第91話 ゲテモノのあれこれ(2)
ワニを食ったのなら、次はカエルを食べねばなるまい。
そう思った私は、近所にカエルが食べられる店がないか探し出した。
すると、我が家のすぐ近くにあるではないか!
車で5分! 歩いても20分くらい!
こんな近場にあるのに、どうして気づかなかったんだ!
私は喜び勇んで店まで向かった。
――休業日だった。
一番集客が見込める日曜日に休業日なのぉぉぉ?
カエルを出すような店。一般的な尺度で測ってはならないということか……。
意気消沈した私は友人Iを連れて、先日のオーストラリア料理の店まで繰り出すことにした。その日の夜は、気分はとにかくゲテモノだった。分野は違えど、友人Iも作り手。何かの資料になるだろう。
ということで、二回目のオーストラリア料理店。
一回目はワニ肉を食べられたことへの感動が強かったので、今回は冷静に味と食感と背景的なものを考察しながら食べてみる。
前回同様、インパクトのある手羽先と、唐揚げを中心に注文。
冷静に分析しても、やっぱり鶏のモモ肉に近い感触。味はあっさりめ。とりあえず塩と胡椒が一番合う。理屈では照り焼きも合うだろう。
手羽先はともかく、唐揚げに使われている部位はアリゲーターテール、尻尾に近い部分と思われる。店長が超忙しそうだったので聞く聞けなかった。というか、やたら「Fカップ」という言葉が聞こえてきた。一体何の話をしているのか。
しかし、改めて考えてもワニは危険な生き物。
食用のために獲っていたとは考えにくい。それに肉食動物は家畜に適さないから、ファンタジー世界とはいえ、一般人が口にできるものではなさそうだ。
余談だが、蜘蛛が家畜化できない理由の一つでもある。蜘蛛は肉食のため、密集して飼うと共食いする。蜘蛛の糸の強度は鉄のワイヤーの四倍の強度を誇る素晴らしい素材なのだが、その太さまで編むまでの量が確保できないらしい。
更に余談だが、サーガ世界観には蜘蛛の糸を使ったワイヤーが高級素材としてだが一応流通している。どうにも国家賢人の連中は家畜化に成功したらしい。肝心のどうやっての部分は一切考えていないが。なにかネタがあればください(図々しい)。
話をワニに戻そう。
なので、ワニ肉は革などを目的とした狩猟のあとのご褒美的な側面が強い。漁師飯ならぬ猟師飯といったところか。
ところで、日本にはワニがいない。
(地理まで厳密に模倣しているわけではないにしても)日本をベースにしているサーガ世界に果たしてワニを登場させていいものなのか。
え? 古事記にワニが出てくるじゃないかって?
因幡の白兎に出てくるワニは、和邇――ワニザメという解釈が有力なんですよ。
国内でマチカネワニというワニの化石が見つかったじゃなかって?
あれ、生きていたのが更新世らしいんですよねぇ。果たして、その時代を日本と呼んでいいのか。
因幡の白兎の和邇は、中国から漂着したイリエワニという説もあるんですが、死体が流れてくるだけで、生きた個体が日本までたどり着くことはないそうです。まあ、こういう細かいことを考えてもしょうがないんですが、拘ってしまうのは設定魔の悪いところですね。
で、ついでだから今回もラクダ、ダチョウ、カンガルーも食べる。
そして、結論も変わらないのだが、一番食用に耐えるのはラクダ。
どれも十分に食べれるものではあるが、あえて贅沢をいうならば、ダチョウは独特の臭みと硬い食感が現代人には不向きな気がする。カンガルーは硬いだけで、他の要素があまり気にならないんですよね。
馬や牛もそうですが、人を運ぶ動物はもしかしたら美味しいのかもしれません。
モンゴル帝国を支えたのは馬。遊牧という一ヵ所に拠点を持たない国家形態。高速で大量の人と荷物を運び、肉や乳は人間の食糧となり、死した後の皮や骨、腱は道具の素材に再利用する。馬をひとかけらも無駄にしない徹底された再利用文化が、かの帝国を最強に至らしめたのだとか。
草食で気性も穏やかな馬はもともと家畜化しやすかったのでしょうが、その選別基準の中に味もあったのかも。それとも、人間のほうが長い歴史の中で馬の肉を
次こそは、カエルにチャレンジしたい。
ちなみに、この食レポ的な内容はとりあえず第四段まで予定しています。
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