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 ヒラは俺の肩に手を置き、「分かっているだろう?」と言い、次にはこう抜かしやがった。


「君はフォーミラレンジャーの隊長たるレッドを殺害した」


 で、ガチャリ。開いた口が塞がらない間に奴は俺に手錠をかけた。それもエルマニック製のダイヤ手錠で、こいつは最重要犯罪人にのみ着けられる。それで、奴は呆気にとられた俺の目を見て、続きを話した。


「我々は彼、レッドの殺害現場を十分に検証した。レッドの上半身と下半身を分断されていた。装甲服ごとね。そんなことをできる敵はいない。それができるのは『アンリミテッド』を持つ君だけだ。そうだろう?」


 確かにそうだ。レンジャーの装甲服は一見してピチピチのレオタードだがその紙装甲の中身は最新技術の塊だった。あらゆる物理衝撃を和らげるアブソープオプションにHUD(ヘッドマウントディスプレイ)には補助AIが搭載され、衛星ネットリンク(つまり、ヨシキリとの常時接続)やら、目標徹頭徹尾追尾機能やら、分子解析機能やら各種サポート付き。スーツの中で粗相をすることだって可能だ。そして、対断裂性強度は恐らく宇宙に存在する物質の中でもピカイチだろう。俺だって破いたことも、ってか試そうなんて思ったこともない。見込み捜査なのか? 随一の科学力を持つ非営利組織が? ……思ったら言葉が返ってくる。


「だが、私たちはその可能性を一旦捨てて捜査した。君がATGの後輩を殺すわけがない。それで事件の痕跡を見つけることにした。隅から隅までね。それで何が見つかったと思う?」



「泥の山だ。そうだろう?」



                                  続く

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