九話

ああ、化け物だった。




竜が噛む。


師匠が斬る。



また噛む。

また斬る。



ただこれだけの。こんな闘い方、誰もやらん。


単純な作業に聞こえるだろうがのう…


皆怖くてやれないじゃろうなあ。





そして半時間後…


師匠は足を噛みちぎられた。




また半時間後…


竜は背中の筋を切られた。



体はもう、両者まともには動かん。


こんな短い時間にじゃ…




真っ白な雪の中で…


はいずり回りながら、また殺し合う。



噛み…斬る…



腕を食いちぎられ…頭を潰され…




師匠はよだれを垂らし、笑っておった…



竜もまたよだれを垂らし…

体を怒りで紅く染める…




這う事しか出来ないのにの。


あれから五時間も、喧嘩をしてるんじゃぞ?





引く事を知らぬ…

この雄同士の闘いを…


横から潰したのは、クソガキのわしじゃった。




何も判らぬわしは、ただ師匠の為にと…


後ろから竜の首を落とし、決着を付けた。





同時にな。


師匠の男を…


男の腹にある侠を…



ガキの浅はかな考えで潰したんじゃよ…

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