第21話 各作品のあれこれ(1)
カクヨム掲載作品第一号「ファウナの庭」は、もともと内々に執筆していたものをリファインしたものである。
社畜全盛期の私は、私なりに「このままじゃいかん」と焦りを覚えており、業務の傍らで投稿用のネタをいろいろ考えていた。最終的に友人Sの叱咤で本格的にカクヨムにて活動することになるが、それが意外なほどスムーズだったのは既に書きかけの作品があったからだ。
小説を書き始めたきっかけ(5)で語ったように、ここ十年の私は「私が面白いと思う世界観」の構築に心血を注いでいる。
カクヨムを活動拠点とする上で、どうやったら世界観を伝えられるか考えたが、まさかあの稚拙なルールブックを掲載するわけにもいかない。正攻法で小説を書くのが一番だが、かといって私の面白要素を全て盛り込んだ作品なんて作れるはずがないじゃん。なので、見せたい部分を限定抽出することにした。
その中でエインセル・サーガにおける「生態系」に焦点を当てた作品が「ファウナの庭」である。
タイトルの由来は、昆虫学者のジャン・アンリ・ファーブルが晩年、研究の舞台とした小さな裏庭「ファーブルの庭」から。
「ミランの庭じゃね?」とか言わないように。終章、終章読んで!
前回も少し触れたが、エインセル・サーガの本来のジャンルはSFファンタジーである。異世界ファンタジーのタグをつけているが、SF要素を完全に消し去ったわけではない。私の目指すSFファンタジーとは、ファンタジーとして読んでもいいし、見方を変えればSFとしても読めるような方向性を持つ作品だ。もっとも、これのどこにSF要素があるねんと突っ込まれれば、冷汗が出るのだが。
なので、モンスターをただの都合のいい敵役として描くのではなく、それなりにきちんとした「生き物」として描写したかった。
生態系を主題にすると決めた時点で、ストーリー構想はすぐにできた。
そう、この手の話の定番である「人類の自業自得によって世界が滅びかける」話にしたのだ。環境破壊モノである。
そのためには、どうしても文明と自然の対立を描かなければならない。
自然側の代弁者としての古の猟師ミラン。文明側の消費者としての騎士アクイラ。そして、サーガ世界の文明社会を築き上げた国家賢人のファウナとフローラ。メインの四人はこうして誕生した。
テーマがテーマなので人間、あるいはそれが築き上げた消費社会を悪として描き、その道が正しいか問いかけるストーリーラインに加え、ミラン以外の三人がそれぞれ消費社会に生きるが故の葛藤や悩みを内包し、既に在り方を見出しているミランに救われるという形式をとっている。
登場する白武式架空生物にしても、セトゲイノシシは資源確保のための森林伐採によって棲み処を追われ、魔犬は軍事的調教によって敵兵を殺すだけの不自然な技能を獲得し、カネオトシはそんな人類の尻拭いをするために巨大化するなど、一見すると何らかの形で人間に原因があるように描いた。
真相は終章でファウナが語った通りだが、だからといって人類が無実というわけではない。そもそも発端。次元の癒着は――あ!!?
そうだった。色々反省する点があるファウナの庭だが、一番反省すべきは、そもそもどうして「次元の癒着」が発生したかを明確に語らなかったことだろう。多くの読者とって唐突だったに違いない。
もともと〈大戦〉は世界観の核というか、別にちゃんとしたストーリーが用意されていて、ファウナの庭に組み込むにはあまりにも情報が膨大過ぎたため、作中では概要のみに留めた。もし、手直しする機会があるのなら、このあたりをもう少し説得力のあるものにしたい。
ちなみに、この「次元の癒着によって別の世界から何かが流出してくる」というのは、私なりの異世界転生・転移のメタファーだったりする。転生者が決まって討伐クエストがあるような危険なモンスターが存在する世界に飛ばされるのは、もともとそういう世界だったのではなくて、転生者に対する世界の防衛意識の産物で変化したんじゃないかなーとかなんとか。こじつけだが。
生き物の様子をできるだけリアルに描写したからこそ、ファウナが最後に見せた魔法という力の逸脱性を感じ取ってくれたのなら幸いである。
魔法はこの世界観の根幹である。意志を持って物質を変革する力。その意志とはどこから生じるものなのか。すなわち自分自身=エインセルである。
ファウナはミランと出会う前から魔法を使うことができたのだが、その時点では空間を切り離すような精度を秘めていなかった。ミランとの触れ合いの中でファウナが「
反省点は多々あるものの、私の世界観を象徴する目的は果たした作品になったのではないだろうか。
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