第32話 ナイチ聖国消滅

又々ここはナイチ聖国、聖王の間。

「我が、神威軍1万が全滅したと聞くが、誰が犯人だ?獣人100人で対抗出来たとは思えん!!」

「誰一人帰還しませんので、詳細は不明です」

「セノメ王国のユダが裏切ったのか!!」

「ユダは神威軍の進行を妨げる者の排除、事後の揉み消し等、完璧に工作して居ります」

「ユダから報告が入らんのは、裏切りでは無いと申すか!!」

人類至上主義者のユダは、聖国軍の亜人殺戮行為を長年補助して来た。

国王退任騒動に慌て、ナイチ聖王に報告処で無かったのが理由だが、知らぬ間に裏切者の汚名を受けていた。

最も、セノメ王国の筆頭家老にして、代官職につく者としては裏切者には違い無いのではあるが。



背の目は王の装束を脱ぎ捨て、ネクタイをキチッと締めた黒のスーツ姿になって現れた。

後ろには家臣達が、ぞろぞろ附いて来ておるが、背の目は全く気にもしない様子じゃ。


「お待ち下さい国王様!」

「ユダ!私が代官に任命して何年経つ?」

「え?じゅ、10年です」

「10年経っても、私の代理が出来ぬのか?」

「あっ、その·····」

「確かに私に任せっきりで、まともに仕事して居らなんだ様だな」

「しっかり果して居ったのは、ナイチ聖国の、獣人、精霊族、殺戮の手先としての仕事だけだったのう!!」

「こ、国王様!何を·····」

「余計な情報を与えたくなかったので黙って居ったが、私は人では無い妖怪だ!貴様がこそこそやって居る事など全てお見通しだ!!」

「うっ·····」

「幸いまだ、我が国民の獣人達に害は及んで居ない、貴様が生きて居れるのは、ただそれだけの理由だ」


「ユダ!本日付けをもって、代官を解任し配下の者と共に、国外追放を言い渡す!!」

「国王様!!」

「言い訳は聞かん!私の気が変わり処刑されん間に、早々に立ち去れ!!」

温厚で何をしようが、気付く事は無いと、舐めてかかっていた、セノメ王の激昂に跳び去るユダだった。


「サイオス!」「はっ!!!」

「代官を任命する!!」

「ははっ!!」

「皆も今後サイオスを助け、王国を発展させよ!!」

「たまには、様子見に帰国する」

「問題のナイチだが、母様が放置はせん!!憂いは取り除いて行く」




南門を出た所で大多羅は巨大化し、わしらはナイチ聖国に向けて飛び立つ。

「待って!私は飛ぶ事が出来ません!!」

「ありゃ?背の目、まだ飛べんのか?」

飛び立とうとした時、背の目が情け無い事を言いよる。

「カズマの飛び方が背の目に一番合うとる!よう見ておけ」

「カズマ、ゆっくり説明しながら飛んでやってくれ!」


「セノメさん、竜巻を纏う事出来る?」

カズマの真似をして、背の目が竜巻を起こし、纏う。

「出来たら、後は簡単!竜巻を操りゆっくり上昇!」

背の目は難無く上昇した。

「何じゃ!背の目今まで飛ぶ気が無かったのか?」

「いや!!何度も飛ぼうとしたけど、やり方が解らんかった、母様の説明はいつも[ブワッとしてスイーと]って言うだけだったでしょ!!」

「そう?じゃったか?のう」



皆が飛び去った後、マンバ神とか神の眷族とか、半信半疑の重鎮達だったが、神術を目の当たりにし、平伏して見送っておった。


大多羅とクロ達は、わしらの飛ぶ速度に負けず付いて来ておる。

「背の目、ナイチ聖国まで後どれ位じゃ?」

「目標までは500キロメートル、この速度で行けば後6時間でナイチ聖国国境です」

「ジュンとジュニを休憩させたい、この丘を越えた所で小休止する」


わしらが降りて間も無く、クロ達が駆けて来た。

クロ達は疲れた様子も無く、仔でも流石フェンリル、一昼夜ぶっ通しでも走れるそうじゃ。


昼の2時前に、ナイチ聖国国境に到着した。

国境と言うが元獣人の村が有った場所、ナイチ聖国が滅ぼし勝手に主張しているだけの、砦も何も無い所である。

後20分飛ぶと、ナイチ聖国の聖都(彼等はそう呼ぶ)に着く。


門は閉ざされておる、どうせ滅ぼす国「大多羅例のバフーンやって見て!」

「マンバ神様、覚えてて下さっただか?」「バフーン!!!」

大多羅の呼気で、門は吹き飛び、粉々に霧散した。


破壊した門を通る、邪魔は無し。

聖国の状況を確認しようと思って正解じゃった。

殺戮漏れを拉致したのか、首輪に鎖の獣人が爆発音に硬直した住民に引っ張られて居る。

獣人は四つ足で歩く事を強要されて居るようで、全員が四つん這いじゃ。


「各員獣人を保護せよ!!ナイチの民は皆殺しじゃ!!」


命令し近くで鎖を引く住民を蹴り跳ばす、獣人の首輪を引き千切り立ち上がらせ。

「拉致されておる獣人を全員開放する、協力してくれ」

猫耳獣人は突然の出来事に、少し戸惑いを見せたが、すぐに元気よく答えた。

「有り難う御座います、あの建物が奴隷商です」

「解った!!」

奴隷商の扉をぶち抜き、驚く奴隷商人を殴り跳ばし、大声で呼び掛けた。

「拉致されて居る獣人の皆さん救助に来ましたぁ!!」

奥から声が聞こえる。

壁をぶち抜き進む。

獣人が年齢性別で分けられた、檻が並ぶ部屋に出た。「男女共に子供が多いな」

順に鉄格子を鬼火で消滅させて行く、最初に助けた獣人チャイが、自由になった獣人を誘導してくれる。



建物の中に居る獣人に、空中から声を風に乗せ呼び掛ける。

「拉致され奴隷にされた、獣人の皆さん救助に来ました!![おーい]と声を出せば仲間が助けに向かいます」


皆に、微かな声も聴き逃さないよう注意して、助けて回る。


この頃になって、やっと警備兵がやって来た。

「お前達何を·····」みなまで言わせず、鎌鼬で切り飛ばす。

辺りを血の霧が舞う。


後は城の方から「助けて!」の声が聞こえるのみとなった。


声を頼りに、城に飛び込む。

「く、来るな!奴隷を殺すぞ!!」

「獣人の貴女、そのおっさんが聖王か?」

脅えながらも、少女が頷く。

見た瞬間走る!瞬間移動、少女を抱え込む、おっさんの両腕を掻き切る。

「ぎゃぁーー」

痛みに耐えきれず、転げ回るおっさんの髪の毛を引っ掴み

「殺戮された獣人の苦しみ、しっかり味わって死ね!!!」


辺りを見回すと、青ざめ腰砕けになった爺共が居る。

静になったと思えば、おっさんが気絶しておる「もう一寸苦しめ!!」右腕をむしり取る·····?無反応によく見ると、痛みでショック死しておった。

爺共を順に叩き潰して回り、少女に聞く。

「君の他に奴隷にされた獣人は居ない?」

「仲間の敵討ち感謝します、生き残りは私だけです·····」

少女を抱えて飛ぶ、風に乗せ皆に指示を飛ばす。

「全員、国の外に撤収!!」


救出した獣人は53人、何人でも補充出来ると、日常的に娯楽として屠殺されていたそうだ。


全員が門から出たのを確認。

「じゃ、一寸汚物焼却して来る」


ナイチ聖国と言う狂集団が、この世界から完全消滅した。

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