第115話 心に残る架空生物のあれこれ(2)
一番面白いSFは14歳の時に読んだSFだ、とは誰の言葉だったか。
でも、確かにそうだと思います。何故なら、私が最も影響を受けた作品はだいたい14歳の時に読んだものだから。
あれでしょ。それでしょ。これもでしょ。よく考えてみれば、前回語ったスリヴァーだってそうだった。きっと、14歳という人生で多感な時期に読んだものは、それから何十年経っても揺るぎない創作の骨子足り得る物なのでしょう。
さて、前回が好評(?)だったので、早速第二回。
今回語るクリーチャーも14歳の時に知り合ったものでございます。
その名も「アネモス」。
ウルトラ史上最高傑作(と私が勝手に思っている)ウルトラマンガイアにおける第8話「46億年の亡霊」に登場する超空間共生怪獣です。
こいつはざっくり言うと「幽霊」。
幽霊怪獣なんて別に珍しくとも何ともないんじゃ……と思われるかもしれませんが、アネモスがただの幽霊怪獣であれば私の心に残ることはありません。
私が今でも覚えているのは作中での描写。
幽霊といういかにもオカルト的存在が、いかにして怪獣という生物として存在できるのかという描き方にありました。
アネモスは、地球に選ばれることを目指した先カンブリア紀の生物。
地球に選ばれる=絶滅から回避するために、完全生物となるべくクラブガンという別種の生き物と共生するという知恵まで得ましたが、その進化の甲斐も虚しく遥か昔に絶滅し、今ではその意識だけが古代の地層で残留している……という設定。
とは言っても、それはただの意識。
見えず、触れず、誰にも気づかれることはない。
私がこれまでに関わった人に、俗にいう「見える人」がいたのですが、そういったモノは見えても見ないようにする。気にしなければ寄ってこないし、何もしてこないと仰っていました。アネモスも同様。そこに古代生物の意識が残留していたとして、誰にも認知されなければ存在しないも同然。作中でも、最初は無害なものとして描かれました。
じゃあ、なぜアネモスが怪獣となってしまったのか。
作中ではこう説明されます。
――浮かばれない幽霊は、自分のことを意識してくれる人のところに現れる。
――量子力学が扱うような極小の世界では物質も意識も極めて相対的な関係。観察者の意識の波動が影響を与える。
そう。量子物理学における観察者効果によって顕現した怪獣なのです。
滅びた者たちの声を聞く。そのために古生物学を研究する女性の憐憫の精神に引き寄せられたアネモスの意識は、そこで女研究者の精神と呼応することで現実世界に実体化を果たしました。
とはいえ、たかだか数人の観測。放置していれば何の影響もなかった……のですが、該当地区の不自然な封鎖を怪しんだテレビ取材班がアネモスをTV中継し、その姿を全国ネットで流した結果、大勢の人間がその存在を知覚してしまい、アネモスはこの世界に存在するものとして顕現し、共生体であるクラブガンを呼び寄せ暴れ回ります。地球にもう一度選んでもらうために。
超空間共生怪獣とはよくいったもの。
この場合の超空間とは意識と物質が等しい世界のこと。即ち、量子の世界に他なりません。
いやいや、こんな量子物理学的解釈、本来観るべき年齢層である子供たちが理解できるわけないでしょ。もちろん、そういう難解な設定を多用した作品だったからこそ、厨ニ時代の私がハマったのだけれども。
余談ですが、アネモスと出会った私は、「並行世界を観測する特殊な眼を媒介に、それを共有することで誰しもが並行世界を観測できるようになった結果、世界線が癒着し、並行世界からの侵略を受ける」という物語を考えました。うーん。ぼくらの。
そのエピソードを小説化することは叶いませんでしたが、アネモスのおかげで、霊的存在をどう私の世界に実装するかという命題に、一つの回答を得られることができたと思います。
私がファンタジーだからって何でも魔法で解決する姿勢に否定気味なのは、幽霊さえ科学的に解釈しようと思えばできるという学びがあったからかもしれませんね。
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