Log No. 1 まとめ

1-1 ~ 5


 ワイルドリッチを探さなきゃいけない。この録音は俺の行動、または言動を記録するためだけに行っている。またこの録音によってこの使命から長く離れた場合に備えてその日その日の進捗を思い出せるように記録している。またはなんらかの事件のおかげで裁判になった時に備えてだ。とにかく、その記録の第一号がこのログになる。


 ワイルドリッチを探せ。まずこの使命は降って湧いたものじゃない。ちゃんと理由がある。七年前のスーパーレンジャーズ大戦のことは覚えているだろうか? まあ、忘れている場合に備えようと思うが。その大戦は七年前の七月と八月の合間くらいにこの惑星、テラ型第十一銀河団第六惑星ノラで起こったある戦争のことだ。掻い摘んで言ってあの戦いはかなり熾烈だったと言えるだろう。


 この宇宙の様に暗雲たるダークマターの如く、とある巨大なシンジケートが三つ存在した。まず「ゴールドブロッケン」。こいつらは主に麻薬の密輸、販売と惑星の実効支配。それから次に「アフターザモノリス」こいつらはカルトの変態で惑星の実効支配を目論んでる。最後に「タイムオブクライム」。こいつらはまあ、盗み、殺し、その他の暴力なんでもござれのクソ集団で惑星の実効支配を目論んでる。まあ、他にもあるし、そういったシンジケートは数えればキリがない。それこそ、一つの惑星に複数ある場合が多いので惑星の数以上になるだろう。だが、それはどうでもいい。兎に角、この三つの巨大な組織にはある共通点があった。それはこの惑星ノラや他の惑星に常駐している惑星警護集団の存在だ。何? 惑星支配? なんの話だ? 兎に角、この時は「スーパーレンジャーズ」なんていう呼称はない。いわば、レンジャーだった。惑星を襲撃し、その手中に収めることを生業とする集団とそれを追い払う(それも五人とおまけだけで)レンジャーが独立して戦っていたわけだ。するとどうなると思う? もちろん。三組織は手を組んだ。手を組み、レンジャー達を各個潰しに走ったわけだ。一つ二つ、潰されたレンジャーは……ハハ。ここで俺の登場になった。この時、俺は一人この星である男と戦っている最中だった。で、その男が……。そう、ワイルドリッチだ。言っておくが野生的な金持ちじゃないぞ。野性的な「リッチ」だ。


 リッチってえのは、知ってるだろうが念のために。簡単に言えば不老不死化した魔法使いのことだ。魔法使いがまず厄介な存在なんだが、そいつが不死化するんだ。これ以上迷惑なことはない。中でどこを撃とうが奴が倒れることはないわけだ。おまけにあいつは土人形を作るのが大得意な野郎で俺から逃げる際には必ず作って逃げちまってた。俺が奴を追い、戦って、あいつが土人形を作って逃げる。俺は土人形を倒す羽目になる。そういう関係だった。で、あいつは逃げる最中にチョクチョクこのシンジケート達と邂逅していた。つまり、奴はこの三組織を纏める手伝いを間接的にやっていたんだ。恐らく無意識だろうがな。奴は俺か、誰かを困らせる愉快なクソ野郎だった。で、三組織は一つになったわけだが、ここでびっくりしたのはレンジャーもまた一つになったことだ。これが驚いたことに俺が奴を追っていたおかげでレンジャー同士の繋がりができていたことだった。つまり、奴はレンジャーにもちょっかいをかけていたもんだからこっちも知らず知らずの内にレンジャーの橋渡し役になっていたらしい。で、戦いの行方といえば、こっちが勝った。


 戦いは実力が拮抗していてむしろ向こうが優勢だった。この時、こっちは(六レンジャーとおまけで)三十七人で向こうは……戦艦やら何やらいっぱいだ。奴らお得意の人型宇宙人と異形の何か。俺たちはよく戦ってたよ。レンジャーの名物兵器合体ロボットが目白押しで戦いは昼夜を問わず、終わりが見えなかった。そこであるレンジャーが時間を超えられることに目を付けた俺は迷わず過去に向かうことにした。過去の遺物だってある瞬間には核爆弾の様に……おっと。そう、聖剣エクスカリバーの様になる。単純にいうと、俺は過去のレンジャー達を現代に呼び込んだ。時空連続体に関する危うい問題に出くわすところだったが、ある意味で、俺は時間を正した。だが、それはまた後日。兎に角、俺は呼び込んだ過去のすべてのレンジャー達で総力を挙げて三組織の連合をぶち破り三組織はそれぞれ母星に逃げていった。ここから、向こうの星を攻めちまえばよかったんだ。だが、気高きレンジャー達はこの後、奴らに逆襲せず、専守防衛を貫くことになる。スーパーレンジャーズは後にエフェクションズシンキングとしてノラの実質的な支配者になった。


 それから、俺は大戦の功労者としてエフェクションズシンキングの調査顧問に「された」。されたというのはそれが押し付けられたものだからだ。まず俺はノラ人じゃなかった。そうテラ人だ。つまり奴らからすれば異星人だ。そして、俺は船を持っていた。ノラの衛星軌道上でステルス状態だった我が愛しの船。ドランカーズマーケット(酔いどれ市場)号。こいつが。いや、連中はいつの間にかこいつを人質に取っていた。おかげでワイルドリッチとの戦いがレンジャーのために星々を調査することに変わり、その頻度があまりに多く、あまりにも酷使されるもんだから段々奴のことを忘れていってしまった。その間のことを掻い摘んでいうと、今の巨大な組織エフェクションズシンキングの隆盛をまんま語ることになる。どうかネット検索でもしてくれ。その功績の半分以上に俺が関わっている。覚えておいてくれ。ああ、俺は思ったね。つくづく、レンジャーはクソだ。


                                  続く

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