次第。


 ちなみに実食したところ、どちらも普通に美味しい。ばっちり淡白な白身魚の味。身は少ないけれど癖がないし、意外なほどに臭みもない。酒に加えて塩水処理したのが効いたかな。


 あとは私が寄生虫に冒されないかどうか。

 こればかりは時間が経過しないとわかりません。テナガエビの時もそうでしたが。



■甘露蜂蜜編


 白武ぶらり旅in熊本。

 熊本県はエインセル・サーガ・ワールドの舞台(レスニア王国)のモチーフの一つだったりします。


 今回は知人のドライブに付き合っただけなので、何か目的があって来訪したわけではないのですが、せっかくなので高原植物の観察でもしようかなと思っていました。


 ……が、当日は生憎の雨天。

 行くだけは行ったものの、ちょっとフィールドワークできるような状況ではない。白川水源で水汲んで、あとはあか牛丼食べるくらいか、と思っていたのですが、立ち寄ったお土産屋さんで甘露蜂蜜を発見。


 甘露蜂蜜というのは、花の蜜ではなく樹液でできた蜂蜜のこと。

 厳密には樹液そのものではなく、樹液を吸っているアブラムシなどの昆虫が余剰糖分として排出したもの=甘露を蜂が集めて巣に蓄えたものです。


 甘露蜂蜜は以前、ファウナの庭・外伝「幻の蜂蜜を求めて」で取り扱った題材ですが、当時は食べたことがなく、調べた知識だけで描写をでっちあげています。後出しではありますが、ここでしっかり履修しておこうと思い、即購入。


 作中でも表現した通り、甘露蜂蜜は一般的な蜂蜜のハニーゴールドではなく、みたらし団子のたれを思わせる茶褐色。蓋を開けてみるとメープルっぽい香りと味がします。一般的な蜂蜜と味が違う。こってりというか。濃厚というか。


 以前、検証のために買ったヤギチーズが残っていたので、それにかけてみたところかなり合う。ヤギチーズは酸味が強いから、それを結構和らげてくれます。両方ともパンに乗っけたら美味しそうですが、あの世界、米と麦が主食だったわ。




 ……以上、まとめでした。

 最近はなかなか筆が取れず、作品の更新ができなくて申し訳ないと思っています。

 また落ち着いたら何かしら書いていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

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