第114話 心に残る架空生物のあれこれ
去年の八月、私は某SNSを始めました。
これまでそういうったツールを敬遠してきた私ですが、数年前にとあるyoutuberの動画に感銘を受けてしまい、その方にコメントを送りたい、応援したい、という気持ちが止まらなくなって開設に至りました。
友人からはかなり奇異な目で見られましたが。
一言で言って、キモい。うん。私もそう思う。でもね、抑えられない気持ちってあるよね。それが恋だよね(キモい)。
理由としてはただそれだけだったのですが、せっかく始めたSNS。
いろいろ情報を発信しようとそれなりに何事かを呟いていたり、数年ぶりにイラストを描くようになりました。もしかしたら、カクヨムの読者様の中には私のへちょ絵をご覧になった方もいるのではないでしょうか。
もっとも、創作と趣味がごっちゃになったアカウントなので、興味のない情報も流れてしまっているだろうから、私をフォローしてくれた人々にはご迷惑をかけているものと思われる。それは正直にごめんなさい。
さて。
先週の話ではありますが、キング・オブ・モンスターズが地上波で放送され、ようやっと私も視聴することができました。ネットで流れてきたゴマすりクソバードの謎も氷解。なるほど、そういう意味だったのか。
実写版モンスターハンターも観てきたのですが、個人的にはあまり賛辞したくない内容でした。モンハンに寄せれば嘘っぽくなるし、かといってモンスターパニックに寄せればモンハンというタイトルを使う意味がない。中途半端になってしまったのは、元ハンターとしてはただただ残念に思います。
ですが、短い間隔でクリーチャーものを見たせいか、やっぱりクリーチャーっていいなぁ、異世界生態系書きたいなぁと創作脳が久しぶりに励起しました。
とはいえ、まさか少女剣聖伝をほったらかしにしてファウナの庭2とか書けるはずもなく、とりあえずエッセイでクリーチャーについて書いてお茶を濁そうかと。
そんなわけで、これまでに出会った私の心に残る架空生物のあれこれ。
第一回はスリヴァーを取り上げたいと思います。
スリヴァーとは、私が愛好する米国産の元祖TCG、マジック:ザ・ギャザリングに登場する種族。
尖った頭部、蛇のような胴体、胸から伸びる一本の鉤爪を備えた外観。
「女王」を頂点とした社会性生物で、集合精神によって群れで活動します。1997年のセットで初登場以来、その従来のファンタジーモンスターっぽくないエイリアンテイストな外見と後述する能力によって全世界でファンを獲得することに成功しました。私もその一人。
スリヴァー最大の特徴は、集合精神によってそれぞれのスリヴァー能力を「共有」することにあります。
飛行に特化した個体、筋力に特化した個体、魔法防御に特化した個体など、スリヴァーごとに特徴を持っているのですが、ある一定の距離にいる同胞にそれらの固有能力を共有する力を持っているのです。
ゲーム的に再現するなら、飛行、筋肉、魔法防御の個体が三体並ぶと、その三体全てが飛行能力を有し、優れた筋力を誇り、魔法防御を備えます。異なる性質のスリヴァーがたくさん並べば並ぶほど個性豊かで強力な軍団が完成する図式です。
ただし、この共有能力はゲーム的には強制です。
例えば、所属する集団に不利益を与える能力さえも共有してしまいます。ゲームでの実例で言えば疫病です。疫病を患ったスリヴァーは全ての同胞に疫病さえも共有してしまいます。
仮にハリウッドか何かでスリヴァーを主題にしたモンスターパニックを作ったら、こういう倒し方になると思います。こういうシャレが効いたところが、さすが米国産と言えなくもないですね。
宇宙生物のような外見、集合精神、能力を共有する社会性生物という魅力的な設定の数々に衝撃を受けた若かりし私は、今でもMTGにおいてスリヴァーを愛好しています。というか、スリヴァーに惚れ込まなかったら他作品のレギオンだのBETAだのに執着することもなかったでしょう。それくらい心に残った種族です。
しかし、同時にモンスターには科学的解釈ができるほうがより魅力的という信念を持っている私。スリヴァー最大の特徴である共有能力は生物学的にどうなん?という疑問があります。
あ、共有自体はいいんですよ。
私たち人間だって知識の共有をして、集団の質を高めていますから。
問題は「肉体を変容させる」という点。
ゲーム上においては「全体の戦闘力を上昇させる」筋肉スリヴァーと、敵軍を飛び越えて対戦相手に攻撃を仕掛ける「飛行」を与える有翼スリヴァーの連携は、スリヴァー戦略のオーソドックス。
……なのですが、ムキムキになるということは筋肉質になるということで、すなわち体重が増加するということ。
MTGには灰色熊も存在するのですが、この灰色熊のスペックは2/2。
(2/2ってなんやねん、と非MTGプレイヤーの方は思うでしょうが、これはパワー(左)とタフネス(右)、ざっぱに言えば攻撃力と守備力みたいなものです)
平均体重260㎏、瞬間速度50㎞という、現実世界では最強レベル生物の灰色熊。それが2/2なのがMTG。まあ、ドラゴンが5/5という世界ですからね。
筋肉スリヴァーによる修正値は+1。だいたいのスリヴァーのスペックが1/1であることを考えると、筋肉の肥大化させる能力の共有によって、灰色熊に並ぶくらいの筋肉達磨になるということです。そして、筋肉は他の組織と比べて重い。つまり体重も増えます。質量が増えれば、翼を与えられたところで飛ぶことはできません。
まして、翼があるから飛べるわけではないのです。
鳥は翼があるから飛べるのではなく、翼を含め、飛ぶのに適した身体構造をしているから飛べるのです。それを無視した飛行の共有などできません。腕など空力的に邪魔の極みでしょう。
えー、何が言いたいかというと、つまり、共有する能力の相性があるはずなのですが、ゲームではスルーされているということです。
(ただし、有翼は「重力との取引を止めている」というフレーバーがあり、重力制御での飛行で、翼が補助機構にすぎない可能性もありますが、ここでは無視します。重力操作ができる生物がそうそういてたまるかい)
魔法の世界だからいいじゃねーかと仰るあなた。実に正しい。
ですが、それで納得できる質だったらファウナの庭とか書いてないんですよ。
なので、白武式解釈でこのスリヴァーを考えてみようと思います。
まず女王を頂点とした社会性生物という点は問題なし。アリとかハチとかと一緒。
個体の能力に種別があるのは分業の結果。飛行種はコロニーの外でエサを探して捕える狩猟係。剛力種はコロニーの拡張や修繕を担当する工作係。有毒種は外敵の排除――というように、個体の能力ごとにコロニー運営で分業していると考えていいでしょう。
で、二割ほど何の能力も持たないプレーン種がいると仮定。
集団生物で二割という言葉が出たら、もちろんあれ。働きアリの法則。パレートの法則とも言いますね。
これは集団の中で仕事が生じた場合、腰の軽い2割のアリが働き、6割の普通のアリがそれに続き、最も腰の重い2割のアリが、先に働いて疲弊した個体と入れ替わるというもの。
組織全員がフットワークが軽かったら疲れるタイミングも同じなので、休憩時間が重なって巣が無防備になってしまう。それを避けるためにこういう形態をとっているのですね。
スリヴァーも社会性生物なので、アリと同様にコロニー内に2割の怠け者がいると考えられます。その2割は何も能力がないプレーンで、交代時に初めて能力を共有する。共有メカニズムがあれば配属先を選ばないので、どこの部署が人手不足になっても補充ができます。いちいち分業ごとのストックを用意しなくていいのです。なんと効率的か。とりあえず足りないところに放り込めば共有能力で勝手に専門家になってくれるのですから。
(休憩中の個体はプレーンに戻り、休憩が終わればまた配属される。それを繰り返してコロニーを運営している)
そして、従来の分業制では対処できないトラブルが発生した時に、親和性の高い能力同士を共有させる……みたいな流れでどうでしょう。
やっぱりなんでもかんでも共有するは難しく感じる。コロニーを維持するだけならオーバースペックすぎるし、一種族が強力過ぎればそもそも生態系が瓦解する。世界中がスリヴァーで覆い尽くされ、やがては彼らも絶滅する。私のバイブルにしている小説においても「生態系というシステムには不思議な抑制機構を備えているのだ」と語っていますので、やはり能力全部乗せは異世界生態系的に採用しない方が無難かも?
というわけで、心に残るクリーチャーでした。気が向いたら、別のクリーチャーも語ろうと思います。
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