第40話 ルーマ王国?

チスナ帝国軍5000、最前の兵は焼き切れた鎖を持ち、茫然としている。

後衛の兵達は気付く事無く、突然停止した最前兵を押し倒し、躓き倒れ大混乱に陥る。


その瞬間を待って居たように、何者かが突然現れ攻撃を受けた、直ぐに消えた攻撃者を認識出来ず、多数の兵が切り刻まれた。


やっと混乱に気付いた将軍の指示で、少佐中佐が駆け巡り、叱り付けて混乱を終息させ、被害状況を確認して回った。

一瞬の内に、500の兵が死傷した事実に驚愕した。


将軍が、動揺して声を上げた。

「ありゃ?盾奴隷は何処に行った?」

「将軍、奴隷は突然消えたそうです!!」

「消えた?じゃと?何を寝惚けて居るか!!指揮官に詳細説明させんか!!!」


重装備の指揮官が、精一杯の駆け足で、モタモタ将軍の前に進み出た。

説明は、「もやっとして、カッと光り奴隷が消えました」

「繋いで居た鎖は、焼き切れた様に先端が溶けていました」

「ふざけた報告をするな!!!」

重装備の指揮官を殴り、手を痛める将軍だった。


他の兵を呼びつけ、説明させても

「前方がゆらっとして、ピカッと光り、奴隷が消えました」

全員が同じ様な証言に、何が起こって居るのか、全く理解出来ない将軍だった。


突然ナイチ聖国が無人になり、僅かな奴隷のみが住み着いて居ると情報が入り、5000の兵で占領せよ、との命を受けた将軍。

「代官として統治すれば、リチラとリチルに少しは、良い暮らしをさせてやれる!」皮算用で意気揚々と進軍して来たが、非常に不味い状況じゃ無いか??


この先のナイチ聖国を、我軍より先に占拠した集団が居るようだ。

その集団は、得体の知れない攻撃方法を持っておる。

おそらく、人類至上主義に対向する勢力だろう。

対向する勢力なら、戦わずこのまま帰っても良いが、チスナ皇帝に処罰されるだろうな。

それに、リチラとリチルが行方知れず、このままでは帰れん。

進軍すると、全滅が待っているだろう。

「困ったぞ!進退極まった」

負傷兵の治療で、進軍停止中だが、治療も終ったようだ。


「どうした物か·····」

「取り合えず、使者でも出して、どんな奴が占拠して居るか、知るのが先決だな」



「使者の口上に無反応、完全無視されただと!!!」

想定外、斬新な反応だな。

(儂は人類至上主義者では無い、リチラとリチルを強制召集され盾奴隷にされた、安否確認が最重要だな、儂の大切な家族だ)


20年前、ナイチ聖国に滅ぼされ属国になり、ナイチのイトコとかのチスナが皇帝を名乗り、チスナ帝国になってから、人類至上主義を強要され、こんな事になってしまった。

それまでは、人も亜人も普通に共存する国、ルーマ王国だった。


止める部下に「敵対せん事を説明してくる、相手は、無反応でも聴いては居る」


愛馬シルバーに跨がり、行く手にそびえる防壁を見上げた。

その日の儂の出で立ちは、武器はおろか、鎧すら装備していない、礼服にマントを羽織った軽装だ。金福凛(キンプクリン)の鞍も置いて無い。


亜人が可哀想で見て居れんから、ここには殆んど来た事は無い、然しこんな強固な防壁で無かったことは覚えている。

大勢が、注意を向けている気配がする。

尋常でない威圧を感じる、怖いかも··········。


リチラ、リチルと、呼び掛けるのも間抜けだし、さて何と呼び掛けるか。


「儂はリチラとリチルの父親だ!!娘達の安否を確かめに来た!!!」

結局一番気になって居る事が、素直に口から出た。


防壁の頑丈な門が、静に開いて行く。

出てきた人物、意表を突かれた!!

可愛らしい清潔な服に着替え、見違える位に輝く、リチラとリチルが現れた。


儂は、シルバーから飛び降り「「父様!!」」と駆け寄る娘達を抱き締めた。

「怪我は無いか?酷い目に合って無いか?」

「父様!ここ精霊王国は夢みたいよ!!!」「父様!私達マンバ神様に会ったの!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る