第106話 雪女達は

少し時間は遡り、雪女一族が寒冷地帯に住居を構え、新生活が安定した頃の事。

「雪女王様、この地は良い所ですね!!」

「冷気を常に取り込め、食事の必要が殆ど無い天国ですね!!」

「ふむ!そうじゃな!!この地でならば、一族の繁栄は約束されたようなものじゃ!!!」

「そうですね!30人にまで減った一族も、この地で有れば増加するでしょう!!」


「雪女王様!雪ん子12人と雪女郎8人は一緒に暮らすと、他の地に向かいました」

「昨日私の所に挨拶に来た、少し離れた所に理想の住居場所を見付けたそうで、別の集落を作るそうじゃ」

「寂しくなりました」

「この地の状況が分かるまでの、緊急処置共同生活であった、落ち着いた今は安住の地を求める別種族じゃ」



理想の安住の地に雪女、雪ん子、雪女郎達は、一時の平和に満喫して居た。

しかし、平和は長く続かなかった。


雪兔と名乗る、二人の狩猟者を招き入れた事が発端となり、雪女の集落は壊滅、雪女王と25人の雪女達は、慰み者奴隷として雪兔達に連れ去られた。

逃げ延びたのは、冷却れいき姫と三人の護衛だけだった。

冷却姫達は、雪女郎達の集落に逃げ込み、事情を知らせた。



凍える旅人に振る舞う雪酒を、雪女達は造り出す事が出来る。


原住民とのファーストコンタクトに、失敗しないよう、二人の雪兔を歓待し酒を振る舞って、雪兔は満足して帰って行った。


人には警戒心をもって居る雪女達では有るが、相手は異形の兔であった為、緩い対応になってしまった。

相手が人より質の悪い狂暴な種族とは、思いも寄らなかったのは、住み良い環境による、気の緩みだったかも知れない。


マンバ達の救助が無ければ、雪女一族は滅んで居た事でしょう。




「ヒミコ!何が有ったと思う?」

「マンバ様、体毛からの私の推測ですが、兔人族だと思います。

足跡も吹雪けば消えて仕舞うので、人海戦術で辺りを調べて見ては?」

「兔人族?」

「以前苦い経験が有りまして·····」

猫又ヒミコは、戦乱の異世界で、ライ兄と共に戦った兎人族の異常さを思い出して居た。



「マンバ様!!この先少し行った所に、雪女郎達の集落が有りました!!盂羅に事情聴集を任せ、ご報告に参りました!!!」

「奈緒王!!でかした!!!」


奈緒から報告を受けて居ると、盂羅達が雪女数人を連れて、帰って来た。

「マンバ様!!無事な雪女が居りました」

四人の雪女が。

「大王様!!母を、雪女王をお救い下さい!!!」

「母?お主冷却か?」

「はい!冷却です!!」

「冷却姫!大きくなったのぅ!!」


冷却の話では、雪兔と名乗る十尺程の筋肉達磨に襲われ、母達が連れ去られたとか。

襲った雪兔は約1000人、連れ去った方向は、大陸中央部だった。


マンバは一寸族に命令する。

「ホシとステルス隊!!雪女達を救出に向かう!!着いて来い!!」

「他の者は集落の修理!!」


「「「「「おーーーうっ!!!」」」」」


南極点に近い所に、氷のブロックを積み上げ、ドーム状の建物の巨大な集落が見えて来た。

「ホシ!!数人連れて、探索して来い!!」

「はっ!」

「キヨは3人連れて、あの建物の調査!!闇に溶け込め!!」

「お前とお前、私に着いて来い!」


ホシ達は、急降下して行った。

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