第35話 広大な森林には

わしとチャミは、長老の家に迎えられた。

100人弱の、クーシ族が住むこの村は、初めはコムと奥さんがたどり着き、豊富な食料に飲み水がある、この場所に住み着くことにしたそうで、50年経った今、子に孫、ひ孫と増え全員が親族の村になったとか。「へぇーー!!」

(待てまて!!二人で始め、50年程で100人??子供は男2人女3人だとか?どうなって孫が産まれた??他所から嫁や婿を呼び込んだとは言わんかった、兄妹を結婚させたか???コムが娘を孕ませた???誰が何歳で誰と子を産めば100人になる??ネズミかGか!!考えるのは止めじゃ·····変に成りそうじゃ)


一族老若男女の全てが集い、満月の夜、相手を取っ替え引っ替え、組んず解れずまぐわう姿が、脳裏に浮かぶ「ブルッ!!」

(事実じゃ無いよ!わしの妄想じゃ!!)


見た目は小さくて可愛いが、男共の目がギラギラ、わしやチャミを舐め廻すように見ておる!!

この村には関わらんようにしよう、気持ちが悪いぞ。


「チャミ、帰るぞ!!」

挨拶もそこそこ、チャミの手を引き飛び立つ、念の為バスとは逆の方向に。

わしが異常に感じ過ぎたと思ったが、チャミも嫌な気を鳥肌が立つ程感じたそうじゃ、間違い無い逃げて正解じゃった。

この世界に居るかは知らんが、ゴブリンかオークみたいな奴らじゃった。

ラノベ狂いの鬼からの知識じゃが、余計な話の方が面白かった「クッコロ女騎士」とか。


「衣食足りて礼節を知る」と云われて居るが·····「衣食足りると性欲が増す」ってか?

クーシ族全部が、あんなのじゃ無い事を祈るぞ!!


「もう少し奥を調べたいが、飛べるか?」

「マンバ様大丈夫、馴れて来たかも」

「上昇するぞ!」

「はいっ!!」

馴れるのも早いな、この子は鍛えれば、全ての神術使いになるかも。

上昇も難無く付いて来る!!

「此だけ上昇しても森全体が見えんな」

「大きな湖!あそこに向かうぞ!!」「はい!」


手助け無しで、着陸しおった、全力じゃ無いが結構な速度じゃったが、わしと同じに飛行出来て「チャミ天才じゃ!!!次は鬼火と氷雨も指導してやる!!」

「あ、ありがとう、楽しみ!!」


(ラノベ狂いの鬼は、獣人は魔法が苦手、身体強化魔法が得意とか言っておったが、事実は違う、当てにならん知識じゃった)

(いや!ケトシは精霊種と言っておったな、精霊なら魔法も使えるか?精霊魔法とか有るのじゃろうか)


見渡すが、向こう岸が見えん、巨大な湖じゃ、上で確認しておらなんだら、海岸に着いたと勘違いする所じゃった。

上空から見て、周辺に集落が最低7か所はあった。

「あそこに向かうぞ!」「はいっ!」「今度は変な奴が居ない事を祈るぞ!」


飛んで行くと、見上げている住民は人に見える、尻尾も無いな。

少し離れた所にゆっくり降りて行く。


呆然と見まもる住人が、反応する前にたたみ掛ける。

「わしは、隣の神の大陸から来たマンバ神、この子は眷族のチャミじゃ、代表者と話がしたい!!」

一人の男が進み出て「私がこの村の村長ニオルです、空を飛ぶ神が何用ですか?」


普通の人のようじゃ、森に住むのが精霊種だけとは限らんな·····と思って村長を見た。

頭の上に2つの尖り?

猫耳?じゃぁ無い、盂羅よりは可愛いが、角じゃな。

「チャミ、角があるこの人達は、鬼族?」小声で聞く。

チャミも小声で教えてくれた「おに族と違う、き族です」

「ああ、鬼族か(どっちも同じじゃが呼び方か)」


「鬼族の村で間違い無いな!!」

「はいっ左様で、マンバ神様はこの村に、何を要求されますか?」

「要求は無いが、聞きたい事がある、遥か南東にナイチ聖国が在るのは、知っておるか」

「ま、まさか、聖国の手先か!!!」

「知っておるようじゃな、安心せよ!狂人共の国は跡形もなく滅ぼした、今は無人じゃ」


半信半疑じゃが、聴く気にはなったようで、村長の家に招かれた。


この湖の回りに在る村落は、ナイチ聖国の殺戮から逃れ、苦労してたどり着いた精霊族達だそうで、鬼族にケトシ族、エルフ族にホビット族、その他少数で雑多な種族集団が住んで居るとのこと。

「クーシ族は居ないのか?」

「マンバ神、クーシ族は獣人です、精霊種ではありません」

「そう?なのか?獣人、か」

「この大森林にも、数ヶ所クーシ族の村が在りますが、近付かない方が良いと思います」

「何故じゃ?」

「あの犬共は人と同じ、年中発情して居て、同属以外にも生殖行為を行ないます、女性は特に襲われ易い、ホビット族などは男性でもクーシの雌に襲われた事が有りました」

「南にある池の辺りにクーシ族の村があったが」

「ああ、あそこは特に酷い!親子兄妹誰彼構わず生殖行為を繰り返して、訳の解らん間柄になっております!絶対近付かないように!!!」


「·····実は、ここに来る前に訪問したが、気持ち悪い雰囲気で、逃げ出した」

「良くもご無事で!!!」


気持ち悪い思いはしたが、其ほど毛嫌いする程のものか?

··········精霊種は人が嫌い、と言うか人に酷い目に遇わされた、だから人に近い行動をする獣人が嫌い、と言う事じゃないだろうか。


この鬼族の村に来て正解じゃった、知りたかった情報を殆んど手に入れる事ができた。


「マンバ神様、気になって居て、お聞きしても良いですか?」

「良いぞ、何だ」

「眷族のチャミ殿は、ケトシ族に見えるのですが?」

「ケトシ族で間違い無い、ナイチ聖国を滅ぼした時、助け出した53人のケトシ族の一人じゃ」

「ケトシ族は空を飛びません」

「神の大陸でも実証済みじゃが、神のわしと行動を供にすると、神術が使え出し眷族になる」

「チャミは、ナイチ聖王に殺されそうな所を助け、わしが抱いて飛び、外に連れ出した、それ以来ずっと供におるので、眷族になるのが早かった」


「マンバ神様、私ニオルも神術が使えるように、なるでしょうか?」

盂羅は剛力に鬼火と鎌鼬が使えたが、この者の資質は·····鬼火は簡単に覚えそうじゃな。

「供に行動すれば、間違いなく使える!」

「この鬼族村一同、マンバ神様の言われた、ナイチ聖国の跡地に移住します!!」

「これから、チャミに鬼火を指導する、ニオルさんも一緒にやって見るか?」

「宜しくお願いします!!」

凄い食い付きじゃな。

「チャミ、ニオルさん、火打ち石で火を点けた事あるでしょ?」

「「はいっ!!」」

「火が点いた時を思い出して、拳を握って·····ガチッ!」

思った通りチャミは一度で火が吹いた。

「ニオルさん、チャミのように拳を握って、ガチッ!」

拳から炎が立つのを、目の当たりにしたニオルは火が吹くのが普通に思え、ガチッを繰り返す内に、ついにチョロっと小さな炎を出すことができた。

「出来たぁ!!!」

神術が使えてよほど嬉しかったのか、いい大人がうっすらと涙ぐんでおった。


「移住準備して待って居れ、あちらの受け入れ準備済ませ迎に来る」


他の種族で親しく交流している、ホビット族とエルフ族にも移住を促すとのこと。

神術を見せ自慢したいだけの様子じゃが、ニオルが鬼火を使えるようになって良かった、

神術目当てでも良い、移住者が多い方が精霊王国の建国が速まる。


確かな収穫を持って、帰路を急ぐ。

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