第31話 感激の再会そして旅立ち

大多羅の巨体は人目を引くと自重させておったが、新大陸の住民の多くが実態を知っていて、しかも尊敬の対象と知り、自重無しの巨大化、わしらは高速飛行、クロ達は全力走行の結果、1時間で中央の国に到着した。


中央の国の門番は、大多羅の知名度のお陰か、わしらを訊問無しのフリーパスで通した。

幼女がフェンリルを従えた、怪しい集団じゃが。

「オオダラ様の訪問を、国王様にお知らせします!!」

伝令兵が叫んでおった

「待て!背の目の旦那に、山姥大王様をお連れしたと伝えろ!!」

「ヤマンバ大王様をお連れしたと、お知らせします!!」伝令兵が復唱し、門の裏から、城に向け早馬が駆け出した。


わしらは、のんびり城下町を見物しながら歩く。

「ありゃ?蒸気バスが?其に蒸気自動車か?」

「マンバ様、木炭車ですらぁ」

「鉄道は膨大な鉄を使う、丘蒸気は断念したようじゃな」

ナオとテツは驚いて居らんが、カズマはポカンと口を開け、異様な風景を眺めておる。


「背の目の奴、自重無しの統治しておるな!!」

「ま、マンバ様!あれは何ですか!!」

「木炭で釜を炊き、蒸気で走る乗り物じゃ!」

「に、日本ではあの様な、馬無し馬車が走っておるのですか?」

「あれは古い物じゃ、今の日本では、ガソリンの内燃機関や、電気で回すモーターで高速で走る乗り物が主流じゃ」

「·····ほう?·····話が?·····全く理解出来ん·····」



中央の大通りを見学しながら歩いておると、砂塵を吹き上げながら、高速で近付いて来る者が見えた。

近付いて来た男は、豪奢な服装に、金銀宝石を縫い込んだマントを羽織っていた。

走り寄って、マンバの前で平伏し、「山姥大王様待ちくたびれました!!!」

そこまで言うのがやっとだったようで、後は感極まって号泣する背の目だった。

「うっおーーーーーーーん大王ーー様ぁヒッグ、600、年は、ヒッグ、永過ぎ、ですーーーっ」

「背の目、泣くな!相変わらず、泣き虫じゃのう·····」

手の目族の変異種の背の目、子供の頃迫害を受けておった所を助けてやり、わしが育ててやった、あの頃のように頭を優しくなぜてやりながら。

「よく遥々追い掛けて来た、嬉しいぞ!!また一緒に色々やろうな!!」

大多羅まで一緒に号泣しおる、落ち着くまでしばらく甘えさせるか。


自国の王が幼女に平伏し、号泣する様は、遠巻きにした市民達の理解の範疇を越えていた。

目の前の出来事が、全く理解出来ず、良くない事が起こるのではないか、人々を不安にしていった。




背の目に案内され、王宮の豪華な謁見の間、玉座にマンバを座らせ、自分は下段に降りて膝をつき、臣下の礼を取る。

大多羅も巨体を折り曲げ、ちょこんと背の目の隣に膝をつく。


慌てたのは侍従や高官達、王と崇めるセノメや英雄オオダラが、何処の誰とも知れぬ幼女に膝間付く様子は、現実のものと思えない出来事であった。

この幼女は何者?お供の者も少数、近くに住まう者であろうが、まさか、国王様の隠し子?

実子にしては解せぬ、セノメ王の態度は、遥か上位者に対するもの?


「背の目、面を上げよ!お主の口から不審そうにしておる者共に説明せよ」

家臣の態度に初めて気付いた背の目が立ち上がり。

「皆のもの、無礼である!控えろ!!!」

温厚なセノメ王の激昂に、その場の全員が平伏した。


「私達がこの世界に渡ったのは、この御方山姥大王様を追い掛けての事である!」

「大多羅、盂羅、猫又が100年探して居たのは、山姥大王様である!!」


「私はこの国を建国し、目立つ事をやっておれば、大王様が必ず私を見付けて下さる!!

ただその思いのみで、100年待ち続けて来た」

「念願の思いは今叶った!!私達は大王様と共に行く·····うっうおーーーーーーーん」


「おらからも一言、山姥大王様はこの地でマンバ神王と名乗られ、隣の大陸「神の大陸」を1年で統合され、おら達を探しにこの大陸に降臨された」

(出会えたのは偶然であるし、配下の存在、夢にも思っておらなんだ、など口には出せんな)

「マンバ様は神であり、このお姿は何年経っても変わらない、おらも背の目の旦那達もマンバ神の眷族である、証拠は100年姿形に変化が無いであろう!!」

大多羅が、まともに話せる様になっておる!

マンバは呑気に思った。


家臣達の混乱が修まるまで、客室に移動した。

久しぶりと言うには遥か年月が経ち過ぎて居る、大王様に·····母ちゃんに甘えたかった背の目であった。


何とか落ち着いたようじゃ。


邪魔に成らないよう、静観してくれていた皆に紹介する。

「この子は、わしの子で背の目じゃ」

「「「マンバ様ガキンチョの子??」」」

「そうじゃ!わしが育てた!!」

「背の目、此方は高田和真、三重奈緒、三重哲、普通の人じゃったが、わしの加護を授かったと言う事で眷族になった」


あっと言う間に、互いに打ち解け旧知の仲のように話が弾んでおる。

カズマが話す神の大陸平定の快進撃の様を、何故か背の目が得意気な顔で聞いて居る。

聴き終り一言、「母ちゃんなら当然の結果だ!!」



背の目の家臣達が入室の許可伺いに来た。

背の目は入室を許可して、20人の家臣が入って来た。

わしは小声で「背の目、わし等は別室に移っておる」

「やま、マンバ様このまま居て下さい」


家臣代表が、入室早々に話だした。

「セノメ王、旧知との再会おめでとう御座います」「ふむ·····」

「つきましては、御願いが御座います」「言ってみろ」

「マンバ様を同行しての旅立ちを、ご一考願います」「理由は?」

「セノメ王に出て行かれては、セノメ王国は崩壊してしまいます」


「この短い答弁で、お前達は3つも大きな間違いを言っていた」

「1つ目、旧知との再会だぁ!!貴様等には母と子の再会がその程度の認識か!!!」

「2つ目、母様を同行だ?ふざけるな!!!大多羅や私達が母様に同行させて貰うのだ!!!」

「3つ目、セノメ王国は母様が、私を見付ける目印の為に建国した!!母と再会出来た今、役目は終った、これ以上私が居る意味が無い!」

「セノメ王国に今、ナイチ聖国問題しか無い、母に頼んで彼の問題国を消滅して貰うつもりだったが」

「私の母マンバ神を侮辱する貴様等は見限った、もう知らん」

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