第9話 お金についてのあれこれ

 私もそろそろ資産運用とかが気になる年頃ではあるのだが、運用する元手がない。社畜と言うのは基本的に安月給なのだ。働けば働くだけ給料が出るようなところはブラックではない。自分の時間がきちんとお金に変換されているのだから等価交換だ。


 ブラックのブラックたる部分は、善意を搾取するところにあると思う。

 日本国憲法は国民を性善説、善い存在であると仮定した内容であるが、そういったものは性悪説側の人間と相性が悪い。めちゃくちゃ悪い。優しい人間はいつだって誰かから利用されるものなのだ。断り切れない私も悪いのだが。あ、別に私が優しい人間だというわけではありませんよ。


 特に昭和世代の「苦労している俺かっこいい」という風潮は見ていて辛くなります。自分勝手に生きろとかそういうことではないけれど、もう少し自分の人生をより良いものにする努力をしていいのではないでしょうか。


「我が子から幼稚園に送り迎えしてくれる人」と認識され始めていることに気づいていながら、それでも誰よりも残業する我が上司よ。それって家庭崩壊の前兆ではありますまいか。誰よりも優しく、一生懸命仕事するあなただけに、そのような結末になるのは心苦しい。


「所詮、男はATMよ。亭主元気で留守がいいなのさ」とニヒルに諦観している同僚よ、定年退職した後のことを考えていますか。三十年後、あなたの居場所は家庭にあるのですか。まだまだ自己改革できる年齢でありながら思考を放棄し、長い物に巻かれ、大樹の陰にいるだけでいいのですか。分相応という言葉を「変わらないこと」への言い訳にしていませんか。


 二次元の嫁はいるものの、社会的には独身である私では、あなた方の境遇は完全には理解できないかもしれない。が、今のあなた方はとても幸せそうに見えません。


 そう言うと、あなた方は否定するでしょう。そんなことはない。俺は幸せだと。しかし、そういう時ってだいたい感覚麻痺っているから。周囲の言葉に耳を傾けないのがその証拠だから。自己認識と他者認識を相互に照らし合わせて現実を認識する人間が、自己認識のみを信じている時点で病んでるから。


 お金がないと生きていけないのが現実ですが、お金に縛られて生きる意味を失うのもどうかと思う。そこにエインセルはありますか。確固たる自分自身はありますか。私がこの世界観に古い妖精の名を与えたのは、そういうことなのかもしれません。


 ――約1000字も使ってしまいましたが、そういうリアルなお金の話がしたいんじゃないよ!?


 異世界ファンタジー書きの諸兄は、作中のお金についてどのように考えていますでしょうか。


 真面目に異世界の経済について考えると、頭がこんがらがる。

 私の知識不足、勉強不足とは思いますが、現代の人間ですらよくよく経済の本質を掴めていないのだから。こちとら専門家じゃねーんだよ。


 ギルとかゴールド、ガルドといった金の単位も架空のものにすることで、ぐっと雰囲気が増したりもするが、多用しすぎると読者が「うっ……」となってしまう危険があるのは度量衡の回でも話した通り。


 なので、私の世界ではあまり具体的な単位、金額は出さないことにした。

 金貨、銀貨、銅貨の三種類にして、それぞれ1:10:100くらいの比率で有り難がっているという、なんともざっくんばらんな貨幣制度である。


 モノの値段についても結構いい加減だったりするが、とりあえず私は「銅貨一枚100円くらいじゃねーかなぁ」の認識で計算している。

 つまり、金貨一枚10万円。銀貨一枚1万円。銅貨一枚100円。


 例えば、「ファウナの庭」にてファウナがミランを雇うのに提示した金額である金貨十枚は100万円くらい。しかも前金。なので、ファウナは懐にもっと持っていると思われる。そんな金額を個人に持たせるの危険だろうとか言いっこなしでお願いします。


 また、「炊き立てご飯」では悪徳商人が古銭刀に対して「じゃらり」と重々しい音のする額を提示した。中身が金貨だと仮定すれば(ざっくり読み返したところ明記していなかった)百枚くらい入っているのではなかろうか。

 だとすれば、1000万くらいか……まあ、私的には妥当だと思う。日本刀の国宝などは億の値がつく。重要文化財でも何千万クラスだし。

 というか、今更ながらお前ら金貨を袋にまとめて入れるなよぅ。削れるだろーが。変造貨幣って思われるぞ(過去の自分への戒め)。


 ちなみに私の感覚では、異世界における刀剣というのは、現代でいう車に相当すると考えている。

 ちょっと興味があって、現代で日本刀のオーダーメイドの価格を調べたことがあるのだが、だいたい材料費・技術料込で150万~300万円くらいだった。それくらいの値段で、仕事道具としての側面があるものと言えばやはり自動車だろう。


 時代劇でお侍さんが刀の手入れをするのも、我々が自家用車を洗車したり、メンテに出したりする感覚と思えば納得しやすいのではないだろうか。


 となれば、刀一本当たり金貨10枚くらいが妥当と思われる。

「炊き立てご飯」にて語られた中古刀の最安値は金一枚以下、つまり数万円。

 これはなかなかリアルな数字だと思われる。現実世界でも、保存状態の悪いもの、銘の無いものは10万円以下で真剣が購入できることがあるし。まして、骨董としての価値が付与されていない当時では、こんなものではあるまいか。中古車だって状態を気にしなければ数万円で買えるものもあるし(車検とか保険とかで後から膨大な金がかかるらしいが)。


 というよりも「僕」の小遣いの額よ。このぼんぼんめ。


 趣味が祟ってどんどん数字が目減りしている通帳を眺めながら、こういった不毛な設定を考察するより、もっと美少女たちの絡みを研鑽した方がいいのではないかと思わなくもない今日この頃である。

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