第36話 ケトシ族凄いぞ

バス停泊地まで帰ると、全員が既に帰還していた。

チャミは、チシャ達の所に走って行った、代わりにチャイが走って来て、何か言いたそうじゃ。


クロ達は、毛がふさふさの巨大牛?バファロー?を2頭仕留めて来ていて、既に大多羅が解体し焼肉にして、いつでも食べられるようにしてくれておる。

置いていた米は、野草と肉入の塩味雑炊にしてあった。


チャイ、話は飯を食った後じゃ。

「はいマンバ様、凄い話があります!!」

何じゃ?気になるではないか、表情から悪い話じゃ無いな?


肉も雑炊も、凄まじい量じゃったが、60人の腹ペコ達が、綺麗に食べ尽くした。

ケトシ達、悲惨な状態じゃったが、美味しい物を気がねなく腹一杯食べられる、脅え顔が徐々に柔らかい表情に代わり、時に笑顔さえ見えるようになって来た。


食後の片付けが終った大多羅は、黙々とバファローの革を鞣しておる。

革から脂肪を子削ぎ落とす、大変な作業じゃが、ああ言う所が大多羅の良いところじゃ。

近付いて、大多羅を誉めてやる、大男が照れて、なんか可愛いぞ!!


残り1頭分の、解体された肉を架空袋に仕舞う、付いて来たチャイが興味津々で見ておる。

「チャイ、この架空袋は時空間神術じゃ、自分専用の大きな架空の倉庫を想像するんじゃ!そこにポイポイ入れて行く」

「時空神術?架空の倉庫ですか·····」「思い描けたら、これを入れてみろ!」

骨付きアバラ肉を一本チャイに渡す。

「·····これを·····入れる」何か念じながらチャイが、骨付きアバラ肉を何処かに入れた。

「チャイも天才じゃな!!」

「入れる事が出来たなら、さっきの肉を出してみろ!」

チャイは空中から、肉を取り出した。

「教え概が有ると言うか、へんが無いと言うかケトシ族は凄いのう!!」

(架空袋、時空間妖術なんぞ、20年前じゃぞ、わしが出来だしたのが)

チャイがやって見せたのは、空間内の変化の無い、間違いなく時空間神術じゃ。

また一つ神術が使えチャイは喜んでおる。

「チャイ、今収納した肉は、いつまで経っても腐らん、時空間神術は他にも、遠くに瞬時に移動したり、大多羅しか使えんが異世界渡りも時空間神術じゃ、其ほど凄い神術を覚えたのじゃぞ!!!」

「マンバ神様!!ありがとうございます!!」

「あまり理解出来て居らんようじゃが、完璧な時空間神術は大多羅しか使えん、初歩的でも時空間神術を使えるのは、わしとチャイだけじゃ!!」

「えぇーーーーーっ」

「理解出来たようじゃな、チャイ威張って良いぞ」

無言になったので、どうした?と見ると、ボロボロ涙を流しておった。

軽く抱いて、頭をぽんぽん撫でてやった。



食後銘々から報告を受けた。

背の目は頑張って、かなりの距離を飛行したようで、西の外れ山脈を調査してきた。

ドラゴン種と思える、巨大トカゲが生息しておったそうじゃ。

背の目は、手の目の変異種じゃ、大地の神術が一番得意な種族、山脈には金や銅など各種鉱石が豊富に埋蔵されている、と、追加で報告してきた。

巨大トカゲが、すんなり採掘させて呉れるじゃろうか、話が出来る相手かも分からんし·····鉱石採掘は後回しじゃな。


和真は、森林の北の果てを目指したが、半日の飛行では行き着かなんだそう、数ヶ所集落を見掛けたとか、大体の位置は把握しておるとか。


奈緒と哲は、東を目指したそうで、接触はして居らんが、大小多くの集落を見付けて来た。



やらねばならん事が多過ぎる、何よりも初めに、受け入れ場所のナイチ跡地を住めるようにすること、井戸の状態確認と田畑の整地じゃな。


子供達を待たせておる、話を聞くか。

子供と言っても、見た感じは、わしより年上にみえるが。

ケトシ達の所に、チャイと行く。

チャイが子供達の前に立ち、皆一斉に平伏した。

「な、何じゃ?わしは、こうゆうの好かんぞ!!」

チャイが代表して言う。

「マンバ神様!!お陰で全員眷族に成りました!ありがとうございます!!!」

「平伏は止めて、そこに座れ!」言いながら、わしはその場に座った。

チャイとチェリ、チシャとチャミが近付いてわしの前に座る。

「全員、神術が使える様になったのか?」


ここまでがいっぱいいっぱいじゃった様で、興奮して大声の子、感激に泣きながら話す子、感情が高ぶって笑いながら話す子、わしは聖徳太子じゃ無いぞ!聞き取れん。

感謝と歓喜は伝わって来る。

頭を撫でたり、抱き締めたりして回らんと、駄目じゃろうな。

こう言うのも、わしは苦手じゃ。


ケトシ達の興奮は修まらんが、話す内容はわかった。

今までケトシ族は、精霊種の中で、極めて非力な種族じゃったが、わしのお陰で神術を使うのに長けた種族と分かり、役立たずじゃ無かった事が嬉しいらしい。

存在が癒しのケトシ族、何も出来んでも、役立たずじゃ無いぞ!)


チャイやチシャ、チェリをはじめ、この子達の半数は飛べるようになったとか、殆んど全員、鬼火と鎌鼬が使えるそうじゃ。

「この他にも、身体強化に氷雨、大地の神術と架空袋の時空神術などがある、皆の希望を聞く、何を覚えたい?」

「「「「「全部!!!」」」」」

「お前達なら、全てが使える様になるじゃろう·····わしは教えて呉れる者も無く、全て覚えるのに100年程かかった、それを瞬時に使え出す、ケトシ族は凄過ぎるぞ!!」


さて、座学は大切じゃが··········どう説明するか、この子達ならやって見せるだけで良さそうじゃが、鬼火特大なんぞ迂闊に使えん。

「皆には、実際やって見せた方が良さそうじゃが、威力が強過ぎて何処ででもは使えん」

「奴隷商の鉄格子を、溶かしたのが鬼火弱じゃ、鬼火強や鬼火大以上普通は使わん」


「皆が収得済みの、鬼火と鎌鼬じゃが各々6通りの使い方がある」

「鬼火には、小、大、特大、全体を焼き尽くす強さの段階じゃ、それに微弱、弱、強、が火の強さの段階じゃ」


「鎌鼬には、つむじ風、竜巻、台風が全体を凪ぎ払う風じゃ、それに微風、強風、突風3種が鎌鼬の威力じゃな」

「火は、細くして矢や槍のように使うと、弱い火力でも強力な攻撃になる」

「風にしても、薄い風が鎌鼬じゃが、一点をえぐる風は弱い風でも威力は出る」

「色々工夫すると、意外な成果が得られると思う」


「一度に詰め込むのは良く無いと思うが、こと神術に関しては、ケトシ族は非常識的な存在なので、氷雨もやってみる、覚えてくれ」


「水を飲んだ事の無い者は居らんな?」

「雨が降ってきて、雨に濡れた者は?手を上げて!」

「皆雨に濡れた事があるようじゃな」

「では何故空から水が落ちて来るか、分かるひと!」

「チャイ!」

わしの指名に、真面目に考えておる。

分かりません、と答えて欲しかったのじゃが、真面目じゃのう。

「て、天空の川から流れ落ちた?」「ふむっ面白い」

「チャミ!」

「考えた事が無いので、解りません」


「そうじゃの、チャイは考え想像して天空の川と答えてくれた」

「泣き虫の神様の涙とか、考えるのは夢があって面白い物じゃ!!」

「皆が知らんで当然、神になるまで、わしも知らなんだ」


「海や湖川から、目に見えんが水はどんどん空に昇って行っておる」

「えぇーーーー?」

「不思議じゃが、これを蒸発と言って、熱い日は特に蒸発が盛んじゃ」

「鍋で水を沸かし湯になると、白い蒸気が昇っておるじゃろう!」

「触ると火傷する!」

「そうじゃな、蒸気が昇っておるのを蒸発と言い、川や池、海の水もゆっくり蒸発しておる」


「もう気付いた人も居るようじゃが、登った水蒸気が冷えて水に戻って、降って来たのが雨じゃ!!」


「理屈を理解出来た方が術は使い易いぞ」

「両手をこう寄せて、一杯の水を出すぞ!皆もやって、氷雨!!」


これだからな!もう可愛いげが無いぞ!

全員、掌に水が溢れておった。

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