第101話 魔神タマモ

何もかも、桁外れに強力になって居る、不思議じゃ?


··········そうか!!天照大神様に、転移の時加護を頂いたのか!!!

「グフッグフフッ、神の加護か!!我は真、魔神になったのか!!」


玉藻は思案しながら、城内の探索をしている。

「玉藻様!!宝物庫のようです」

お供のコンキチの声で、深い思考から戻された。

「おうっ!!あのプルプル領主、溜め込んで居るのぅ!!」

金銀の装飾品に宝石類、金貨の山じゃ!!!


「魔神タマモなら出来る!!」

玉藻は、打出の小槌を想像し、金貨だけを取り込むよう思った。

「ありゃ?玉藻様!突然宝物庫がガラガラスカスカに?」

「我が、金貨を全て収納した!!」

「はぁ?」

「コンキチ、コンキリ!!打出の小槌は知って居ろう!!」

「はい!!おとぎ話の「打出の小槌」なら知ってます」

「お前達にも出来る!!やってみよ!!!打出の小槌は収納出来る!!小槌をもって居るつもりになり、宝石を収納するのじゃ!」

「「·····出来ません!!」」

「お前達も、天照大神様から加護を授かって居る!!出来んのは、思いが足らんからじゃ!!」

「「思いですね!!」」

ずる賢いイメージの狐だが、玉藻の配下は抜けた所の有る、素直な性格の者が揃っておった。


暫く時間は掛かったが、お供の二人も打出の小槌が使え出した。

これで確信した、我は魔神になった、化け狐どもは魔神の眷属じゃ!!

思い込みが強く、単純思考の玉藻は、マンバよりこの世界への適合が早かった。


領地を転移で回り、地区の世話役に金貨をばら蒔いて回った。

「新領主、魔神タマモである!!この金で腹一杯飲み食いせよ!皆への祝儀である!!!」


貧民街に入った。

ここで金をばら蒔くと、暴動が起こるじゃろう。

予め買い込んで来た、パンを配ってやった。

集まって来た者を一列に並ばせて、老人幼児に係わらず、全員に一個ずつじゃ。

「我は魔神タマモ!!新領主じゃ!!」


適切な施しは、人心を掴む。

過度の施しは、人心をだらくさせる。

「人材不足である!貧民でも、遣る気のある者は、誰でも適材適所取り立てる!!!」

だめ押しじゃ、集まった薄汚れた民衆の顔が輝いた。


「ありゃ?変なのが居る?」

汚い身なりの民衆の中に、ボロ布を腰に巻いただけの、薄汚れた3人の子供が気になった。

「そこの3人!こっちにこい!!」

何をされるのか、恐る恐る子供達がやって来た。

警戒心を和らげる為、我も耳と尻尾を出した。

我の姿を驚いた様に眺め、子供達は泣きながら我に抱き付いて来た。

この子供達、尻尾は一本じゃ、猫又様では無い!

「お前達は化け猫か?」

「違います、僕たちはケトシです」

「ケトシ?とな?仲間は何人居る?」

「生き残ったのは、3人·····」

「そうか、異形には住み難い世じゃな·····着いて来い!!我の眷属にしてやる」

一瞬意味が解らん様子で、戸惑って居ったが、くしゃっと顔を歪め、やがて涙の笑顔に変わった。


名は無いと言うので「ハム」「ハミ」「トミ」と名付けてやった。

妖怪では無さそうじゃが、初めての異形の仲間を見付けた。

「お前達、我の眷属になったからには、最低でも狐火は射てる様にしてやる!!こんなのじゃ!!」

我は空に向け、弱い狐火を発射した。

「「「教えて下さい!!!」」」

おっ食い付きが良いな。

「火打ち石で火を着けた事は有るか?」

「「「はい!!」」」

「火が着いた瞬間を思い出せ!!この様に!!」

我は拳を握り、狐火を出した。

子供達が真似をするが、簡単には·····「なんと!!!出来て居る!!!」

我は凄い掘り出し物を、手に入れた。


途中古着を買い、城に戻り3人に入浴させた。

身体を洗い、古着を着たケトシ達は、輝く様な綺麗な子供達じゃった。

透ける様な白い肌に銀髪、一見アルビノの様じゃが、瞳が碧じゃ。







元々玉藻は、能力的に優れた物が無かった。

ふわりと漂う浮遊、急場を回避する転移位しか得意な妖術を持って居なかった。

一番優れた能力は、少しの真実を嘘で肥大させた、ハッタリと言う情けない物だった。


例えば、討伐軍勢に取り囲まれたなら、上空に転移、浮遊に切り換え、狐火を降らせる、討伐隊が怯んだ所で。

「我は争いを好まん!今まで人に害を与えた事も無い!!!

全員焼き殺す事は、我には容易い!!されど、我は人と争いたく無い!!これからも人に害を成さん事を誓う!!勇猛なる討伐隊のお歴々れきれき、引いてはくれぬか?」

相手のプライドを、損なわない巧みな話術を駆使した。


軍勢の、少なからずが狐火で火傷をおって居る、焼き殺される恐怖、劣勢を感じた所に、玉藻の言葉、討伐隊とすれば妖怪玉藻に、「人に害を与えない」と言質を取った、との大義銘文が出来た。

大手をふって凱旋出来る口実だ、喜んで討伐隊は帰って行った。


妖艶で美しい容姿も加えて、臨機応変な話術で急場を凌ぐ、得意技である。


貧乏そうな旅人が、野党に襲われ身ぐるみ剥がされて居る所を、駆けつけ裕福そうな野党を全滅させ、遺体から剥ぎ取った金品を、少し旅人にやって、逃がしてやった事がある。

油断して居った野党は簡単に殺せ、大儲けした玉藻は、更に一工夫した訳じゃ。

与えてやった金品を元に、貧乏旅人は商人になり、かなりの成功を修め、玉藻様を崇め、事ある度に我の美しさ善行を広めてくれた。

変化じゃが、美女はとくじゃ。



今までの事を思い出し、苦虫を噛み潰した様な表情だった玉藻は、不敵な表情にかわった。


「こそこそ生きて来たが、今の我は無敵の魔神タマモじゃ!!!」

魔神の法術を神術と名付け、山姥が見せた妖術、鎌鼬氷雨を習得、浮遊から旋風つむじかぜに乗って、飛行まで出来るようになった。


配下の化け狐達も、狐火の威力が増しておる、全員に鎌鼬と打出の小槌収納を習得させた。

化け狐達は、狐火に変化し旋風に乗って飛行して居る。


習得に手間取る化け狐をしり目に、3人のケトシは簡単に覚えて行く、転移以外は全て習得しおった。

全てに置いて、最後にやっと出来る様になるのは、ハムで唯一の男の子、習得には男女差が有る様じゃ。


「準備は万全じゃ」玉藻と眷属達の大陸制覇が始まった。

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