第12話 好きなもののあれこれ(3)
ギリシャ神話が好きである(結論)。
物書き候補の諸兄が神話、聖書の類に触れたのは中学生くらいのことと思う。
そこでだいたいギリシャ神話派かローマ神話派かに分かれると思うが、私は前者だった。
きっかけはウルトラマンガイアだろう。
私は幼少期から特撮が大好きで、ウルトラマンやゴジラ、メタルヒーロー、戦隊シリーズ(ただ、どういうわけか仮面ライダーは平成ライダーになるまで観ていなかった)などを愛好している。
好きなもののあれこれ(1)でも語った環境問題の一端はウルトラマンの影響もあっただろう。ウルトラマンには意外と社会派な内容が多いのだ。宇宙人が怪獣を倒すだけの番組と思わないでいただきたい。
だとしても、「中学生にもなってウルトラマンとか観るか?」と言われると辛い。すごく辛い。でも、それくらい分別がつくようになってから見る方が面白いんだよ、特撮ってやつは。
ウルトラシリーズでの個人的な最高傑作はガイア。次点でグレートだろうか。
後年、私はクトゥルフ神話を嗜むようになるが、今にして思えば、クトゥルフ的エッセンスが入っているガイアやグレートを観ていたからだろう。デガンジャの回とかな。
違う。特撮の話がしたいのではない。いや、環境問題と絡めて平成ガメラの話とかものすごくしたいのだけれど、今回は我慢しよう。
ウルトラマンガイアをTVで観ていた時、私は母に尋ねた。
「ガイアってどういう意味なん?」
「ギリシャ神話に出てくる神様やで」
と、即答するあたり我が母の教養の高さをうかがわせるエピソードである。
余談ではあるが、私のSF好きだったり神話好きだったりする部分は、かなり母の血によるものだと思う。いい母に恵まれた。
「どういう神様なん?」
「説明するのは面倒だから、あとは自分で調べろ」
と、一冊のギリシャ神話の本を渡された。
というか、ギリシャ神話の本が本棚に並んでいる我が家、最高じゃね?
普通の家にはなかなかないでしょ。このラインナップ。
その本で初めてギリシャ神話に触れたのだが、最初に心惹かれたのはヘラクレスとかアキレスなどの華々しい英雄譚ではなく、アラクネーに関する話だった。
アラクネーさんは優れた機織りで、女神にも負けないと豪語する自信家だった。
女神との織物対決を挑み、見事勝利したものの、出来上がったタペストリーの柄が神々を冒涜するものだったので、怒った女神さまから呪いをかけられて蜘蛛になってしまう。蜘蛛が誰にも教わらず見事に糸を紡ぐのは、彼女の生まれ変わりだからだ(かなり意訳)。
理解できないことに仮初の形を与え、安心しようと試みるのは人間の性だ。
人間が神を創ったというが、古代ギリシャの人々は「蜘蛛が美しい巣を作るのは何故か」という自然界の不思議に対し、そういう解釈をしたのである。
「ギリシャの人々には世界がこう見えていたのか、なんて瑞々しい感性なんだ!」と私は感動を覚えた。一気にギリシャ神話が好きになった。
神話とは民族の思想や世界の在り方を示したもの。
であれば、私はどのように世界が見えているのだろう。私が思い描く神話とは、どのような形をしているのだろう?
その疑問が、今でも私を独自世界観の完成にこだわらせているのかもしれない。
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