第51話 1の神

小集団で、隠れ住むピクシー達が、続々集まって来た。

リカの王国は、1000人を越える人口に膨れ、まだまだ増加中。


50人程の元住民は、殆んど神術が使えだした。

子供達の多くは、飛行も出来て居る。

リカは、ゼムと共に国の基礎作りを励んでおる。


「ゼム、農業に関して、まずは育て易い芋を··········工業に関しては、内職工場を建て手工業から·····ピクシー族能力向上の為、教育の制度化·····」

リカが的確に指示を与えておる、本当にリカは優秀じゃ。

「リカに負けては·····マンバ神様、鳥人王国に行って来る!!」

言い残し、ベラが飛び立って行った。


「しょうが無いのう、リカも思うままに建国を進めておれ」


山には、背の目とオロチ、チトセとクミで向かう。




登山が極めて困難な為、登る人がいないだけで、別に入山禁止はされて居ない。

1の神と、信仰を受けて居るだけに、清浄な霊気を感じる山じゃ。

いわゆる、パワースポットじゃな。


「母様!日緋色金の鉱脈が有ります!!金鉱脈まで!!!」

「そうか!大地に関しては、背の目が一番じゃな!!」

我々妖怪の邪気を斬る、破邪の剣の材料が日緋色金·····忌まわしいはずじゃが、不思議じゃ!!今のわし達には全く影響を与えん。


この世界に転生して、邪神の邪が消えて、神性だけが残ったのか?

日本の霊峰富士と同じ、この清浄な霊気の1の神、わし達が以前のように妖怪ならば、弾かれ踏み入る事が出来んはずじゃ。


此処いら辺は、裾野には違い無いが、1の神の噴火に捲き込まれた各種鉱山のようじゃ。


テクテク歩いて登ると、何日かかる事やら「皆、飛ぶぞ!!」

登山を楽しみに来たんじゃ無い、調査に来たんじゃ。

果しない登り坂に、うんざりした訳じゃ無い、効率の良い調査じゃぞ。



1の神三合目。

既に木は殆んど生えて居らず、高山植物が繁っておる。

「皆、あそこに降りるぞ!!」

風穴のように見えるが、入り口がモヤっとして、異様な気を感じる。


「[容赦無い殺戮に、次が獣耳娘、おまけにダンジョンまで、読者サービス過剰かな?]」

「マンバ神様?読者サービスって??」

「いや、何でも無い、犬時ちゃんの独り言が、聞こえた気がしただけじゃ」


「母様、モヤモヤした洞穴、これは何ですか?」

「濃い霊気が溜まって、迷宮になったようじゃな」

「マンバ神様、ダンジョンって何?」

「はっきりした事は不明じゃが、過剰なパワーで場がねじれ、異界に繋がった所じゃ」


河原の鬼が、言っておったダンジョンは、いろんな形態をしておるそうじゃ。


「わしと背の目が先頭、クミは真ん中、オロチとチトセは後方を守れ」

「「「「はい!!」」」」



モヤっとした入り口を通る時、軽い眩暈にふらつきを感じた、異界に転移したようじゃ。

迷宮内は、広々とした草原が続いて、太陽がさんさんと照りつけ、そよ風が吹いておる。

後ろを見ると、草原の空間に丸いモヤモヤが浮いておる、異様に目立つ出口じゃ。


薄暗い洞窟に入ったはずが、眩い草原じゃ、皆言葉を失い観入っておる。


「アチッ!!いてぇ!!!」

所々に、小さな水溜まりが見えておったが、背の目が脚を取られたようじゃ。

躓いたのか、転がって痛がっておる。

良く観ると、信じられんが、水溜まりに脚を盗られた!!

背の目の右足首から先が無くなっておる。


「母様!この水溜まりに足首を喰われた!!」

「皆、気を付けろ!!唯の水に見えるが、これが有名なスライムじゃ!!」

スライムは、捕らえた獲物を、ゆっくり消化吸収するはずじゃが、ここのスライムは強烈じゃな、捕らえた瞬間消化しよる。



流石わしの息子、背の目の足首は既に生えており、予備の靴に履き替えておる。

「マンバ神様、どうします?」

「そうじゃな、オロチ鬼火で攻撃!!」

チトセも、スライムに鬼火玉を投げておる。

水溜まりみたいなスライム、斬っても切れんじゃろうし、殴れば手を喰われる。

凍らせるか焼くしか、手は無いじゃろう。


黒い塊を残し、スライムが消えた。

塊を手にした背の目が興奮して言った。

「母様、銅と鉄です!!!」

「このダンジョンは、魔物を倒すと鉱石を残すのか·····金とか銀も残すかも知れんぞ!」

「金!!」「銀!!」キラキラした目で、オロチとチトセが言った。


皆は、がぜん張り切って、スライムを焼き尽くしておる。


大量な鉄が残った、折角じゃから鎌鼬と鬼火で皆の刀を造った。

木刀のような、変哲の無い形じゃが、切っ先と刃には空気中の炭素で鋼に、峰の部分は軟鉄のまま、折れず曲がらず良く斬れる刀が出来ておる、繰り返し鍛えて居らんから、其なりの刀じゃが。

抜き身で鞘は無いが、皆、架空袋が使えるから、問題無い。


「プ、プル、プル、ボ、ボク、ワルイ、スライムジャ、ナイヨ·····」

隠れていた、スライムが話しかけて来た。

鬼が言ってた有名な台詞じゃ。


「お前!日本人か?」

「エッ?テンセイシタラ、スライムダッタ、ケン??」

「転移じゃ無く、最下層に転生、御主余程悪い事を繰り返したな!!!」

「ソレホドデモ··········シタギドロ?トウサツ?ノゾキ?ストーカー?」

「女の敵!!!生きる価値無し!!死ね!!!」


「マ、マッテ!!バッタ二、ヘンシンデキル」

スライムはバッタに変身した。

バッタからピクシーの男の子に変身して。

「ピクシーにも変身出来るよ!!」

「き、きさま!!バッタは兎も角、ピクシーを喰ったな!!!やっぱり死ね!!!」


「わっ!!わぁー話せば分かるよーー!!!」

鬼火を、ヒラリヒラリ交わしてスラッピが逃げ回る。


オロチ達は、訳が分からず、呆れて見ていた。

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