第8話 完結のあれこれ

 作品は、完結して初めて作品足り得るというのが私のモットーだ。

 私自身の執筆歴を振り返ってみるに、高校時代に人生初の短編を書き上げられたことが幸いしたのだろう。社会人とは比較にならないほど自由な時間がある中で、作品を完結させるコツのようなものを掴めたことは大きい。


 物語を最後まで書き続けられないケースは意外に多い。

 HP時代から懇意にしている物書きが何人かいたのだが、作品を完結させている人は非常に少なかった。


 もちろん、きちんと最後まで書き上げることのできる人はたくさんいたし、面白い完結小説もいっぱいあった。けれど、同じくらい途中で放棄された、俗に言うエターなった作品たちもいっぱいあったのだ。そういうのに限って世界観やエピソードは興味深かったので非常に残念に思う。


「書き始めるのは誰でもできるけど、書き終えることは誰にでもできることじゃないんだよ」。例によって友人Sの言葉だが、どれだけ時間がかかろうとも完結させられる癖を早めにつけたのはよかったと思う(面白いかどうかは別だが)。


 ちなみにHP時代に知り合った物書きの一人とは現在でも交流があり、友人Sが主催する社会人TRPGサークルで楽しくセッションをしている。私は彼がGMをした時にキャラロストをしたことがあった。せっかくのクローズダイスなんだから、もうちょっとこう手心をだな……いや、違う。そうじゃない。今は執筆していないようで残念だ、という話。


 完結できない理由としては、やはり一番は「飽きる」ことだろうか。

 飽きる理由は多々あるだろう。続きが思いつかないとか。プロット練り込み過ぎたせいで新鮮味が欠けて書くのが苦痛とか。せっかく投稿しても読者が反応してくれないからモチベーションが下がるとか。


 気持ちは良く分かる。すごくわかる。

 私もあまり精神的に強くはない。挫折もするし、易きに流れるし、甘言に乗っかったりもする。好きで始めた執筆も、何度筆を止めたかわからない。

 いくらコツがわかっていても、完結させるってすごくしんどいことだと思う。


 偉そうに講釈垂れている私も、一度だけ作品を打ち切ったことがある。

 全七章で構想していたところを、二章目で強制的に終わらせてしまったのだ。それこそ「俺たちの戦いはこれからだ!」といった酷いやり方で。


 理由は単純で、書いていて面白くなくなったからだ。これをあと五章も続けることに私の精神は耐えられなかった。だって横で現代伝記とか超面白そうなジャンルを書いていた友人Sがいたんだもん。「ラブコメとか書いている場合じゃねえ、私も現代伝記書きてぇ!」となってしまったわけだ。


 これは私の汚点としてずっと残ったままだ。

 今でも時折、忘れていないぞ、とばかりに友人Sから指摘される。


 でも、それでいい。

 そのおかげで、もう二度と途中で投げ出すもんかと踏ん張れるから。どれだけ時間がかかっても、書き切ろうと頑張れるから。

 ――ちなみに、このエッセイは別な。あと気まぐれ更新短編集も(台無し)。


 作品を、完結まで書き続けることは難しい。

 だからこそ、無事完結した作品には素直に称賛の言葉を送りたいし、そうでない作品にも完結できるように励ましてあげたいと思っている。


 そして気づいた。

 この三日で計一万文字以上のエッセイを書いた。この速度をどうして現在連載中の作品に活かせないのか謎である。

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