第53話 ダンジョン村

魔法が存在しなかった世界で、魔法攻撃しか有効手段の無いスライム、ある意味無敵じゃな、それから攻撃の届かない高所から、麻痺の毒攻撃で弱らせ血を吸い尽くす吸血コウモリ、これらに守られた形で怠惰に暮らしていた、無能なゴブリン達に生き残る闘いが出来るはずも無く、殆んど無抵抗で殺戮されて行った。


金塊を落とすのも、ゴブリンの不運に拍車を駆けたようじゃ。

皆、キャッキャ、ワイワイ楽しそうに瞬殺しては、金塊を拾っておる。



何も現れない森が延々と続く、ゴブリンを絶滅させたようじゃな。


ポップするのが、一日かかるのか数日必要なのか分からん、先に進む事にする。

森を抜けると、岩山が行く手を塞ぐ。


少し飽きてきた所じゃが、流石迷宮!!

多くのオークが現れた!!


「これが、有名な豚顔のオークか!!!」

背の目が飛び出し、オークを引き千切って行く。

クミは鎌鼬を自身に纏い、オークを蹴散らす、クミの通った跡には切り刻まれたオークの血煙りが舞う。

魔法攻撃に飽きた、オロチとチトセは両手に風の刃を発生させ、オークを切り裂いて走り回って居る。

スラッピはオークを取り込んでおった。


·····暇じゃ。

オークは、金塊と日緋色金を落として消えた、アイテム回収要員か!!わしは!!!


オークの住居洞窟には、捕らえられ慰みものにされた、エロフのクッコロ騎士は·····居らんかった。

定番じゃろう!!河原の鬼どもの嘘つき、期待しておったのに·····


オークの洞窟の奥に、下に降りる階段があった。

そろそろ、歯応えのある魔物を期待しておるぞ!!



降りた最下層、迷宮内と思えない空間が、わしらを迎えた。

迷宮内のはずじゃが、柔らかい陽射しの、のどかな田園風景じゃ。


「ここが迷宮の最下層か?期待外れの迷宮じゃったのぅ」

「母様油断大敵ですよ!田畑を維持して居る存在がいるはずです!!」


田畑が途切れると、一面の花畠が広がった。

赤や黄色、ピンクに薄紫それに白、大輪の花は一つも無く、風にそよぐカスミ草のような可憐な小さな花びらの花畠が続く。


懐かしさを感じるが、思い出せん、背の目を見ると涙を流しておる。

「背の目!美しい花畠じゃが、泣くほどの物か?」

「母様も泣いて居るじゃ無いですか!!」

指摘されて初めて気付いた、何故かわしも涙を流しておった。

ほほを伝う涙に驚いて、わしは乱暴にゴシゴシ手で拭う。


「母様!600年前、一夜にして絶滅したコロボックルの花園·····」

「そうコロボックルじゃ!!!懐かしさの原因が解った!!」


花畠を通り過ぎ、なだらかな坂を降ると、目測を誤るような家並みが見えて来た。

「母様、集落に近付いて居るはずが、凄く遠くにあるように感じます」

「奇遇じゃのぅ!わしも、少しも近付いた気がせん!!」

クミが、「マンバ様、眩暈がして来ました!!」

オロチは「マンバ様家の寸法が無茶苦茶小さいのでは?」

「おう!オロチ正解じゃ!!建物が100センチ程のドールハウスじゃ!!!」

普通の家を想定していた皆が、想定外の小さな家に感覚を狂わされて居たようじゃ。

改めて見直すと、玩具の町並みが広がっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る