第123話 苦手な分野のあれこれ

 いやあ、シン・ウルトラマン面白かったですね(題目とはかけ離れた第一声)。

 評価については賛否分かれるとは思いますが、その基準は「ウルトラマンを知っている/知らない」ではなく、観た側が「作り手の思考を持っているかどうか」ではないかと個人的には思います。


 私はウルトラマンで育った人間ではありますが、ウルトラマンファンだから面白かった部分だけでなく、そうじゃなくても面白かった部分もきちんと存在したので、「ウルトラマンを知っている人なら面白い」という評価は何か違うんじゃないかと。


 さて、あんな刺激的なものを観てしまったら「わしも書きてぇ」となってしまうのが物書き候補の性というもの。脳内では白武式ウルトラマンが着実に構築されつつありますが、ここで私の課題を一つ思い出しました。


 私が物語を書く上で苦手としているジャンルは多々ありますが、とりわけ大きな括りとしては『舞台が現実世界であるもの』が挙げられます。


 理由は明確で『現実の組織をもっともらしく描くスキルがないから』です。


 私がまだ若かりし頃、異能学園モノというジャンルが隆盛を極めていました。私がどハマりした空の境界、月姫、Fate等の奈須きのこ先生の著作物を筆頭に、ブギーポップは笑わない、灼眼のシャナ、とある魔術の禁書目録等、漫画もラノベもこれ一色の時代があったのです。


 影響を受けやすいティーンエイジだった私も例に漏れず、当時の活動の場で異能学園モノを書いておりました。


 その内容は、現代日本が舞台で、ある街に一匹の鬼を分割して封印していた四つの家があり、負の感情を引き金に「鬼の魂」が復活したことを契機に、鬼が完全体に戻るため、他の封印の家系に連なる主人公およびヒロインが鬼化。お互いを殺していってパーツを取り戻していく……というもの。


 鬼は基本的に人間の敵となっており、周辺の人間が異能バトルに巻き込まれて容赦なく死んでいきます。そもそもが封印しなきゃいけないほど危険視された鬼であることを主張する描写なのですが、友人から「こういった状況になって警察が動かないのはおかしい。動いた描写もない。登場人物の、信じてもらえないって理由で警察に相談しないのはともかく、現に死人が出ているのに行政が対応しないのは不自然だ」と指摘を受けました。


 私もまだ若かった。「わしだったらこの能力で戦わせる」という思いだけで異能バトルばかりに力を入れて、そういった現実的な描写の脇を全然固めていなかったのです。


 異能学園モノの最大の魅力である「非日常」を描くには、まず「日常」――ひいては「現実組織」を正しく理解しないとリアリティも何もない。

 例えば、私がモンスターパニックを描こうとしたとして、怪獣が現れた時、警察はどう動くのか。政府はどう対応するのか。どういった命令が下り、どのような部隊が実働に当たるのか――そういった要素を描写を入れなくてはなりません。


 当たり前と言えば当たり前。だからこそ該当する組織、もっと言えば『現代社会』というものをしっかり理解していなければ、途端に薄っぺらな虚構に成り下がってしまう。


 それを回避するには現代社会の勉強するしかありません。

 ところが、私は友人の指摘がトラウマになってしまい、それ以来、現代モノを書こうとする意欲がなくなってしまいました。


 友人は悪くありません。当然の指摘をしただけ。彼の指摘がなければ、もしかすれば私は今でも荒唐無稽なものばかりを生み出していたかもしれないのですから、感謝しています。


 ですが、自分があまりにも無知で恥知らずだったという事実は耐え難いものがあり、現代モノの執筆を極端に避けるようになりました。そうして、ある時期から自分で答えを用意できる異世界ファンタジーメインへと舵を切ったわけです。


 脳内で構想している白武式ウルトラマンもそう。こういう話が書きたい。こういう設定を書きたいと思う一方、それは果たして現代社会的な筋が通っているのかと古傷が痛み出します。


 カクヨムで執筆されている皆様も、苦手なジャンルなどあるのでしょうか?

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