第47話 ドラゴン山脈

精霊王国、国王ニオルが教えてくれた、純白に緑の瞳の二人はドリアード族で、鱗ちゃんはドラゴン族だそうだ。

しかも黄金と見紛う山吹色の鱗は王族の証しとか、名無しは可哀想と、オロチと命名しオロチも喜んで居ったのに、ヘビじゃ無くてドラゴンとは。


もしかして、保留にして居った北西の大森林、西のドラゴン山脈、

鉱石採掘が出来るかも·····


思い立ったら即実行じゃ!!


オロチちゃんも優秀で、飛行も出来る、勿論鬼火に氷雨、鎌鼬に時空神術架空袋、威力もかなり強い。

「オロチちゃん、同族に会いに行こう!!」

「·····私の、同族?」

やっと乳離れした、赤ちゃんの頃拐われ奴隷にされたオロチに、ドラゴン族の自覚はない。

「両親に会える?」

「親に会える保証は無いが、行って見る価値はあるぞ!」

「何か、怖いけど、行く·····」


前日の内に、セノメ王国に入る、大勢同行を希望されたが、背の目だけ同行を許す、国王の帰還に歓声で迎えられた。

帰還後直ぐに、背の目は代官達に取り囲まれ、執務室に行ってしまった。

わしとオロチは、王宮特別室に通され、歓待されたが、暇じゃ!


国王の母親と言う事が知れ渡り、歓迎はするが対応に困って居るようじゃ。

事情を知ったオロチは

「えぇ~っ?マンバ神様は、そんな幼いのに、セノメのオジサンのお母さんなの??」

「背の目が幼児の頃、種族間のトラブルで可哀想な目に会うて、わしが引き取り育ててやった」

「何時の事なの?」

「700年程前の話じゃ」

「な、700年!!!」

「この世界とは別の世界の出来事じゃ」

「マンバ神様、凄い!!」


する事も無いし、誰も来んので、オロチに転移を教えた。

広い特別室の隅への、短距離転移を難無く修得しおった。

「架空袋より簡単でした」

「そう·····なの、か?」転移なんて高難度の術、誰にでも出来る物じゃ無いが。

(この子も超天才?それともわしの個人指導のせい?)


他の種族とのバランス、完全に崩したかも、精霊種のみ単独最強種族に育ててしまった。


退屈な時間がやっと終わり、背の目が迎えに来て、晩餐会、贅は凝らして居るが、背の目以外は話し掛けて来ん。

背の目は気を利かせて、母様と呼んでくれるが、わしの見てくれから、会場の皆は未だに半信半疑の様子、其より国王を奪った存在として見ておる。


温厚な背の目も場の雰囲気を察し「母様ドラゴン山脈に向かいましょう!!」と声を荒げた。

「ここには二度と戻らん、無礼者共!!!!」

「母様、マンバ神様に見放されたら、この王国も終わりだ!!」

「以後王国名からセノメを削除しろ!現時点を持って私とは無関係の国だ!!」

慌てて引き留める代官達を振り払い、背の目と王宮を飛び出した。


風に乗せた背の目の声は、国中に響き渡る。

「私は元国王の背の目である、現時点を持ってこの国は私と無関係の国になり、国名からセノメを削除した!!在住の精霊種諸君、住み難くなる事が予想される、速やかに精霊王国に移住する事を勧める!!!」

「繰り返す、私はマンバ神様の眷族背の目である、精霊種諸君、速やかに精霊王国に移住する事を勧める!!!」

怒りの背の目は、好き放題言い残し、飛び去った。

右往左往、大混乱の王国、早くも家財道具全て荷車に積み、精霊王国を目指す者が続出した。

セノメ国王を敬愛する住民も、随時王国を離れていった。

夜が明けて、更に王国を去る住民が、精霊王国までの道を埋め尽くした。


かなり時間が経ち、マンバ神の情報行いはセノメ国王に届いているはず、しかし以前首にした代官と同じ態度、この国は根底からダメだ、私が世話をやきすぎた、怒りの背の目は完全に見限った。

代官達の態度1つの為、100年栄えたセノメ国王が消えた。


そんな結果は全く感知しない、マンバ達一行は、オロチの疲労を考慮して、途中3度休憩を入れ、早朝ドラゴン山脈に到着した。


クロや大多羅を見慣れて居るので、それ程脅威に思えないが、全長5メートルのトカゲがジロリ睨む。

「わしはマンバ神、お前達の長に話がある、取り次げ!!」


トカゲのくぐもった声「タチサレ」

「貴様の独断で、追い返して良いのか?ドラゴン族の王女が、同行しておるぞ!!」

「グ?オウジョ?」

風に乗せた声を響かせた。


騒ぎを聞き付け、人型のドラゴン族がやって来た。

首を見ると、白や灰色赤や緑の鱗が見える。

オロチの首を見ると全員土下座、臣下の礼を取った。

「「「女王様、お帰りなさい!!一同帰還を待ち望んで居りました!!!」」」


打ち合わせ通りオロチが言った。

「私はオロチ、他に王族は?姿が見えんが?」

「オロチ様、弟君様は御一緒では無かったのでしょうか?」

「弟?知らぬ!」

「双子の弟君様が居られたはずですが」

「私一人じゃ」

「そうですか、では王族はオロチ様唯お一人です、私は国王代理を務めてまいりました、ハクと申します」

白い鱗の男が、説明してくれた。


立ち話で無く、落ち着いて女王様の指示をお受けします。

石造りの質素な王宮に通された。


「ドラゴン族は衰退する一方で、女王様の帰還はこの上無い喜びでございます」

「待ちなさい!!私は此方のお方、マンバ神様の眷族に取り上げて頂きました」

「眷族として、神に御使い修行しておる身、直ぐに自由には動けません」

「何だと!この人間の為に自由を奪われて居るのか!!!」

「控えろハク!!!マンバ神様を侮辱する事は許さん!!」

「女王様は、この人間に奴隷にされて居られるのか!!」

ハクは背の目の方に言った。

「ハク!!!神罰を落とされん内に黙れ!!!」


不穏な雰囲気になり、襲い掛かろうとした、ハク以外を「凍結!!」

瞬時に凍結した家臣を見て、ハクは震え上がって息も出来ない様子。

「マンバ神様、殺さないで!!ハク見たか!!!」

わしは一人ずつ、ゆっくり解凍してやった。


順調に、打ち合わせ通り進んだ、屈強な背の目は極力控えて、か弱そうな、わしやオロチが事を起こす、だめ押しの神術、ドラゴン族を庇う風のオロチ。


「マンバ神様は私達を奴隷にして居った、人類至上主義者の国を滅ぼし、精霊族をお救いして下さった、大恩人、侮辱は眷族の私が許さん!」

飾りの大壺をオロチは鬼火で焼き、消滅させた。

「マンバ神様の加護を頂き、私も似たような事が出来ます」

神なら兎も角、女王様にまで神術を見せられ、その場の全員が平伏するのだった。

同族が見せた、奇蹟は強烈だった。


マンバ神様が建国された、精霊王国に帰属する事を誓うハク達だった。

「本題じゃが、鉱石採掘を認めて欲しい」

「喜んで協力致します!」


国民を集め、お告げをふれた。

6メートルを超えるトカゲがくぐもった声で言った。

「オレハミトメナイ!チビニンゲン、ツブシテヤル!!」

本気で殺す勢いで来おった。

「殺す気で来ておるトカゲ、死んでも文句言うな!!」

飛び上がりトカゲの頭を打ち抜いた。

怒る背の目が身体を焼き尽くした。

トカゲは完全に消滅した。


「他に死にたい者が要るか?」

「ニンゲン、ナニカヒキョウナ、テヲツカッタナ!!」

「そこの無礼者死ね!!」

オロチがキレた、威力を込めた鬼火で、文句をいったトカゲを消滅させた。

火を吹くオロチ、ここでも同族の行使した神術は強烈な印象を民衆に与えた。

ドラゴン族の女王様の怒り、奇蹟の神術を目の当たりにし、真の支配者の存在が一同に浸透した。


「皆の者、当分は今まで通り、ハクが代官を務める、皆引き続き盛り上げてやれ!!」

「採掘の作業者じゃが、逐ってやって来る、呉々もふざけた態度を取るな!!」



精霊王国に帰還して驚いた、延々と続く移民の行列、一瞬意味が分からず、そして思い出す「背の目!!!」「母ちゃんゴメン」


セノメ王国元国民20万人、精霊種約5万人。

背の目とオロチと供に、どうした物かとボンヤリ眺める。

「あれ?オロチとそっくりな子が」「え?マンバ神様何処に?」

「付いて来て」オロチの手を引き目標に向かう。

びっくりした顔の、男の子の前に着いた。

オロチと見比べる、ロングとショートヘアーは違うが同じ金髪、少年の顔はオロチと似ている、瞳も同じ金、首の山吹色の鱗も同じじゃ。

「赤ちゃんの時で覚えて居らんじゃろうが、君はオロチの弟じゃ!!」

灰色の鱗の女が「この子はドラゴン族の王子、女王様から託されたお方」

「なら分かるな、オロチはその子の双子の姉じゃ」

「はい、女王様は確かに双子を出産されました」

「名は、姉君がスピカ、この子はフラウ」

「オロチ、本当はスピカだそうじゃ」「オロチが良い」

「親が付けた名じゃぞ!」「マンバ神様が付けて下さったオロチが良い!!」


「其よりフラウが国王になれば、私は自由!!マンバ神様と一緒に居られる」

「フラウ見てて!!」

オロチは飛び立ち、旋回降り立つ瞬間、フラウの後に転移した。

「何?今お姉ちゃん何をしたの?」

「マンバ神様の加護、神術を使ったの!!同行させてもらえば、もっと凄い神術覚えられる!!!」

「マンバ神様は、産まれて800年程の若い神様なのよ!!」


「フラウ貴方は早くドラゴン山脈に帰りなさい、ハクが待ってるよ」

「お姉ちゃんズルイ!僕も加護を授かりたい!!」


灰色鱗、お世話係のスバルも供に、オロチとフラウも同行、王宮のわしの部屋に行く。

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